2010.8.1 記事「マクドナルドの目線」より

 17周年講演では、2010年(35歳)の私に、2023年の私が「予言を伝える」というところから、話をスタートさせようと考えています。そのために、2010年ころのブログ記事をチェックしていたら、当時の新しいHPに連載をしていた、私の周りの知人とのインタビュー記事を見つけ、懐かしく思いました。もうHPにはないのですが、ネット上のテストファイルにはいまだに残っていたので、以下に再掲載したいと思います。

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2010年8月1日 

 LAB 第4回 「マクドナルドの目線」
 元マクドナルド同期 
N氏 x 堀口ひとみ

今回の対談は、マクドナルド1997年度入社同期のN氏(男性・某通信系勤務)です。 マクドナルドで同期とは、ほとんど同じお店になりませんが、N氏とは、会社の泊りがけのコンベンションや、ハンバーガー大学でのクラスで顔を合わせたり、休日に、マクドナルドの別荘へ旅したりする仲間で一番親しい友人でした。20代のお互いの「とんがり具合」も結構似ていたのだろうと思っています。(笑)対談のテーマは、『マクドナルドの目線』です。マクドナルドの紹介になってしまってもしょうがないですから、成功体験や失敗体験中心に話しました。すると、自分たちの話をしていたのが、いつのまにか自分たちを支えてくれていた人へと光が当たっていきました。そこから、新たなる気付きがおこり、対談の最後に、「20代とは、何だったのか?」その答えが浮上してきたのです。


2010年7月2日 汐留 @コンラッドにて収録。

■まだ入社もしてない学生に対して「2,000円お渡ししますので、これでお昼を食べてきてください」って。

堀口「最初に出会ったのは、1996年の10月1日の内定式。新宿アイランドホールで、藤田田さんに初めてお会いして、どんな話するんだろう?って待ち構えていたら、『この会社に合わないものは辞めてもいい』って、最初に(笑)言ったんだよね」

N氏「まだ入社してない人に対してね…」

堀口「あれには、ほんとびっくりしたけど。なんか、『おお、いいな!』って思って。藤田田さんと誕生日も一緒だし、私(笑)」

N氏「入社する前からバイトもしてたし、田さんのこと知ってたから…ああいう発言っていうのは、ある意味当たり前って感じだったから。ああ、また言ってるっていう感じだったんだけど。普通はやっぱり、ちょっとびっくりするよね」

堀口「びっくりしたよ(笑)、初めてで」

N氏「入る前から、覚悟を持て。ってことなんだと思うよ」

堀口「ねぇぇ。まっそんな調子で、それで確かお昼に…、2,000円以内だっけ?」

N氏「いきなり、まだ入社もしてない学生に対して『2,000円お渡ししますので、これでお昼を食べてきてください』って言われて…『使いきるのも残すのも自由です』と。『ただオーバーした場合には、オーバーした分は自分でお支払いください』ってところで」

