完結せず、進化し続ける表現の美学 - プロセスを生きる

 「こんどはこんど、いまはいま」。映画『PERFECT DAYS』の中のセリフです。平山の日々は東京のデザインが施された美しいトイレを清掃する仕事。部屋には、彼が愛する本やカセットテープ、小さな植物があり、定番のランチ場所、銭湯、夜の食堂が決まっている。そして休日はコインランドリーと古本屋、木漏れ日の写真を現像に出し、お気に入りのママのところへ。

 セリフがほとんどない。クライマックスがあるわけでもないし、起承転結もないし、伏線を回収するわけでもないし、説明もない映画。日々のその人だけが感じる小さな幸せを映画にしようと思ったドイツ人のヴィム・ヴェンダース監督のインタビューは、映画の続きを見ているようで、感動的で美しいシーンでした。

 その監督が作品作りについての信念を話していました。「映画が商品になってしまったら、それは大きな違いです。商品は眺めるだけです。プロセスでは、人が中へと入って行きます。『PERFECT DAYS』は、まさにプロセスでした」。

「堀口さんのブログは、完成していなく、プロセスを見せられているようだ」と、15年以上前にアーティスティックなクライアントさんに言われたことがあります。いつになったら、完成するのだろう? と私も自分の完成を待っていたのですが、今でも完成していない。ChatGPTとの傾聴の本もプロセスだけを見せたいと思い、説明のない本にしたいと思いました。

 商品でなく、作品を作る。これからも私もそんな信念で表現をしていくことを続けたいと思わせられました。