名前をつけた瞬間に、それは現実になる。名前をつけるまでは、ただの頭の中のアイデアだ。名前をつけて、それを生きよ。
◆前回のあらすじ
主人公がメンターの金井さんから「堀口さんの店とRITZでコラボレーションしよう」という提案を受けたことで、彼女の心に新たな希望が芽生えます。後日、グラマラスをテーマにしたファッション撮影の企画が動き出し、スタッフと共に準備を進め、最終的にラフォーレ原宿でのファッションショーを成功させます。その後、コーチングクラスで全国1位の売上を達成したことを報告すると、講師であるAコーチが突然店を訪れ、さらには他のコーチも巻き込み、主人公はセミナー開催へと背中を押されます。プロフェッショナルコーチたちとの出会いによって、彼女は新たな挑戦へと踏み出す覚悟を決め、人生の転機を迎えることとなります。
8.6 初セミナーのアドバイス
初めてのセミナーの日程が決まった日、私は期待と不安が入り混じる気持ちでメンターにメールを送りました。すると、思いがけず早く返信が届いたのです。画面に広がる文字の一つ一つが、私の中の不安を優しく溶かしていくようでした。
「セミナーで話をすることは、経験したことをリアリティーに話すのがいいです」
メールには、具体的な構成案まで記されていました。まるで一冊の本を組み立てるように、第1章では私という人間について、第2章では売れるカリスマ店員としての秘訣を語る─。そして、パワーポイントの必要性や、右脳左脳それぞれのタイプの聴衆への配慮まで、細やかなアドバイスが続いていました。緊張したときは2、3人の参加者に目線を向けること、いつもよりゆっくり話すことなど、実践的なヒントもちりばめられていたのです。
このメールは、白紙の状態だった私の心に、鮮やかな虹をかけてくれたようなものでした。経験豊富なメンターからの言葉の一つ一つが、成功へのイメージを次々と描き出していきます。翌日のコーチングセッションでは、その虹に導かれるように、セミナーの中身がほとんど完成しました。さらには、友人へのインタビューコーナーなど、思いもよらない演出も加わり、内容は予想以上に充実したものとなっていきました。
8.7 すべて叶えられることを知っている!
ある日、メンターのメールで目にした一行の言葉が、私の心を揺さぶりました。「すべて叶えられることを知っている!」。その意味を問うメールへの返信で、メンターは深い洞察を語ってくださいました。夢を叶えるには、現実を受け入れながら本音でやりたいことに焦点を当てること。そして、目標達成以上に大切なのは、本当に望む目標を設定することだと教えていただいたのです。
興味深かったのは、成功哲学の本についての持論でした。
「成功哲学に関する本たくさんもっていましたが、所詮そういう本を読むということは、成功していない自分を認めてしまうし、非常に潜在意識にとっても危険なことなので全部売ってしまいました」。
そういった本を手元に置き続けることは、むしろ「成功していない自分」を認めてしまうことになるという指摘です。2005年当時、『The Secret』もまだ世に出ていない頃、これらの言葉は宇宙からのメッセージのように新鮮に響きました。「ない」ものではなく「既にある」ものに意識を向けることの大切さを、私は少しずつ理解し始めていました。
そんな中、思いがけない機会が訪れました。ショッピングモール主催の店長研修が、なんとディズニーランドで行われることになったのです。この場で出会った店長たちは、私の話に興味を示してくださり、用意していたセミナーのビラを手渡すことができました。特に、有名ショップの3人の店長は、もっと話を聞きたいと言われ、後日の食事会では自然とグループコーチングのような展開になっていったのです。店長という枠を超えた新しい活動の種が、確かに芽吹き始めていました。
私の中で、不安は着実に期待へと変わりつつありました。メンターたちの言葉に導かれ、一歩一歩、自分の夢に向かって歩み始めていることを実感していたのです。
8.8 屋号誕生
セミナーの内容を固めていく中で、実務的な面も同時に進めていく必要がありました。参加費の設定は、私自身が初めて参加したセミナーと同じ金額にすることに決めました。当時はまだ「リスキル」という言葉もなく、会社員が外部のセミナーに参加することは珍しい時代。だからこそ、最初の自己投資として手の届く金額設定が大切だと考えたのです。
参加費が決まると、次は銀行振込用の名義が必要になりました。ふと思い立って、メンターの携帯電話にショートメールを送りました。「会社名を作るとしたら、何がいいと思いますか?」
