成功を信じることが、たとえ自分が選んだ道に疑いを抱いたとしても、正しい道に導いてくれる。そして他の人がその道を疑ったとしても、胸を張って歩き続けなさい。
◎前回のあらすじ
セール初日の好調な売上が続く中、メルマガ配信やHP更新が効果を発揮し、7月の店長会議で渋谷店の売上目標が上方修正されました。Iさんの問い掛けから、楽天ブログを開設しました。初めての投稿はシンプルな日記のようなものでしたが、更新を続ける中で少しずつ手応えを感じるようになりました。しかし、当時の楽天ブログには写真をアップロードする機能がなく、ブログの可能性を模索する中、九州のブロガーから写真を埋め込む方法を教えてもらい、ついに写真付きのブログを実現しました。
また、夏のセールを機に渋谷店のウィンドウディスプレイに10万円の投資を決断し、プロの花屋による涼しげな「避暑地」テーマのディスプレイが完成しました。7月のセールス実績が4000万円を突破し、店長としての権限を活用する重要性を実感しました。これにより、店舗の魅力を最大限に引き出し、お客様に訴求する新たなステージが開かれたのです。
4.5 プラダとジムと私
4000万円という大台を達成した興奮冷めやらぬ私は、青山のブランドショップが並ぶ通りを歩いていました。通りには、夏の装いから秋のファッションへと少しずつ移り変わる店のディスプレイが並び、季節の変わり目を感じさせていました。
秋の新作が並ぶショーウィンドウを眺めつつ、自分へのご褒美を選ぶ期待に胸が高鳴ります。顧客様のバックが素敵だったので、どこで購入したのかを聞いてみると、「PRADA」とおっしゃいました。これは私も是非手に入れたい! と思い、やってきたのです。
プラダの店舗に足を踏み入れると、冷たい空調と高級な香りが私を包み込みました。独特な曲線を描くフォルムの台の上に、ゆとりをもって置かれているバッグたち。その中から、好みのものを選ぶ優雅な時間。少し緊張しながら、「こちらでお願いします」と店員さんに伝えました。清算を済ませ、大切そうにプラダの紙袋を抱えて店を出る時、成功への第一歩を踏み出した気分でした。
私の目を引いたのは、マットなグレーの色合いが魅力的な上質なレザーバッグでした。正面には重厚感のある金属製のバックルが光り、そこにさりげなく「PRADA」のロゴが刻まれています。バックルの下には小さな鍵穴があり、クラシックな雰囲気を醸し出しています。両サイドには繊細なギャザーが施されており、柔らかなシルエットがバッグにエレガントな印象を与えています。肩に掛けるのにちょうど良い長さのハンドルも特徴的です。カジュアルなデニムスタイルにもフォーマルなドレススタイルにも馴染み、時を越えて、ヴィンテージになるまで使えそうだと思いました。
ある日ふと、「ジムに通おう」と思いました。仕事のできる人たちは、運動の習慣があるイメージがあったからです。有名な経営者を祖父に持つスタッフに教えてもらった恵比寿のジムへ行ってみることにしました。
駅から少し離れたビルの1階にそのジムはありました。所狭しとマシンが並び、スタジオも併設されていました。スパエリアには、スチームサウナもついています。渋谷と最寄りの駅の中間なら通えそうと思い、「成功への一歩」だと自分に言い聞かせつつ会員となりました。
しかし、9月末、前年売上はクリアするものの、売上目標に達することはできませんでした。華やかなウィンドウディスプレイも、更新を重ねたブログも、期待した効果を得られなかったのです。
4.6 逆境
10月初旬、神戸での店長会議。緊張しながら秋冬の戦略をプレゼンしましたが、核であるネット戦略について触れられないもどかしさと、成果が出ない焦りで、説得力のない言葉がこぼれます。そして、ベテラン店長が言いました。「渋谷店はあんなに良い立地にあるのに、なぜ売れないのでしょうね?」
その瞬間、会場の空気が凍りつきました。顔が熱くなり、目の前が真っ白に。「言い訳なんてできない」と自分に言い聞かせ、必死に冷静を装いました。そんな私を救ったのは、名古屋のH店長の共感の言葉でした。
「私も渋谷店の店長をしていましたが、あそこは難しいんです」と。それから会議が終わった後、H店長は私のところに来て、「やるべきことをやっているから、絶対に成功するわ」と断言してくれたのです。その言葉は、暗闇に差し込む一筋の光のように感じました。応援してくれる人がいることが、何とも励みになるのです。
翌朝、渋谷店のバックヤードでの朝礼の時間、スタッフたちの前で、昨日の悔しさとこれからの決意を語りました。「横浜店を打倒しよう!」。その瞬間、スタッフたちの目が輝きを増し、一体感が生まれるのを肌で感じました。新たな挑戦への第一歩を、みんなで踏み出す瞬間でした。
4.7 気づきノート
ブログという毎日のアウトプットのために、インプットもしなくてはなりません。私は新しく買ったA6サイズの無地のノートを開きました。表紙に「気づきノート」と小さめに書き込み、ペンを1ページ目に滑らせます。ペン先が紙に触れた瞬間、H店長との会話が鮮明によみがえってきました。「絶対に成功するわ」。彼女の言葉には不思議な説得力があり、私の胸の内に温かな自信が芽生えるのを感じました。
そんなH店長の元で働くスタッフたちは、常に個人売上上位に君臨していました。その秘密は何なのか? それは、H店長はスタッフをスカウトしているというのです!
台風のため、やむを得ず宿泊となった店長会議からの帰路の途中に、心斎橋の新店舗へ立ち寄りました。そのときたまたまH店長がいらしたのです。
若い女性に話しかける彼女の姿。最初は戸惑っていた女性の表情が、H店長の言葉を聞くにつれて輝きを増していく様子。まるで魔法をかけられたかのようでした。
「最近はスタッフの夢への情熱が高まりすぎて、抑えるのが大変なのよ」と、H店長は笑って言いました。その言葉の裏には、スタッフ一人一人の可能性を信じ、導く彼女の情熱が感じられました。今思えば、この1ページ目に書かれた内容は、私の未来の姿でもありました。
■編集後記
アパレル店長物語のタイトルが決定しました!『Grit & Glamour』です。このタイトルは英語でとてもいい感じのようです。タフさとエレガンスを対比させることで、タイトルに深みと興味を持たせています。また、ファッション、自己啓発、成功ストーリーなど、多様なテーマに興味を持つ人々を引きつける可能性がありそうです!
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