期待しないのはわかっているけど、どんな距離感がいいの?

 長年コーチングしているクライアントさんも中堅どころになっていくと、人に教えたり、上司に意見したりすることも増えて、傾聴力の悩みがでてくるものです。

 今回は、「期待しないのはわかっているが、顔に出てしまうところがある。どうすれば、顔に出さないでいられるか?」という悩みでした。


「期待を隠すにはどうしたらいいんでしょうかね? 期待はしないけど、気にはかけている感じ。期待を切り捨てたらいいのか? 器が大きいのでしょうか? やってもいいし、やらなくてもいいし。僕の場合、押し付けようとしているのかも。なんでやらないの?って、でもそれは自分の理想像。それを見せないようにするにはどうしたら? コーチングのときも、クライアントさんがもっとこうしたほうがいいのに、と思うときって、あったりしますか?」

「コーチをはじめたころはありましたね。こうしたほうがいいのにって、だから、そうしなかった場合、何か困っていることはありますか? と、セッションがない間もメールでお尋ねしていたんです。それで、相手もやろうとするけど難しい。そんなやりとりを悩んでいたとき、私のコーチが教えてくれた言葉があって、『要望するけど期待しない』と言われました。そうしないと、依存者を作ってしまうからと。こちらは、リクエストはする。やるかやらないかは、相手に選んでもらうってことですね。リクエストもしなくなってしまうのとは違うと思います」

「なるほど。リクエストをしなくなるというのは、コミュニケーションをとらなくなるってことですよね。自分の師匠もきっとうまいんだろうな。導いているような感じもありながら、選ばせるようにしているのかも」

「コミュニケーションをとらなくなる、たしかにそうなってしまうかも」

「伝えるだけ伝えてみようと思います」

「それに、もっと伝わりやすくするには、普段から相手を認めたり、感謝したりすることですよね」

「あー。師匠も持ち上げるのはうまいですよね。でも、期待しないと思っている相手に感謝するのは難しいですね~」

「心で思わなくても、存在していることはありがたいことだし、まずは口だけでも言うようにしていけばいいですね。事実だし」

「そうですね。まずは口だけでも。このような悩みがでてきたのも、成長しているってことにしよう」

「そうですよ。要望するけど期待しない、ってはじめて教えましたから!」

 アドバイスがあるとき、相手がゴールを達成するために、ベターな方法を教えたほうがいいかなと思って、熱く言ってしまいがちです。

 しかし「ただ提案するだけ」の軽さになると、相手にとっては「選ぶ」感覚になるので、「知らなかった選択肢を教えてもらった」くらいになって、やるかやらないかのプレッシャーがない分、かえって実行する可能性の方が高まります。またその選択肢から、新たなるアイデアを自分で思いつくことも多いです。

 そのうち、相手のアイデアは天からのお告げだ!と思ってきます。私はそう思うタイプで、いろいろと助言を実行してきて、今に至ります。(笑) 

 しかし、英会話の先生は私に言った助言を、たまに忘れたりするのです。「僕、そんなこと言ったっけ?」と。「言いましたよ」と言うと、「宇宙からダウンロードしたのかも。(笑)」と言っていました。

 それくらい自然に、アイデアを選択肢のように出し合える関係性になると、宇宙からダウンロード状態になります。まずは、「要望するけど期待しない」の実行です。これができると、Win-Winの関係性になっていくのです。