励ましよりも相手が前進する、安心感を与える言葉とは?

 継続でセッションをしているピアノの先生です。先日、発表会が終わったばかりで、次回の発表会をさらに良くするため、生徒さんにどう教えていこうか? がテーマになりました。


 その生徒さんは、進み具合に少々問題があったそうなのですが、発表会間近になって、お母さんにも協力してもらって、急ピッチで仕上げて、どうにか間に合ったそうです。お母さんは、学校で音楽の先生もしているようなので、見てあげることができたそうでした。


 クライアントさんとしては、もう少し指使いについて細かく指導した方が良かったかなぁと、次回への改善策がいろいろあるみたいです。次の発表会では、詰めが甘くならないように、どう教えていくか?考えていました。


 まず、進み具合に問題があったから、レッスンを早めに開始することが、一つの改善策として出てきました。しかし、それだけではまだ不十分なような気もしたので、さらに、その生徒にマッチするような改善策を組み立てるべく、生徒さん自身がどんなタイプなのか?色々お聞きしました。

・「あ、こんなところに休符があったのだ」と弾いてみて後から気づく。

・ホールなどで演奏した時に、「ここで弾くと明るい感じがして気持ちがいい」
 と感想を言ったところは、音のセンスがあると思った。

・先に進もうとすると、「難しくてできません。できるかな?」と後ろ向き発言。

・他の生徒は、みんなよりうまくなりたい!と思う子が多いが、
 その生徒は、親が学校 の先生と言うのもあるのか?比べることは
 あまり好きではないらしい。

・本人ができたと思えないと先にすすめない。


より具体的に分析すると。

・「あ、こんなところに休符が…」「気持ちがいい」というセリフを言うあたり、
 理論的に音符を追っているのではなく、フィーリングで音から入っていくのでしょう。

・「難しくてできません」と言うのは、慎重な性格で、
 自分がきっちりとできたと確認してから進みたいタイプでしょう。


より細かくみていくと、早くから練習を開始させた方がいい、という解決策以外が見えてきました。


 クライアントさんは、「難しくてできません」と生徒さんが言うと「大丈夫できるよ」と次に進むようにいつも言っていたそうです。「大丈夫」と言われると、確かに「大丈夫」な感じもしますが、「できるかな?」と不安に思っているところに「大丈夫だよ」というのは、すぐにはピンとこないでしょう。


ですので、こんな時は、
「そうだよね、難しくて不安になるよね。だけど、前回ここまでできたから、次に進もうとしているのだよ。ちょっとやってみようか」と、不安に思っているところを、まずは認める言い方もあります。慎重派には、そういう声掛けがしっくりと来るでしょう。


 世の中的には、のみこみが早い方が、優れているような見方をしがちですが、私は、いい悪いはないと思っています。行動の早い人は、行動しながら考えていくし、慎重な人は、行動する前に色々シュミレーションして、腑に落ちたら行動をするので、それぞれの思い描くゴールに着くタイミングは、同じなのだろうなと思うからです。


 以前の私の性格は、慎重さに欠け、とにかくやってみよう、というタイプなので、これまで、失敗も多いし、気づいたら、物も心のガラクタもいっぱいになっていた(汗)というデメリットもあります。今は、ガラクタ整理中で、結構その作業も根気要ります。私としては、緩急のバランスを持てたらいいかなと思っています。


 さて、「そうだよね、難しくて不安になるよね。だけど、前回ここまでできたから、次に進もうとしているのだよ。ちょっとやってみようか」という言葉ですが、慣れないとすぐには出てこない言葉です。


これが、すぐにできるにはどうしたらいいのか? について、クライアントさんと話しながら、いい発見をしました。


 それは、相手が言った言葉を繰り返すことです。「すぐには難しくてできないよね」と、こちらも、真似して言ってみるのです。すると、相手の気持ちにすっと入れます。そうしたら、自然と「でも、前はここまでできたから、次に進めそうだね」と言うセリフが、出てきそうではありませんか。


 カフェとか電車とか、会社とか、人が話している場所で、聞き耳を立てていると、「繰り返す」をしている人は、意外と少ないなぁと思います。


「おいしいね」「うん、おいしいね」位はありますが!
悩み相談のときは、繰り返すよりも、どうアドバイスを言おうかばかりを考えているのではないでしょうか?


 コーチングで「ペーシング」というのを習ったことがあります。文字通り相手のペースに合わせると言うことです。物事を早く進める私が、ゆっくり進めるひとのペースに合わせるって、結構大変!とコーチを始めた頃に思っていました。また、一番身近にいる妹が、ゆっくり進める人だから、彼女のご機嫌取りに子供のころから苦労したものです。笑 


 そんな私が、どうやったらペーシングがうまくなったのかと言うと、相手のようになってしまう体験をしてみてからです。「遅い!」とイライラしないで、もう逆らわずに馴染むのです。馴染もうと、とても努力しました。笑 「相手はそれが心地いいのだ、面白そう!」って思って努力してみたら、ああ、そういうペースもありだなぁ、と段々思えるようになってきて、「ああ、わかる」と共感性が高まっていったのです。ペーシングができると、本当に楽になりました。


 まず、セリフだけでも繰り返してみる。自分も発してその言葉を吟味してみる。そして、自然に任せてきたセリフを言うと、相手にフィットするセリフになっているのです。

これは不思議。言葉を繰り返すって、相手に安心感を与えることと、自分が相手の気持ちを体感するためだったのか!と、真の意味を理解できたような気がしました。


今日はこちらの質問はいかがでしょうか?

相手に安心感を与えるには他に何ができますか?