熱く語る、人を動かすように語るには?

 「熱く語る、人を動かすように語るには?」というテーマのセッションでした。クライアントさんは経営者の方で、目的としては「スタッフに同じ方向を向いてほしいから」ということです。

 例えば、朝礼。現状は「業務連絡」が主で、あまり自分の思いなどは語っていないのだそうです。

 何を話すかなのか? 伝え方なのか? その辺もクライアントさん自身、はっきりしていなかったので、まずはすり合わせていきました。

 人を動かすと言えば、経営者としては「ビジョンを語る」です。例えば、会社の未来について。温度のある伝わり方のとき、何を話しているでしょうか?

 昨日、マクドナルドのOB会で、私の同期のG君が、私の未来のビジョンについて聞かせてと、質問してきました。私は、これまでの自分を踏まえて、これからの未来にできるだろうことを話しました。0から1の全く新しい試みについてです。
 一緒の席に座っていた個人事業主のOBも、未来に必要とされるサービスを今創っているということ、どういう風に進めていくのか?青写真について語っていました。

 という風に、0から1の、まだ生まれていないもの創ろうとしているとき、自然と話の温度は高くなり、聴く側にも楽しい未来の映像が脳裏にイメージされるでしょう。
 イメージ力のある人に話すと、私よりイメージしてくれることもあります。私が「ステージに立ってる様子が見える」とか、「映画『グラデュエーター』みたいなコロッセオでスピーチしている様子が見える」と最近言われて、笑えました。しかしながら真面目な話、そういう面白すぎるイメージが、潜在意識にポンと入り、実現してしまうものです。(笑)

 そんな話をクライアントさんにしてみると、「どちらかというと行き当たりばったりでこれまでやってきて、自分のイメージが先だったことは少ない」とおっしゃっていました。今、ビジョンは? と言われても出てこないと。

 つまり、現在のクライアントさんとしては、「0から1を創りたいというよりも、既存のものでべストをつくる」というところにまずは取り組みたいという本音の部分がみえてきました。

「既存のベストを目指すために、同じ方向を向いて欲しい」ということです。ディスカッションの焦点が定まり、さらに深掘りしていきました。

今は、業務連絡だけ、それを温度の上がる話にしていくには?

「皆が今よりも同じ方向を向くために、まず話してみたいトピックはありますか?」

「僕が行って来た、海外ボランティアに参加してほしいなとか・・・」

「じゃあ、ボランティアってすごい! 参加してみたい! と思わせるスピーチとは? を考えましょう」

 セッションの冒頭で、近況をお聴きしたとき、「海外ボランティア行ってきました」で話が終わりそうなクライアントさんに、私は質問攻めをしていました。3年以上セッションをさせて頂いていますが、近況を話して頂くのに、私の方から質問していることが多目です。

 私が質問をしたことで、海外ボランティアの規模や意義など、ありありとイメージが広がっていきました。
 20名の医師に対して、1000人の患者さんであること。家族のうち一人しか、医療を受ける権利を持てないこと、国全体を周るのに20年掛ることなど、大変意義のあることをしていらっしゃったんだなと、私が質問をしたことで、クライアントさんが見えてきた世界を共有した気分になりました。
 私の頭の中の映像は、以前TVで見た、医療ボランティアの光景と重ね合わせる形で見えていました。見えればみえるほど、質問したいこともさらに増えていくものです。昨年も同じ話をお聴きしましたが、今年の私のほうが、イマジネーション力が発達したことで、質問も出てきたように思います。

 話をしたり、書いたり、伝える人が気をつけなくてはいけないことは、「自分はわかっていても、相手の頭の中には、話し手が伝えてくれた情報しか描けないものである」という前提でもって、先回りして話を進めて行かないといけません。

 話のポイントとなる言葉は、人によって違うかもしれませんが、割と「数字」というのは、物の大きさが伝わりやすく、スケールも伝わりやすいので、入れるといいでしょう。それをわかっているひとが文章を書くと、逆に堅苦しくなることもあるので匙加減ですが。相手の頭のなかにイメージがひろがるように登場人物や場所の描写、背景などを入れていくことです。
 たまたま今日、駅までの道すがら、小学生の子供の母親が、「いつ、どこで、誰が、何を、どうして、どうなったか、で話さないと、わからないでしょ」と指導している声が聴こえてきました。(笑)

 相手の中にイメージが膨らめば、意義のあるボランティア活動であると伝わり、スタッフたちも、興味を示すでしょう。 これはスキルですから、練習次第です。相手のイメージが広がりやすいように、情報を足していくことを意識するといいかもしれません。

 相手の頭の中までイメージを創りだすことができたら、きっと相手が熱く感じるのだと思います。そのとき、共有もできていることでしょう。