堀口「そうそうそう」

N氏「なんていい会社なんだろうって、思った」

堀口「思った(笑)」

N氏「でも、ほんとにリアルな話し…2,000円の昼飯って、食ったことがなかったの」

堀口「うんうんうん」

N氏「そん中で、何か知らないけど、そのときにグループだったのかな?」

堀口「そのときに、Nくんと初めて出会ったよ」

N氏「で、確か…。ひとみちゃんと俺とくらもっちゃんと、あと何人かだったんだよ」

堀口「何人か居た」

N氏「5人ぐらいだったよ、確か」

堀口「10人近くいたと思う。女の子もいたかな。周りに座ってた子。全く知らないけど」

N氏「全く印象ないよ。(笑)」

堀口「(笑)あはは(笑)」

N氏「君しか印象にない」

堀口「あの、わたし印象あった?」

N氏「強烈な印象があったよ」

堀口「(笑)ホテルのランチバイキング2,300円っていうの知ってるんだけど…行きませんか?って募ったの」

N氏「でも、とりあえずなんか…俺は手を挙げたどうかはわかんないけど、一緒に行ってた」

堀口「なんで、一緒に(笑)来たの?」

N氏「気がついたら、くらもっちゃんと俺とひとみちゃんが同じテーブルについてて、飯を食ってた覚えがある」

堀口「うん。うははははは(笑)」

N氏「なんて良い会社なんだって言って。2,300円のランチを食べたわけ。ちょっとね、感動した。そこで、俺もうちょっと会社に、恩を返さなきゃな、みたいなね」

堀口「うははははは(笑)」

N氏「だから、あれはあれで…」

堀口「餌付けされたんだ(笑)ま、さっそくマクドナルド的に言うと、UP TO YOU(あなた次第)ってところかなぁ」

N氏「ほんと、マックはモチベーションあげるの上手だったよね」


■「じゃ戦略考えよっか」っていう、なんか戦略って言葉がさ、なんかカッコイイ響きでさ。

堀口「Nくん、101(ワンオーワン)で、日本一取ったんだよね(笑)」

N氏「運にも恵まれたんだけど、三茶(三軒茶屋)ってところが、思った以上に住宅街の中にあって、近場に幼稚園とかいっぱいあったのよ」

堀口「あれって、いくら?1,000円ぐらい?」

N氏「1,000円か?1,500円だったかな?1,000円だったかな?で、101匹のワンちゃんのフィギュアがいっぱいあってね。こんなアタッシュケースみたいになってて。で、『これ売るコンテストやってるんだ。これ売りてーよな』って店長に言われて。あー売らざる得ないな、って。僕も他の人も思ったらしく」

堀口「うんうん(笑)」

N氏「で、そのあとに先輩マネージャーから、『さーじゃ、戦略考えようっか』って言われたの。それもなんか新鮮で。どうやって売ってくじゃなくて、なんか戦略って言葉がさ、なんかカッコイイ響きでさ」

堀口「20代にしちゃね、カッコイイいいと思うよね」

N氏「マックてさ、戦略発表会とか、なんでも戦略とかって言葉使うでしょ。普段使えなかったから、そう言う言葉が新鮮で…『なんだかカッコイイな、戦略って』って」

堀口「単純だね。ふはははは(笑)」

N氏「じゃ、これ売ったら、なんか。なんか賞でも貰えるったんだったら頑張ろうっか、ぐらいな感じで考えてて。大した仕事も与えられてないし、入ったばっかりだし。ここで何か目立つ方法は、これかもしんないなって、思った。売るために何をしたらいいかな?って考えたときに…三茶店って、すごくバースデーパーティ(BP)よくやってたの。子供達すごいいっぱい来てたの。どうせ子供達に売る商品だから、子供に売ればいいんだよ。子供にどんどん売っていけばいいじゃん、って」

堀口「おお」

N氏「まず、誕生会に来た子に、セールスをサジェストしてたの。あたりまえのように、飛ぶように売れていくわけ。『お子様のお誕生日プレゼントどうですか?』って、言ったら、お母さん、当たりまえだけど、ガッツリ買っていったの。この子が買ったら、って感じで。周りのお母さん方も、みんな買うわけ。これBPで、売れるなって思って。で、もっと売る方法ないかな?って思ったときに、子供が集まる場所って、なんだろう?って。そしたら…、幼稚園じゃん、って。幼稚園を相手にしたの」

堀口「へええ、行ったんだ。幼稚園」

N氏「行った、行った。回った回った。で、そのときにBPの紹介も一緒にやりつつ、BPの紹介と共に、『これもいかがですか?期間限定でやってます』とかってやってたら、幼稚園からのそれぞれの大量受注が入ってきた。一幼稚園で、なんか30個とか売れたりとか、そのおかげで日本一になったの」

