一度頭が雲の上に出ると、同じように雲の上にいる他の人々にも出会う。
◆前回のあらすじ
主人公は、自分のブログをきっかけに、アパレル企業の社長から本田健や神田昌典の成功哲学に関するCDをプレゼントされます。急遽決まったバリ島旅行では、アクセサリーの買い付けを試みるものの見つからず、代わりにバリ雑貨を購入しました。帰国後、カラーアナリシスを無料で受けられる予想外の展開や、その後の人々との出会いを通じて、主人公は不思議なシンクロニシティを感じます。そして渋谷店での売上目標5000万円を達成するという成功体験を経て、これまでの店の目標から次のステップへと意識が向き始め、自分自身の新たな挑戦を探すことを決意。人との繋がりや成功への探求を通じて、主人公は自己発見と成長の旅を続けていきます。
8.3 夢のコラボレーション
メンターの金井さんと初対面の日、金井さんから「堀口さんの店とRITZでコラボレーションしよう!」という思いがけない提案をいただきました。一店舗の店長に過ぎない私には、そのような大きな決定権はありません。でも、その言葉は私の心に小さな希望の種を植えつけました。
それから3ヶ月後、メンターとの日々のメールの中で、驚きのメールが舞い込みます。
「グラマラスをテーマにした作品撮影をしませんか? NYで研究してきたグラマラスヘアーと、堀口さんがコーディネートする衣装で4〜6体の撮影を行いたいのです」
七夕の短冊に書いた願い事が現実となった瞬間でした。金井さんは、私に経営者としての視点と責任を与えてくださったのです。上司にも相談し、衣装のリースも順調に進み、最終的にはラフォーレ原宿でのファッションショーという形で実現しました。
このプロジェクトで特に嬉しかったのは、渋谷店のスタッフたちにもコーディネートの機会を提供できたことです。私自身は裏方として指示を出す立場に徹しましたが、それもまた新しい経験でした。RITZのスタイリストから「堀口さん、何もしていなかったね(笑)」と言われた時は、むしろ誇らしく感じました。それは、チームを信頼して任せることができた証だったからです。
この貴重な経験は、RITZとのコラボレーションの魔法として、後にブログでも紹介させていただきました。店長以上の経験をさせていただき、まさに意識が変わり、次元がアップした出来事でした。
8.4 予期せぬ訪問者
早朝6時、神戸での店長会議を控えたある8月の朝。いつものように電話でのコーチングクラスに参加していました。
「今日は何をしますか?」
クラスコーチの質問に、生徒たちが順番に答えていきます。私の番が回ってきた時、つい嬉しさを込めて答えました。
「全国1位の売上を達成できたので、今日の店長会議が楽しみなんです!」
その瞬間、予定されていたテキストの内容は脇に置かれ、クラスの流れは思いがけない方向へ。「それは興味深いですね。皆さん、堀口さんに成功の秘訣を聞いてみましょう!」
突然のインタビュー形式への転換に、私は戸惑いながらも、クラスメイトたちからの質問に一つひとつ答えていきました。クラスの最後に、コーチから店舗の場所を尋ねられましたが、その時は何気なく答えただけでした。
それから数日後の夕方――。
「堀口さん、Aさんという男性のお客様がいらっしゃっているのですが...」
スタッフの声に応じて店頭に向かうと、そこには見知らぬ恰幅の良い紳士が立っていました。
「クラスコーチのAです。渋谷に用事があったので、寄らせていただきました」
電話越しの声しか知らなかったコーチが、実際に店を訪ねてくださったのです。「今度は仲間も連れてきますよ」という言葉を残して去っていく後ろ姿を見送りながら、私は深い感動を覚えました。
オンラインという仮想空間での交流が、突如として現実の出会いへと転じた瞬間でした。コーチが生徒に会いに来てくれるという、想像もしていなかった展開に、驚きと喜びが入り混じった温かな気持ちが込み上げてきました。
秋の気配が漂い始めた9月下旬のある土曜日。渋谷の街は週末の賑わいに包まれていました。
Aコーチが、他のコーチも引き連れてやってきたのです。私は苦笑いしながら、ショッピングモール内のカフェへとご案内しました。テーブルを囲むのは、なんと4名のプロフェッショナルコーチたち。男性2名、女性2名という組み合わせで、まるで面接官の前に座らされているような不思議な状況に、思わず緊張が走ります。そして、時空を超えたお茶会がはじまりました。
