★Grit & Glamor Epi.25 壊して、さらに良いものを築き直す。

頂点に達したときにあえて辞め、再び始めることほど勇敢な前進はない。

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初めてのセミナー成功を機に、主人公の人生は驚きの展開を迎えます。ブログを通じて名が広まり、読者からコーチングやコンサルティングの依頼が来るようになり、思いがけず芸能人の妻からも声がかかります。セミナー講師、バッグ販売、オンラインショップ運営と活動の幅を広げ、収入も急成長。しかし、副業の収入増加に伴い「確定申告」の問題が浮上し、偶然出会った税理士からの助言で難を逃れます。また、メンターからの連絡で尊敬する作家・本田健との縁が繋がるなど、シンクロニシティが次々と起こり、運命に導かれるように人生が加速していきます。これらの出来事が、彼女を「独立」への道へと向かわせるきっかけとなるのです。


9.5 SALE初日、DJイベントで華やかな幕開け!

2006年1月2日、セール初日を迎えた渋谷店で、初めてのDJイベントを開催いたしました。前回は東京店のスタッフによるDJが大好評だったため、今回はプロのDJとVJをお招きすることにしたのです。会場は、ハイパーでエネルギッシュな音楽で溢れ、スタッフ一同、大いに盛り上がりました。

このような素晴らしい機会は、Dさんのビジネスセミナーでご縁のあったSさんのご紹介によって実現しました。プロの方をお招きする際の報酬について、会社への稟議が必要でしたが、Sさんから「割引で10万円という表現にすれば通りやすいですよ」とアドバイスをいただき、その通りにしたところ、スムーズに承認されました。

実は渋谷店の壁は映像投影用に白く塗られており、天井にはプロジェクターも設置されていましたが、これまで活用する機会がありませんでした。今回のイベントで空間の雰囲気が一変し、近隣店舗の店長さんたちからも「いつもと違う雰囲気ですね!」とお声がけいただき、空間演出の可能性を改めて実感いたしました。

新年のご挨拶に訪れた常連のお客様も、セール初日から春物のレザージャケットや美脚パンツ、ツイストニットなどを次々とお求めくださり、店内はすっかり春の装いとなりました。

この日は、スタッフのKさんの誕生日でもありました。サプライズ好きの私は、ケーキを用意して終礼まで内緒にしておき、皆でお祝いすることができました。2006年の仕事始めから、このように素晴らしいスタートを切ることができたのです。


9.6 インターネットラジオ番組の収録

1月11日11時、大安の日に、コーチの方が主催しているインターネットラジオ番組の収録のため、六本木ヒルズアカデミーを訪れました。この番組は、人生をポジティブに生きている方々へのインタビューをHP上で配信しているものです。

この機会は、ビジネスセミナーで知り合った知人が番組主催者のSさんに私のことをご紹介くださり、そこからすぐに番組出演が決まったのです。収録は、六本木ヒルズの49階で行われました。

私は41人目のゲストだったそうですが、Sさんによると、これまでの収録日は曇りや雨ばかりで、この日のような快晴は初めてだとおっしゃっていました。そのお言葉だけで、私の気持ちは一層高まりました。

収録はノンカット形式で行われ、話が尽きることなく、通常30分のところを大幅に超過してしまいました。進行役のSさんは、収録開始早々「普段は汗をかかないのに、今日は不思議と汗が出るんです。すごいパワーを感じます...」とおっしゃっていました。

セミナーで自分の成功体験を振り返る機会をいただいたおかげで、思いのほかスムーズに伝えたいことを話すことができました。アパレル店長という肩書きを超えた貴重な経験を積ませてもらえたことに、改めて深い感謝の気持ちが湧いてきました。自己の力を信じ、より大きな舞台で自己表現をしていくべきだという宇宙からのサインだったのかもしれません。


9.7 突然の閉鎖

「突然のご報告となりますが、このブログを閉鎖することになりました。会社でHPが新設され、通販機能も備わることになったためです。2004年7月から約1年半続けてきたこのブログは、日々2000以上のアクセスをいただき、ファッション部門の人気ブログランキングでは半年以上も1位を維持することができました。これもひとえに、たくさんの励ましの言葉をくださったお客様のおかげだと感じています。店頭でお声がけいただいた方々との出会いなど、通常では経験できない貴重な出会いにも恵まれました。ブログを通じて広がる世界の素晴らしさを、心から実感した日々でした」