堀口「すごいね」

N氏「面白かったのは、商売をするって、店舗だけじゃねえんだな、って。そこでわかった」

堀口「(笑)(手を叩く音)(笑)」

N氏「だから、待ちじゃいけねえって」

堀口「おお、いいこと気づいたね。そうか、そうっか、そうだよね。お店じゃなくて、外に行くって発想だ」

N氏「だから、でもね。それで味を占めるとね、成功体験が身に付いちゃうから、もっともっとがんばろうってなっていって」

堀口「うーん」

N氏「それがね、なんか楽しくてさ。相乗効果を生んで、だから同じ商品を売るんでも、もっともっと売っていこうっていう向上心に繋がったかもしんない。だから、いいきっかけだったかもしれない」

堀口「そっか。じゃ、あんまり結果意識してなくて…」

N氏「なかった」

堀口「プロセスの積み重ねだったんだ。マックは成功体験を作れる舞台がいつもあった気がする。挑戦するかしないかも 『UP TO YOU』だね」


■マクドナルドの教え:トレーニングの4ステップ

N氏「あのトレーニングの4ステップっていうのは、今の人材育成にものすごい活きてる」

堀口「うーん」

N氏「準備、提示、実行、評価」

堀口「確かに」

N氏「これは、もう忘れないね」

堀口「これの通りに教えると、ほんとにうまくいくもんね。あれでさ、なるほどって、すごい思ったのが、準備、提示、実行のところで、相手が間違ってても、最後までやらせる、っていうの、あった。普通さ、間違ってたらさ、途中で『違うよ』とか、言いたくなるんだけど。見守るっていう、あの姿勢がすごいな、って思って」

N氏「でもそれってきっと、間違ってるってこと後に言って、本人に考えさせるため、なんだろうね。そこで最初にさ、そこ間違ってる、って指摘したら。間違ってるんだ、ってとこで思考が止まっちゃうよね。なんで、間違えたんだろう?っていうのを、考えさせるために最後まで見守ってるんだよ。それがなかったら、俺は我慢できない人間なんで」

堀口「うっはははは(笑)」

N氏「それ、間違ってるからすぐ辞めてって、たぶん、言う。でも、そこで最後までやらせてから最後に…フィードバックするんだよ、っていうのを教わったから…」

堀口「そう」

N氏「あ、ここは、我慢我慢。どこが悪かったと思う?どうすればいいと思う?とかね」

堀口「ちょっとコーチングはいってるよね。ハンバーガー大学で、マクドナルドは『ピープルビジネス』って教わったもんね」

N氏「そう考えたら、トレーニングスキルとかマクドナルドでやったことって、大概みんなコーチングだよ」

堀口「だから…たぶん。今、コーチの仕事やってるけど、マックがきっかけだったなって、すごいあるね」


■「すいません。俺こんな状態なんで病院行っていいですか」

堀口「20代はがんばりすぎて体壊すこともあるよね(笑)」

N氏「あのね。がんばっちゃうと、やっぱり期待されちゃうじゃない。1年め、2年めとかって、なんとか仕事を覚えて期待に応えようと、自分の存在感を出したいと、自分の限界値を知らない中でがんばっちゃうから」

堀口「超えるよね、限界」

N氏「超えた。超えると…、だんだん超えていくっていう過程があったんだろうけど、本人気づかぬまま。やたら残業時間が増えていって、やたら帰りが遅くなって、やたら遊ぶ時間が無くなってて、家帰って寝るだけ、みたいな生活になって。それがずっと続いていくと、うーん、なんかね突然ね。会社に行きたくなくなる」

堀口「ふははははは(笑)そんなことあったんだ(笑)」

N氏「あった。で、地下鉄で、三軒茶屋の駅から階段を、一歩一歩上っていくのが、店舗行くのがだんだん嫌になっていくの、気持ち的に…しかも半端ない残業で。で、店舗立ち続けて、体力的にへとへとのなかを、いろんな仕事しなくちゃいけなくて。でもなんか期待されてて、こういうこともあって。でも、僕できません。ってのが、そのとき言えなくて。自分で、いやもう無理です、それって。っていうのが言えなかった」

