相手の反応が怖い。どうすれば改善点をもっと伝えることが出来るのか?

 「スタッフたちに改善してもらいたいことを、今より10倍言えるようになるには?」というテーマでのセッションでした。月1のセッションで、3年目のクライアントさんです。スタッフのマネジメントについて、悩んでいらっしゃいました。スタッフとのコミュニケーションにおいて苦手なことがあれば、プライベートでもそれは同じこと。結局、「嫌われたくない」というところから、自分の伝えたいことが伝えられないという問題のようです。

 とはいっても、お店は円滑に運営していかなくてはいけないですから、面談を導入したり、辞めて欲しいスタッフには辞めてもらったりと、今まで着手できなかったところに、取り組んできました。セールスも過去最高をマークするなど、順調のようです。
 
 しかしながら、まだ伝えたいことは3割程度しか言えていなく、やはり、相手の反応が怖かったりして、飲み込んでしまうことがおおいようなので、そこをもっと改善したいとのこと。
 最近のベストセラー『嫌われない勇気』も読んで、「結局は相手の受け取りかた」と書かれて入るけれど、実践に移すことは難しいとおっしゃっていました。

 『嫌われない勇気』というタイトルは、とてもキャッチーだと私は思いますが、嫌われてもいい・・・とは、言える人も思っていないのではないでしょうか。
 私は、伝えることができる方だと思いますが、私だって、嫌われたくありません。(笑)だからこそ、どう言えばいいのか? ものすごく考えてきたわけです。

 その本によると「感情を切り離して」と書いてあったようでした。それで、私が思い出したことがありました。コーチング講座でとても印象的だった講義「フィードバック」についてです。

 例えば、「遅れてきた部下に、遅刻を改善してもらいたい。どう伝えるか?」というシーン。
 ぱっと思いつきそうなのが、「どうしたら次回から遅刻しなくなりますか?」とか、「何で遅刻したんだ!」というフレーズです。

 しかしそこにはこうありました。「フィードバックとは、事実を伝えること」つまり、8:00の待ち合わせで20分遅刻してきた部下への伝え方は、「8:20だ」です。そう言われたら、相手からなにか返そうとするのではないでしょうか?

 具体的にするために、どんな場面でクライアントさんがスタッフに言いたいことがあるのか? お聞きしました。
 例)受付でお客様の見えているところにメモがあるときです。
 クライアントさんが言いたいこと。「名前のメモが出ているからしまってください」
事実のフィードバックで言うと。「名前のメモが出ているよ」となります。

 そのとき「その言い方って嫌味になりませんか?」と、クライアントさんが言いました。
 私も同じことを思ったことがあります。しかし、言ったあとの自分の感触を感じてみると、「事実を言っただけだし」という、実にあっさりとしたものであることに気づくのです。

 私は、フィードバックの講義を受けて、長年の悩みが解決したと思いました。何かを伝えるとき、命令にするのも、気持ちに何かが残るし、婉曲的な表現でいうのも、なんかこびりついている感じもするし、もっとあっさりと、嫌みなく伝えることはできないのかと、ずっと考えていたからです。
 事実を述べることの効果は、「相手が自分で改善できるように促せる」ということなのです。コーチングは、アドバイスをしないというルールがありますが、それはいつでも「相手が自分で気づけること」をモットーにしているからなのです。そのために、フィードバックというスキルはとても欠かせないものになっています。

 「感情を切りはなすこと」は、感情を殺すのとは違います。感情は、ないことにしないで、味わって手放すことが、私は大事だと思っています。不安とか焦りとか、そういった気持ちでいると、思考がどんどん悪い方向へ引きずられていってしまいがちです。そうならないように、事実を見つけることが、大切だということです。

 「お金がないから買えない」と悲観的に考えがちなのは日本人。「私はこれを選ばなかった」と、事実に着目するのがフランス人だと、ある本に書いてありました。なるほど、そういう捉え方をすると、次に進みやすいなと思いました。
 事実を捉えていくことは、感情に引きずられないで済む視点です。悩みの解決が一段と速くなると思います。
 クライアントさんは、「それならやってみられそう」と最後におっしゃっていました。