★Grit & Glamor Epi.26 複雑に絡み合った感情をほぐしていく

決断が難しいとき、やらないと決めるか? それとも、怖いけれどやはり挑戦したい方に決めるか、誰かに助けてもらうのか? 最終的な答えは自分の中にある。

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2006年の年明け、渋谷店で華やかなDJイベントを開催し、盛況のうちにセール初日を迎えた私は、インターネットラジオ番組への出演を果たすなど、新年から順調なスタートを切っていました。しかし、突然ブログ閉鎖の決断を迫られ、成長のためにリスクを取って閉鎖を決意。その後、個人ブログ「Fashion Source」を立ち上げて新たな道を歩み始めました。さらに、社長との面会で期待とは異なる厳しい評価を受け、感情的に席を立つ失礼を犯してしまいますが、メンターから「相手は自分の鏡」との教えを受け、感謝のメールを送り、自らの内面を見つめ直す成長の機会としました。

9.9 嫌な予感といい予感

2回目のセミナー開催の日、1月20日。会場は活気にあふれていました。リピーターの方々や、渋谷店によく偵察に来る男性バイヤーたちが仲間を連れて参加してくれて、とても嬉しかったです。さらにブログの読者も集まり、総勢20名以上の方が顔を揃えるにぎやかな会場になりました。

今回のテーマは「出会いを行動に生かす!秘訣」。前回のセミナーで話したアパレル店長時代の成功体験とは違う視点からの挑戦で、少し緊張していましたが、前回もサポートしてくれたプロコーチお二人がまた力を貸してくれ、参加者にコーチング体験の時間を提供することができました。「夢を他人に話すなんて恥ずかしいと思っていたけれど、実際に話してみたら、こんなに気持ちがいいものなんですね」という感想が聞こえたとき、私が意図していた体験を提供できたことに手応えを感じ、胸が喜びで満たされました。

セミナーが無事に終わり、周囲のサポートのおかげで自信が少しずつ芽生えてくるのを感じました。もしかしたら、セミナー講師として本格的にやっていけるかもしれない……。しかし、メンターに「セミナーって何回くらいやれば慣れるものですか?」と尋ねたところ、「50回はやらないとね」という返事が返ってきました。思わず笑ってしまいましたが、同時にまだまだ道のりが長いことを実感させられました。

そして2月に入り、ついに私のオリジナルバッグの納品が完了しました。特に男性用の大きめのバッグは場所を取り、渋谷店のロッカールームに一時保管することに。しかし、そんなある日、普段は温かく見守ってくれていた年上の副店長が厳しい表情で私に声をかけてきたのです。「堀口さん、これはよくないですよ」。その一言が胸に突き刺さり、「もうここにはいられないのかもしれない」という不安が頭をよぎりました。

落ち込んだ気持ちのまま、休憩中に渋谷109の周りを歩いていると、思いがけない出会いがありました。私のバッグを手に、満面の笑みを浮かべながら歩いてくる有名なパリブランドの男性店長。その姿を見た瞬間、ふと心が救われた気がしました。「これは何かのサインかもしれない」と思わずにはいられませんでした。

ブログを突然辞めてしまったこと、社長とのトラブル、ロッカールームの私物化……会社員の世界では許されないことばかり。でも、新しい世界では、私のバッグを手に笑顔で歩いてくれる人がいる。まるで、二つの異なる世界が目の前に同時に存在しているかのような不思議な感覚でした。「これが、新しい道へ進むためのサインなのかもしれない」。そんな思いが芽生えた矢先、渋谷の西口で、上下レザーが印象的なところからつながったIさんとばったり遭遇。私のもう一人のメンターとの偶然の出会いに、運命の決断が確実に近づいているのを感じました。

9.10 すごい決断

しかし、本当に独立なんてできるのだろうか? 不安と期待が交錯するなか、ふとアイデアが頭に浮かび、私は思い切ってメンターの金井さんにメールを送ることにしました。

2月15日、少し緊張しながら「今日は重大な決断をしました」と書き出し、これまでの経緯を綴りました。これまで私は、自分なりの戦略でブログやPOP広告、顧客管理に力を注ぎ、売上アップに貢献してきました。しかし最近、会社の経営体制がトップダウンになり始め、自由に動ける余地がどんどん失われているのを感じていました。「私がここにいる意味が見出せなくなってきたのです」と書きながら、自分の気持ちがはっきりしていくのがわかりました。