その日の夕方には返信が届きました。「PEARL」や「BIRD CALL」などの提案をいただいたのです。私の目は自然と「PEARL」という文字に引き寄せられました。すぐに「PEARLなんとか」にしようと、英語の得意な友人に相談したり、インターネットで言葉を探したりし始めました。
そして、コーチにも相談のメールを書こうとした時です。「PEARL」と入力した後、たまたま「P」の下にあった「+」記号を押してしまいました。画面に「PEARL+」という文字が浮かび上がった瞬間、「あれ?」という気持ちと共に、なんだかとてもかわいらしい響きが心に残りました。すぐに「パールプラスにします」とメンターにメールしました。
夜11時という遅い時間でしたが、メンターからはすぐに返信が。「フランス語読みで、プリュスってどうですか?」という提案でした。そのひとひねりが、さらに音の魅力を増して、今の屋号「パールプリュス」が誕生したのです。
後日、女性メンターのTさんから「パールプリュスの意味は?」と質問され、はっとしました。メンターのインスピレーションと流れで決まった名前だったため、その意味を深く考えていなかったことに気づいたのです。
そこで改めて「パール」について調べてみると、興味深い発見がありました。真珠が生まれるプロセスは、貝の中に入った砂や虫などの異物が、長い時間をかけて真珠へと変化していく過程だったのです。
このことを知って、私は深い感動を覚えました。それは、まるで「相手の中にある答えを引き出す」というコーチングのプロセスそのものを象徴しているかのようでした。もともと相手の中にある輝きを、私が関わることでより一層輝かせていく―そんな思いが、図らずも「パールプリュス」という名前に込められていたのだと気づいたのです。
屋号が決まったことで、私の中でまた新しいアイデアが芽生えました。オリジナルバッグを作ってみたい―そんな思いが突然湧いてきたのです。最初は、Baliで買い付けをして、オンラインで雑貨を販売することを考えていましたが、考えを巡らせるうちに、自分のオリジナル商品を売ることのほうが、もっとワクワクしてきたのです。
ちょうどそのとき、一緒にBaliへ行ったアパレル関係の友人も独立して自分のオリジナル商品を作ろうとしていました。その縁で、メーカーを紹介してもらえることになったのです。
突然の思いつきでしたが、不思議なことに初セミナーに間に合うようなタイミングで、全てが進んでいきました。11月1日に友人にデザインを依頼し、わずか2週間でサンプルが仕上がるという驚くべきスピード。その気になれば、オリジナル商品はこんなにもすぐに形にできるのだと実感しました。
オリジナルバッグ制作の計画をメンターにメールで伝えると、すぐに返信をいただきました。
「シンボル、紋章とか、ロゴとか、ブランディングしていく上で大切です。手帳とかいいですね。マニアックなホリグチファンにはたまらないでしょうね」
そして、さらに重要なアドバイスが続きました。
「次はストーリー作りです。お客様をホリグチファンにするまでのストーリーを組み立てることが大切です。パールプリュスの商品はなんですか?リアルターゲットは誰ですか?話のストーリーを考えるとき、必ず誰かに向けてのメッセージがあります」
このメールを読んで、思わず笑みがこぼれました。特に「マニアックなホリグチファン」という表現に。メンターはいつも、こんな風に的確でユーモアのある言葉で私を導いてくれるのです。
早速、お返事を書きました。
「金井さんのメール、超笑ってしまいました。マニアックなホリグチファン!ってところ。本当に面白いことおっしゃいますよね。ストーリー作りを考えるのは楽しい作業です。今日も新しい視点をいただきました!」
そして、屋号の「プリュス」という響きの素晴らしさについても伝えずにはいられませんでした。メンターの創造性とインスピレーションの鋭さに、改めて感謝の気持ちが込み上げてきたのです。
実際の行動にも移っていました。セミナーの告知をブログで始め、「パワフルに行動したくなる、ワクワクの秘訣」という題名で内容も新しくアレンジ。Wordでビラを作り、地道な集客活動を続けていました。
一つ一つの小さな行動が、私の夢を具体的な形へと変えていく。そんな実感が、日に日に強くなっていくのを感じていました。
◆編集後記
>目標達成以上に大切なのは、本当に望む目標を設定すること。
夢を叶えるマジックがあるのかと期待してメールの返事を待っていたのですが、メンターのメールには当たり前のことが書かれていました。でもこの当たり前ができないものです。
本当の望みは、既に自分の中にあります。それを明らかにするために、心の声に耳を傾け、直感や感情に従って行動してみることが大事なことですね。
🌟英語版
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