堀口「確かに」

N氏「『わかりました、やります』って。だから、自分の限界を知ってなかったのよ。なんでも受けてたの。そしたらね、だんだん気持ち的に滅入ってきちゃって。でもまだ…白旗を上げたくなくて。どっかでプライドがあったのかもしんないけど。そしたら…あのね、身体に変調をきたし始めて…もうなんか、会社に行きたくない、っていう時点で、メンタルに支障きたしつつあったのかもしんないけど。心がやられる前に、身体がやられちゃって。変な話しだけど、トイレに入ったら、いきなり、なんかね、真っ赤かのね…」

堀口「ひええええ!?(笑)」

N氏「がんばりすぎて。で、それオープンのときで。オープンのときって、朝5時半前には事務所に入ってたから。そんとき朝起きるのが、朝お風呂入るから、3時半に起きてたの。朝起きて4時ぐらいに、おトイレ入ったときにそういう出来事があって、めっちゃくちゃあせって、人生初めてだったから。もうなんか、失礼とか考えなしに店長に電話して、『すいません。俺こんな状態なんで病院行っていいですか』って」

堀口「ええええええ(驚)じゃ、ストレス?」

N氏「ストレスだったみたい。でも特に自覚症状ないのよ」

堀口「ええええ?!怖い」

N氏「でもね。今から考えると、自分の限界を知らずに、オーバーワークだったんだろうね」

堀口「わたしも明らかにオーバーワークだったのは、3店舗目に異動して一週間ぐらい、すっごい働いて。店がもう汚いから、この店どうにかしなくちゃみたいな感じでやって。自分の力を早急に見せ付けるぞ!と意気込んで・・・そしたら帯状疱疹になった(笑)」

N氏「それも半端ないね」

堀口「初めて店を、5日間休んだよ」

N氏「入院?」

堀口「入院してくださいって言われたけど、点滴は3日間通ってください、って言われて。点滴にします、って言って」

N氏「で、入院しなかったの」

堀口「やだもん。だって入院だよ」

N氏「ま、ね。やなのはわかるけど(笑)」

堀口「やでしょ?」

N氏「でも先生に入院って言われたのに、なんで敢えて…」

堀口「え?…点滴でって(笑)」


■失敗したのに「お前、さばけよ。はは(笑)」って笑って。でね、叱られなかったの

N氏「失敗談はね、ハンバーガーをつくるためのバンズを、なんかねやたらと大量にね 50ケース以上あったかな。なんかね半端ない量、パソコン打ち間違えちゃって」

堀口「ふはは(笑)。打ち間違え…(笑)」

N氏「ちゃんと計算して、何日分で必要なバンズの数はいくつ、って計算した上で発注したつもりだったの。なんだけど人間ってケアレスミスがあって、でその、キーを叩くのを間違えちゃったんだね。何十ケースっていう、あり得ないケースが来て、さっそく店長に呼ばれて、『お前発注したの?』って言われて『発注しましたよ』って。ちょっと店舗見てこいよって。『なんだろうな?』って。でもそうやって言われると、俺なんかやらかしたかなって、思って…ドキドキしながら店舗行ったら…」

堀口「うーん」

N氏「もう、ね。店舗のバックヤードの方に、あふれんがばかりのバンズが並んでて、バンズのケースが。『あー、やっちゃったー』って思って。すぐ、店舗から事務所の店長に電話かけて、『はい発注は僕でした。発注ミスしてしまいました。申し訳ありません』って。でもそんときに、その店長、最初の店長だったんだけど。で、『お前、さばけよ。はは(笑)』って笑って。でね、叱られなかったの」

堀口「ほおおお」

N氏「叱られなかったけど、あとになって思った。『さばけよ』っていう言葉は…他の店舗にちゃんと、振り分けろよってことで、他の店舗に電話をして、『引き取ってもらえませんか』って、交渉しなくちゃいけないの。でも他の店舗も、発注に見合った分しか発注してないし、余剰なんて抱えたくないのよ。そのね、いかに賞味期限を守った形で、余剰を吐き出すかっていうのが、エリア中の店舗に電話をかけて、且つ、それを運ばなくちゃいけない」