さらに、会社のビジョンを聞くほどに、もはやそこに貢献できる自信がなくなってきたことにも触れました。実はこの一ヶ月、ずっと心の中にモヤモヤがありました。それが何なのか掴めずにいましたが、今はっきりと確信しました――自分はこのままではいけない、と。

とはいえ、いきなり独立するのは現実的ではないと感じていました。最後に、「金井さんの会社で私が活かせるフィールドはありますか?」と尋ねました。自分の新しい可能性を見つけたい。金井さんと一緒に、もっと挑戦できる仕事がしたいと素直に書きました。

翌日、2月16日、金井さんから返事が届きました。「すごい決断ですね」という冒頭の言葉に、少し肩の力が抜けたのを覚えています。そして、「堀口さんの才能を発揮できる場があるなら、ぜひ協力してもらいたい」と言ってくださいました。すぐに話し合いの時間を取りたいという申し出に、胸が期待で膨らんでいきました。

新しい道を歩む決意を固めつつも、親には一応報告しておかなければなりません。そのころ母は、毎週土曜日のバレエレッスンのために渋谷を通ることがあり、たまにランチを一緒にしていました。そのタイミングで、思い切って打ち明けてみました。

「実は……会社を辞めて、金井さんの会社に転職しようと思ってるの」と告げると、母は「えぇぇぇ!!あんた…」と驚きの声を上げました。まあ、当然の反応でしょう。これまで店長として試行錯誤しながら頑張ってきた私が、急に「辞める」なんて言い出すのですから。

でも、金井さんの話をすると、母の表情は次第に柔らかくなりました。私が金井さんと出会ってから、いろいろなことがシンクロし始めたことや、今の会社で感じていた違和感、そして自分の新しい可能性について話しました。そんな私を見ながら、母がふと笑顔を浮かべ、金井さんにカットしてもらったばかりの私を見て、「かわいいじゃない! 横顔が!」と茶化しながらも、どこか嬉しそうに言いました。最初は驚いていた両親も、私の話を聞くうちに、「よかったね!」と応援の言葉をくれるようになりました。

金井さんのような素敵なメンターに出会えたこと、そしてその人と一緒に新しい挑戦ができるかもしれないこと――話しながら、自分がどれだけ幸運に恵まれているのかを再認識しました。母の理解を得て、金井さんの言葉にも支えられて、私はついに会社を辞める決断をしました。そして、事業部の社長にメールを出しました。

その後も金井さんとのメールのやり取りが続き、メンターの会社でどんな役割を果たすべきかが少しずつ見えてきました。

しかし、ふとしたときに「これで本当にいいのか?」という疑問が自分の中で湧き上がってくることもありました。金井さんの会社での仕事は魅力的でしたが、それは結局、これまでの自分の成功体験を別の場所で繰り返すだけなのではないか……という不安が頭をもたげたのです。「過去の成功体験を生かすだけでなく、全く新しいことに挑戦すべきでは?」と自問する瞬間もありました。

この頃、私の心は「安定を求める気持ち」と「未知の世界への挑戦」の間で揺れていました。安定した道に進めば安心感が得られる一方で、内心では「本当にやりたいのはこれなのか?」という疑念が消えませんでした。

そんな葛藤を抱えながらも、私は日々、店頭での仕事に全力を注いでいました。自分が編み出した「接客の方程式」という独自のメソッドを実践し、コーチングやカラーアナリシス理論、潜在意識や喜びのエネルギーを活用した接客スタイルで成果を上げていました。このメソッドをもっと多くの人に広めたいと思い、接客ノウハウとしてまとめたDVDを作る構想が膨らんできました。

そのために、アパレル店長としての最後の時間を、このメソッドを形にする準備に充てようと決めました。毎日の接客を通してノウハウを磨き上げ、最良の形で次に繋げたい――そんな決意を胸に、残りの日々に全力を注いでいったのです。

しばらくして、「堀口さんの考え方も理解できます。3月にお時間下さい」という事業部の社長からの返事が来ました。

◆編集後記

過去からの延長線で進んでいくのか? それとも未知の世界へ飛び込むのか? わかりやすく2つの世界線が描写されたシーンでしたね。次のエピソードに期待してください!(笑)

🌟英語版


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