以前お会いしたAコーチが、にこやかに私を紹介してくださいました。
「この子が話していた全国1位の店長さんなんだよ。とても面白い考え方をする子でね」
その言葉に続いて、突然の提案が。
「今度、セミナーでもやってみたら?」
心の中で温めていた夢を、図らずも口にされた瞬間でした。思わず本音が零れます。
「実は...いつかセミナーをやってみたいと思っていたんです」
「いつにする?」
その一言を聞いた途端、まるで待ってましたとばかりに、4人のコーチが一斉に手帳を取り出したのです。その光景がおかしくて、思わず笑みがこぼれました。さすがコーチ、「いつにする?」という具体的なアクションを即座に引き出そうとする姿勢に、プロフェッショナルの本質を垣間見た気がしました。
Aコーチは実務的な視点で提案を重ねます。
「セール時期は避けたほうがいいよね。11月がベストかな」
「アパレル業界なら、青山あたりのオシャレな会場がいいよ。心当たりがあるから、押さえておくよ」
女性コーチの一人が、さらに現実的なアドバイスを。
「初めてのセミナーなら、専属コーチが必要よ。最適な人を紹介するわ」
わずか1時間のカフェタイム。そこで私の人生の新しいチャプターが、次々と書き加えられていきました。遠慮がちだった私の背中を、4人のプロフェッショナルが強く、優しく押してくださったのです。
その日を境に、店長としてだけでなく、セミナー講師としての第一歩を踏み出す覚悟が決まりました。コーチ軍団の圧倒的な推進力に、運命の流れを感じずにはいられませんでした。
時に人生の転機は、思いもよらない形でやってくるものです。カフェでの1時間が、私のキャリアに新しい扉を開いてくれました。それは、怖さと期待が入り混じる挑戦の始まりでした。
8.5 コーチとの出会い
それからまもなく、女性コーチMさんから紹介のメールが届きました。正直なところ、私の心の片隅には「自分で考えてやれるから、コーチなんて必要ない」という思いがまだ残っていました。そんな後ろ向きな気持ちを抱えながら、紹介されたコーチと日程調整をしてみたものの、なかなか都合が合いません。その旨をMさんに伝えると、「では、男性のHコーチを紹介します。元アパレル業界の方なので、きっと話しやすいと思います」と、すぐに次の提案をいただきました。私には「二度目の紹介は宇宙からのサイン」という密かなルールがあったので、これは運命だと感じ、Hコーチに連絡を取ることにしたのです。
Hコーチからの返信は驚くほど早く、「待ってました」という言葉に思わず微笑んでしまいました。まずはオリエンテーションということで、店の閉店作業を終えてから、そのまま帰宅せずに電話でお話することになりました。
私より10歳年上で大阪在住のHコーチは、実は先日のお茶会で一度お会いしていたようでした。ただ、その時は不思議なことに、私の中で一番印象の薄い方で、特に会話した記憶もありませんでした。しかし電話での会話は、アパレル業界での経験を共有できることもあり、自然と打ち解けることができました。私の勤めていた会社も神戸の会社で、日頃から大阪弁に囲まれていた環境だったこともあり、親しみやすさを感じました。セミナー開催に向けてコーチを付けるという明確な目的があったこともあり、Hコーチのインタビューのような丁寧な質問に導かれるまま、これまでの私の歩みを詳しく語っていきました。
そして気づいたのです。ここまで深く自分の経験を語ったのは、この時が初めてでした。Hコーチは私の話に深く耳を傾け、心から認めてくださり、たった1時間で自己肯定感が大きく高まっていきました。この体験を通じて、コーチングの本当の素晴らしさを初めて実感することができたのです。それまで単なる質問だと思っていたコーチングが、実は丁寧な承認とフィードバックを重ねながら、相手のモチベーションを高めていく、とても深い対話だったのだと、私の認識は大きく変わりました。
迷いなく「セミナーに向けてのコーチングをお願いします!」とお願いし、月に2回、コーチング電話を受けることが決まりました。そして、この選択がどれほど運命的なものだったかは、時が証明してくれました。なんと、あの日から19年が経過した今でも、Hコーチ、いや、播磨弘晃コーチには変わらずお世話になっているのですから。
◆編集後記
コーチたちが一斉に手帳を開いた瞬間が、忘れられません!(笑)
🌟英語版
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