堀口「車でしょ?(笑)」

N氏「俺、車持ってなかったので、電車で運んだの。バイトを使って、交通費を使って、自分の生産性の時間も使って、あらゆるところで迷惑をかけたの。他の店舗に引き取ってもらうのだって。で、初めて気づいたの。店長笑って構えてたけど、あんとき怒ってたら、俺もっと凹んでて…」

堀口「うまいな、店長。ある意味さ、失敗したから怒られるって思ったけどさ、『さばけよ』って言われたことで、ちょっとホッとした部分もあったんじゃない」

N氏「そうだね、『お前さばけよ』って笑って、終ったあとに『お疲れさん、ご苦労さん』っていう風に言ったときにね…うわあああ。て、なんかね(笑)。泣かない俺が、なんかねグッときた」

堀口「おおおお!」

N氏「僕にとっての失敗談だったけど、失敗談でもありながら、あるべき上司像っていうのも見れた」

堀口「確かに、確かに。なるほどね」

N氏「失敗した事によって、何かを学んだのかな・・・仮に自分の部下が失敗したときに、あのときの上司とおんなじ態度をしてあげたいなって」

堀口「うんうんうん!いいねぇ。わたしの失敗はね、朝6時に店行かなくちゃいけないところを、なんと7時10分まで寝てまして!」

N氏「おおおお」

堀口「電話がかかってきた...店長から。で、『もう7時10分で、やばいよ』って。『ひええええ』って、布団から起きて(笑)。いや、ヤバいって、タクシーだ。って。で、朝の道だから、すごい混んでてさ…タクシーの中ですっごいイライラしててさ。どうしよう、どうしようって思ってさ。で、店に着いたの」

N氏「うん」

堀口「オープンまであと5分、みたいな(笑)」

N氏「ええ?それで、オープンどうやったの」

堀口「でさ、休みのはずの店長がいたの。これはまずいなぁと思ったけど、同時に感動もんだった・・・」

N氏「マジか!」

堀口「うーん。もうなんか、ファイヤーアップとかしてるわけよ」

N氏「なんていうフィードバックあったの?店長は、遅れてきたひとみちゃんに対して…」

堀口「何かね。あんまり、怒ってなかったんだよね。それが、やっぱり。それから、どうするか?っていう対策。『目覚まし2つ、つけます』(笑)みたいな。もう店長がね、何も言わないで黙々と店をやってるの。先ず、コーヒーしか出せないからさ。ファイヤーアップ5分ぐらいでコーヒーぐらいはできるじゃない。申し訳ありませんでしたって、お客様と店長に謝って。8時ぐらいには復旧したんだけど。最初で最後の遅刻だったけど。あれは、印象に残っている」

N氏「でもさ、そこでも気づきがあってさ、店長なんで怒んなかったんだろうね。ってこと、考えるじゃん。これどう思う?もし自分が店長だったら同じことしてたかなって」

堀口「起こったことはしょうがないし、店長的には次しないようにするにはどうする、ってことしかないし。あとやっぱり、お客さんをどうするか、っていうのがいちばん優先だから。やっぱ、すごい冷静な判断をしてくれてたのかもしれない。いまはそうわかるけど、あの時は、あまり喜怒哀楽がなくて、ちょっと冷たい、恐れ多い人だなぁって感じくらいに思ってた。でも尊敬していたし、この人の下でやっていた時が一番伸びた時期だったね」

