次のステージへ行くのをブロックしていたのは、「失敗」の捉え方だった。

 「もっと人の役に立ちたいという思いを、どう進ませるかについて」というセッションでした。

 新年となり、「今年やりたいこと」についてクライアントさんは考えていたようです。そのときに「将来の理想の状態」と「今の自分」に大きなギャップがあるのを感じて、自分のライフワークを知ることが、まずは必要なのかな? と思ったようです。そこで、7年前から、私のコーチングを受けてみたいと検討されてはいたようですが、「厳しい指摘をもらったら嫌だなあ」と、ぐずぐず悩んで受けられていなかったとおっしゃっていました。

 クライアントさんは、もともと心理学に興味がおありのようで、学生時代専攻していたようです。
 30代になり、コーチの資格も取得されるところまでいったようなのですが、生かすところまではいけなかったようでした。今は子育てもしながら、フルタイムでお仕事もされているようです。

 しかし、どこかで直接「人の役に立ちたい」とずっと思っているようでした。そこで、「ライフワークとは何か?」を考えたいというテーマでご依頼を頂きましたが、自然にクライアントさんの話したいことがどんどん出てきたので、そこに寄り添って、そのまま傾聴を続けていきました。

 クライアントさんの普段のお仕事での働き方や、お仕事以外での自分の関わり方などを、客観視してみました。
 「人の役に立ちたい」となると、自主的な行動が必要です。こちらから働き掛けたり、与えたりすることです。個人事業主になると、誰も指示してくれませんので、自分からやることを見つけださないといけないのです。
 そして見えてきたのは、「人から与えられたらやるけれど、自分から課題を作ってやることはあまりない。うまくいかないと引いてしまったり、潔く辞められるが、逃げているのかもしれない」ということでした。

 過去に、プライベートで社会貢献の一環として、役割を頼まれたことがあったようなのですが、副業はしていけない職場かどうか確認するために上司に聞いたら「兼業禁止」と聞いて、「そうですか…」と諦めてしまったことがあったとおっしゃっていました。
 私が、「ペンネームを作って活動をしているクライアントさんもいらっしゃいますよ」と言うと、「そうか!」と気付かれました。あるビジネスセミナーで、「本名でやること」と言われたことがひっかかっていたようなのです。世の中を見たら、著名人も、本名でない方はたくさんいらっしゃるのではないでしょうか。どうも、自分が行動出来ない理由を集めてしまっている、そんな傾向も見えてきました。恐れがありそうです。

 さて、まずは個人レベルで、できることとして「発信する」についても考えて行きました。
 以前は、学んだことをアウトプットしていたようです。人から学んだことをシェアするというのは、自分の発見をアウトプットするというのと違うけれど、そのことについてどう考えているのか?を質問してみたら、クライアントさんが、すっかり忘れていたという、過去の引っ掛かりを急に思い出されたようで、ご自身でも驚いていらっしゃいました。

 自分の感じたことを書いたことで、相手との関係がぎくしゃくしてしまったということです。やがていざこざとなり、自分の感じたことをとても書きにくくなって、辞めてしまったとのことでした。

 過去の罪悪感が出てきました。一緒に、過去の再構築をしていくことにしました。
 クライアントさんは、自分自身がネガティブなアウトプットをしてしまったことを罪悪感に思っていて、そこでその出来事は葬り去られていました。私が「ニュートラルに捉えていたら、また書くことが変わったのではないか」と、その失敗からブレイクスルーするための発想を提供すると、クライアントさんは、とてもハッとしたようでした。自分だけでなく、それは相手にも言えることです。だから、お互いさまだったのだ、と見られたことで、過去の解釈が次第に変化していきました。

 そこでさらに気付いたことは、「潔く断ち切れる」というのは、「失敗を生かせていなかった」という面があったということです。

 「失敗でしか学べないんです」と私が言うと、「失敗しないように、しないように、ずる賢く考えようとして、失敗を避けていますね…」とおっしゃいました。クライアントさんが、次のステージへ行くのをブロックしていたのは、「失敗」の捉え方だったのです。

 私が唯一、毎週読んでいるメルマガは、ふかわりょうさんのメルマガなのですが、彼の考え方にとても共感していて、キャスター、音楽、文章などクリエイティブな才能を発揮され、ご活躍されているだけあり、その発想法にとても気付きがあるのです。

 今週は、ピアニスト中村紘子さんの演奏会で、ふかわさんが演奏を依頼されて、その本番から何に気づいて、どう、新しい行動へ結びついたか? が書かれていました。
 すごく練習をされて、リハーサルではうまくいったのに、本番では、自分の思うところまで行けなかったようで、ずいぶんと悔やまれたようでした。そして、感情を発散させるにはどうしたらいいのか?を考えていて、「都内のピアノ・ホール」を探し始めた自分がいたそうです。つまり「自分に明らかに足りないのは本番の数」だと気付いたからだそうです。

 悔しい感情を味わい尽くして出てきた気付きです。物事をニュートラルに捉えることで、「本番の数が足りないからだ」という真実に気付けたのだと思います。

そのメルマガ


 「いかに失敗しないか?」そうやって、失敗を避けてきていることが、ご自身が最初におっしゃっていた「逃げ」の言葉に隠れていました。コーチに「厳しい指摘をもらったら嫌だなあ」と感じられたことも、失敗をしたくないことが暗に含まれている言葉です。

 「失敗は成功のもと」という、ことわざのとおりだと私は思っています。コーチになってからも失敗のオンパレードです。コーチングスキルを学んだのに、相手をしょっちゅう傷つけていた私でした。「傷つきました」と何度か言われました。ありがたいことにそうおっしゃって下さった方のお陰で、よりよい傾聴の仕方を追求することが出来たのです。
 「私は、相手のことをよく傷つけてしまうから、コーチに向いていないんだ」と、ある意味潔く辞めるポイントとなる場合もあるかもしれませんが、私は続けることを選びました。

 続けていくには、山あり谷ありです。失敗とか、うまく行ってないと思うことがあるたびに、ターニングポイントとなり、新しい行動へと結びついて行くのだと思います。失敗の感情を味わいつくしていく先に、気付きがあり、新しい自分へ成長するチャンスなのです。

 対面90分のセッションで、発信に対しての恐れなどにも向き合い、過去の原因にもアプローチしたことで罪悪感を昇華。次第に、起こりうる失敗を生かすことに、前向きな気持ちで取り組めそうな気持ちになり、やるべきことも明確になったセッションでした。

 セッションが終わって数時間後、新たに立ち上げたブログのリンクが送られてきました。その日だけでなく、翌日も書かれていました。新しいスタートを切れたようです。失敗も受け入れる思考が搭載されたことで、流れに乗っていかれると思います!


 今日はこちらの質問はいかがでしょうか?

失敗したことで自分を責めたままにしていることはないですか?