他人の言動に影響される…その原因だったものは何か?

 1回目のセッションを受けたあとは、とても気分が良く、暫くの間は自分の好きに動けたそうですが、しばらくすると、元の気持ちに戻り、何となく憂鬱になったというクライアントさん。
 2回目のセッション準備用紙を拝見したとき、「今日のテーマは怒りだな…」と私は感じました。しかし、先入観にならないように脇に置いて、まずは傾聴です。


 セッションの中では、ニュートラルな観点からその人自身について考えて行くので、自由な時間となります。
 その調子でいつもの日常に戻ったクライアントさんは、ニュートラルとジャッジの世界の違いがはっきりと見えてきたのでしょう。イライラすることが際立ってきていたようでした。

 上司はコーチングしていると言いながらも、話を聴いてくれない。自分の業績のために、早く昇進してくれと言っているかのような発言。調子のいいことを言ってくる。気持ち的に無理のある建前発言をしなくてはならなかった研修…。

 また、部下たちの話を意識して聴くようにしたところまではよかったけれど、何でも聴いてくれると思われて、困っていることをいろいろと聴くことになり、結局自分のやることが増えて、自分が困ったようです。
 「部下の話を聴くようになって、堀口さんも困ったことはありませんでしたか?」とクライアントさんに聞かれました。

 まずは、そのことについて「何を聴くか?」に違いがあるのだということを、クライアントさんにお教えしました。

 クライアントさんがしていることは、御用聞き。部下が自分の頭で考えられるようなサポートをする「聴く」をしていくことが、職場では必要でしょう。
 自分の頭で考える考え方をサポートするのです。コーチングというのは、自分で考える力をつけるための考え方をクライアントさんに教えているともいえるのです。


 「部下が自分の頭で考えない」という悩みを持っている管理職の方は少なくないのだと思います。かくいう私も、アパレル時代の社長にそう思われていたに違いありません。
 
 ある日のやり取りで、「自分の頭で考えなくてはいけないのか?!」と驚いたのです。会社で働いている以上、会社に言われたことについて、最大限の力を発揮すればいいと思っていたのです。まさか、自分で色々とクリエイティブに考えていいだなんて、思ってもみなかった…ということです。考えてきたつもりが、言われたことを最大にしてきただけで、何もない状態から生み出すという発想は、まるっきり私にはありませんでした。

 ゼロから生み出すための考え方に慣れていなかったものですから、社長が実際に私と一緒にストアーツアーをしてくれたのです。そこで初めて「ゼロから生み出す考え方」に触れました。その経験があったからこそ、独立へつながったのだと思っています。

 そこで思い出したのは、6年前にベストセラーになっていた『星野リゾートの事件簿』です。考えるリセプター(受容体)がなかった従業員にどう「考える力」をつけさせていったのか? のプロセスが綴られている内容だと記憶しています。




 さて、話は戻って、「他人に影響される、ブレる自分」ついてです。
 私はセッション準備用紙を読んで感じたことをクライアントさんに伝えました。「上司に対して怒っていませんか?」と。

 するとクライアントさんは、「上司が見てくれない気がするのです。前は見てくれたのに。だから見てくれないと、何も言われないと、自分が悪いと思ってしまうんです」とおっしゃいました。


 それを聴いて、さらにフィードバックしました。
 「怒りの原因は、自分が自分を責めていることからきていると思いますよ。自分が自分を責めているから、あんたも悪いと思いなさいよ、と相手も責めてしまうという循環になっているのではないでしょうか?」

 まさにそのようでした。
 子供の頃、第一子だったので、下の子が何かをしても、「あなたが悪い」とよく言われていたとのことです。これまでの人生の中でも、そのような役回りを何度か体験したようでした。

 思い込みの世界でしょう。「あなたが悪い」と上司に言われてもいないのに、「言われないこと=私が悪い」と無意識にクライアントさんは取ってしまっていたのです。自分で自分を責めれば、それは相手へも怒りが出るでしょう。
 クライアントさんは、無意識で自分を責める癖があったことに、初めて気づかれたようでした。

 ゆるしの儀式で手放してしまいましょう。「自分を責めていた自分を許します」と紙に書いて燃やすように提案しました。

 自分で自分を責めていたことについてセッションで話しただけでもだいぶ軽くなられたようです。そのあと、ずっとやりたいけど、やっていなかった2つのことについての楽しい話で締めくくりとなりました。


 今日はこちらの質問はいかがでしょうか?

自分を責めていることはないですか?