N氏「たぶん事件の解決は、『怒る』じゃなかったんだね」

堀口「そうそうそう。マックのとき、4人の店長に会ってきたけど、その店長がいちばん背中で見せてくれたし、そういうハプニングがあっても、わたしもやっぱり発注ミスしたとき、『どうすんの?』って言われただけ(笑)怒んないからね。焦るよね、そうやって言われちゃうと。でもそれが、自分が店長になったときも、やっぱりその像をイメージして、何が起こっても怒んないし、何があっても『わたしのせいだ』って、『わたしの管理していることだから』みたいな、責任感もすごいでたし。あの店長の影響だね。でも、そういう態度の上司のほうが、じゃあ、どうやってやろう?って考えるんだろうね。私がそうだったから」


■「マクドナルドのことは忘れてください」って、言われたところで、なんか呪縛が解けた(笑)

堀口「お互いに辞めたわけだけど。私のきっかけは、5年目のとき、すっごいわたしに指示型で言ってくる店長がきちゃって、最後。嫌になっちゃって。それでストレスが溜まっていきながら。あと半額バーガーが失敗して、給料が下がります、みたいな話しが全社来て(笑)。えええ??ってなって、初めて辞めようかなぁと思って...それでもう流れ的に、とらばーゆ買ったの(笑)」

N氏「ひとみちゃんと似てるよね。僕は2年目のときだったんだけど、家で不幸があってさ、そのときに、なかなかグランドオープン(GO)したばっかりで、店も忙しいときだったから、最低限しか休まなかったんだけど。それでもやっぱり、家のことやんなきゃいけないって中で。GOだからもっとがんばれ、じゃないけど。もっともっとって、生産性つかれて。だって、さっきの指示型の話しじゃないけど。ま、期待の裏返しもあったのかもしんないけど。やたらと、要求とかが多かったから。それにけっこうね、ちょっと理不尽的な感じで。で、一生懸命がんばってるのに、なんかこのマネージャーに、ついてっていいのかな?って疑問点が湧いてきて、自分の成長につながってないようなイメージがあったの。なんか自分の評価がされないよう気もするし、自分がどんだけ働いても。またそんなかで、会社の業績がどんどん上がっていくなかで、入社して10年たたないと店長になれない、と言われているところで、今後、このままずっと進んでいって。自分のライフビジョンが見えなくなった」

堀口「そうねぇ。なんか自分の可能性もっと他で試せるんじゃないか、とか。そう、いい会社だとは思ってたけど、辞める時ちょっと悪いなぁって思ってたし」

N氏「そう。だからその。自分のなんか希望するもん、範疇を超えた障害があってね。それって頑張ってもどうしようもないといえば、どうしようもなくて。それは会社の状況であったり、人事の問題だったり、いろんな問題あるのかもしれないけど。その当時まだ若かったし、いろんなところも見てみたいっていう可能性も、ちょっと自分の中で出てきちゃったのね。そこである意味、その店長が居てくれたおかげで、辞めようって。新しい所へ行く気になった」

堀口「新しい所に行ってから、わたしもマックに5年も居たから、けっこうマクドナルドの風習が、身体に染み込んでて。ちょっとマックに侵されていた部分があり(笑)。アパレルに行って社長に、わたしが業績が伸びず悩んでいたときに、『マクドナルドのことは忘れてください』って、言われたところで、なんか呪縛が解けた(笑)」

N氏「俺も3年しかやってないけど。やっぱりね、そう言うきらいはあった。先ずね、何かって言うとね。マニュアルありきで考えちゃう、考え方だった。それがいい面でもあるんだけど、確実的にできるっていうのはいいんだけど…応用力が効かない」

堀口「そうなのよ。考える力が実はね、育ってなかったことに気づいたの」

N氏「こうしなさい、っていう一方的な植え付けだったから、だから短時間で同じレベルの人間を育成するっていう意味では有効だったんだろうね」

堀口「世界に店舗を作っていくには必要な考え方だったんだけど、でもそれがもう全てだ、みたいな感じになっちゃってたから。気づかなかったんだよね」

N氏「気づかなかったね。だからそういう意味では、外に出て良かったと思う。マクドナルドの考えが染み付いたまんま、他の業種にいっちゃったりすると、やっぱりギャップを感じた」