この突然の閉鎖は、私の休日にIさん主催の少人数制セミナーに参加していた際に決断しました。上司から「新商品についてはブログに掲載しないでほしい」という電話がかかってきたのです。一瞬、頭が真っ白になり、いろいろな感情が湧いてきて、時が止まったような感覚でした。しかし以前から「会社からクレームがあれば辞める」という覚悟はあったため、即座に「ブログを辞めます」と答えました。この決断にIさんや友人たちは驚いていましたが、成長をするためにリスクを取ったのです。

このブログは元々、店舗のセールスアクションとして、会社への相談なく始めたものでした。その後、会社の暗黙の了解のもと継続が認められ、大きな成果を上げることができました。しかし、会社の新しいブランディング戦略を考えると、自主的な閉鎖が最善だと判断しました。ブログの効果を実感していたスタッフたちも驚きましたが、前向きに受け止めてくれました。

最後の記事を投稿した後、読者の方に惜しまれつつも、有難いことにたくさんのコメントを頂きました。そして、すぐに個人用の新しいブログを立ち上げることに決めました。スタッフのIさんに相談したところ、「Fashion Source」というタイトルを提案してくれました。そのおかげで、落ち込んでいた気持ちも一日で前向きに切り替わり、まさに「ピンチはチャンス」を実感しました。こうして私は、また新たな世界への扉を開いたのです。


9.8 相手は自分の鏡

ブログ閉鎖のタイミングで、久しぶりに社長とのミーティングのため、銀座店のオフィスへ向かいました。成果を出した自負があったため、今回は胸を張って社長とお会いできると楽しみにしていました。

銀座のビル5階にあるオフィスは、前回よりもさらにブラックな世界観が強調され、薄暗い照明に黒いサテンのカーテン、ブラックのソファー、そして差し色の紅が際立つX-JAPANのような空間に変わっていました。私はブラックのソファーに浅く腰かけ、社長を待ちました。

いつもと変わらない軽やかな様子で入室された社長。私は「やっと認めてもらえる」という期待を抱いていましたが、渋谷店は「まだまだレベルが低い」と評価され、さらに新プロジェクトの説明は難解で全く理解できませんでした。怒りが込み上げてきましたが、ただ黙って聞くしかありませんでした。

自己投資してコーチングを学び、副業も順調で、常に自己向上に努めてきた自負がありました。しかし、社長は私の背景を知る由もなく、承認を求めること自体が的外れだったのかもしれません。様々な感情が心の中で渦巻きました。

そしてランチの時間だっためお寿司屋へ。明るい店内であったためか、かえって気持ちが露わになり、思考より先に体が動いてしまい、「もう帰ります」と言って席を立ってしまいました。社長が慌てて立ち上がりましたが、私は「帰ります」と告げて、駅の方へ走りました。車内で座った途端、怒りと中座した失礼への罪悪感で感情が溢れ、涙が止まりませんでした。すぐにメンターの金井さんにメールを送りました。

すぐに返信をいただきました。

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1月16日

ほりぐちさん

相手は自分の鏡だね。社長の言葉は、自分に投げかけている訳です。まずは肯定しましょう。お礼のメールをしたらいいです。ありがとうございました。を言ってください。

金井豊

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その優しい言葉に、また涙があふれました。「ありがとう」と言えることがあるのだろうかと思いましたが、真実が見えてきたのです。すぐに社長へメールを送りました。「先ほどは大変失礼しました。お忙しいところ、お時間を作っていただき、ありがとうございました」と。返信はありませんでしたが、私の中でピリオドを打つことができました。

「相手は自分の鏡」という言葉の意味を考えました。人は自身が多忙を極めていると、他者への言葉も厳しくなりがちです。相手の置かれた状況を理解し、感謝を見出すことができたという経験は、心の成長と深い癒しをもたらす貴重な学びになったのです。

◆編集後記

今回は書きながら当時を思い出して、涙ながらに執筆しました。

『Grit & Glamor』の中の19年前の金井さんにお会いしてから、2024年の金井さんにお会いする時間感覚は何とも不思議です。(笑)

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