堀口「そうだね。あのね、アパレルのときの社長の言った一言はね、なんかすごい最初冷たかったけど、実は愛情いっぱいな、言葉だったんだなって今は思うよ」

N氏「なかなか、そうやってはっきり言ってくれるのって、なかなかできないよ。堀口さんには、ハッキリ言った方がいいって」

■20代って、ずいぶん軸がブレてたなって感じがする。ま、ブレてていいんでしょうね。

堀口「なんか20代の頃って、自分のなりたい理想像みたいなものを、いろんな人から見て、なりたい自分像を作って、それになろうとしてた感じはあるかな。うーん、この対談してて、気付いたんだけど」

N氏「視野も狭かったしね。だからやっぱり、身近なロールモデルを求めていくっていう風に、なってたんだけど。そのときに、身近なロールモデルが、最高の人だったら良かったけど…」

堀口「うん」

N氏「…残念ながら、最高じゃない人もいて、それも運と言えば、運でしかないのかもしれないけど。でも良い人も悪い人もいる中で、その人に、いかに良い所を見て行くか、吸収していくかっていう、ある意味、自分次第…」

堀口「そうだね、いろんな人との触れ合いで、自分を形成していったし」

N氏「そういう意味では、20代って。ずいぶん軸がブレてたなって感じがする、ある意味いろんな人に影響されまくってたから」

堀口「ま、ブレてていいんでしょうね」

N氏「いいんだと思う」

堀口「たぶんね。自分の軸を探してたのはあるよ、たぶん」

N氏「そうそう。だから、なりたい自分が何なのかすら、わからなかった」

堀口「わかんないから、でもこの人いいな、って思ったら。この人みたいな店長になってみたいなとかさ、いろいろやっぱ思ってきて」

N氏「いろんな人に影響される時期があっても、たぶんいいんだろうね」

堀口「いいと思うよ。特に20代は、そうやって、そういうもんだっていう感じで」

N氏「最後に敢えて聞いちゃうけど、ひとみちゃん今は、天職だと思ってるの?」

堀口「そうだね…小学校のときから先生に興味があって、先生のリーダーシップの取り方とかすごく気になっていたし、自分が伸びた時、どの先生の何がきっかけだったか?とかすごく覚えてる。マックもアパレルも、今の仕事も人を動かしたり、やる気を起こさせる仕事だし、なんかすごく、つながり感は感じてる。そんなところが、天職といえるところかもしれないね」

N氏「そうなんだね。なんか改めてこうやって…過去を振り返ることによって、ああいうことあったな、ってことを思い出して、かえって新鮮に『ああ、そういうこともあったな』って、あらたな気づきが。いちばん最初の店長のこと、いちばん尊敬している人のこと思い出して…」

堀口「おおおおおお。過去の振り返りもいいね」

N氏「いつも前しか見ないタイプだから、こういう風に振り返るのってホントなかったよ。いい機会になった。ありがとう」

堀口「こちらこそありがとう!時間を作ってくれて。お疲れさまでした」


2023年の私:とてもいい対談を友人とさせていただきました。20代のころは、会社という場を通じて、ビジネススキルやヒューマンスキルを学び、自分の与えられた任務に対して、自分次第で成功体験ができたことは、自信につながっていきました。時には失敗しても怒らずに、上司たちには見守る姿勢でいてもらったり、成長するための厳しいフィードバックをされたりと、当時、30代、40代の上司たちの顔を思い出しました。

 この対談をしたときは、マクドナルドという会社は結構大変な勤務体系だったから、美化して話しすぎてはいないか?と、友人と思う節もありましたが、最後の方に、身体を壊した話や、辞めようと思ったきっかけも話していたので、今思えば、本当にありのままのその時感じていたこと、事実を語っていたのだと思えます。

 全体の内容を通して、私も13年ぶりに「戦略」という言葉を使いたくなりました。皆さんは、この対談を読んでどう感じたでしょうか?