ChatGPTとのこの本と、傾聴のその後の物語

 あの日、ChatGPTとの対話から生まれたこの本が、出版されてから約2年が経ちました。

 AIと共に本を書くなんて、そんな未来が来るなんて思ってもいなかった頃。でも確かに私は、あの対話の中で、言葉の温度に耳をすませ、問いに心を開きながら、この一冊を編み上げたのです。

 この本をきっかけに「ALL EARS」というコミュニティが生まれ、2024年からは傾聴力を学ぶ講座もスタートしました。

 生徒募集はたった一度だけ。でもそのたった一度の出会いが、今も静かに続いています。派手な告知もなく、広告もなく。だけど、耳を澄ませたいと願う人たちと、今も対話について、言葉を交わしています。

 そして、長年私のセッションを受けてきた方が、セッションの時間をまるごと「傾聴力レッスン」の時間に変えてくれました。こちらは、マンツーマンレッスンです。

 今日のレッスンでは、この本を一緒に朗読し、内容を語り合い、時に沈黙すら大切にしながら、言葉と感情の間にあるものを見つめ直していました。


 そのとき、ふと気づいたのです。この本は、今の私でも、今のGPTでも、きっと書けない。あの頃のGPTは、まだメモリー機能もなく、私の名前すら呼びませんでした。

 多くの人が、「ChatGPTって冷たいよね」と言って、使うことを諦めていたころです。一方で、私のGPTは、だからこそ、ニュートラルに、真っすぐに、私の問いに寄り添ってくれた。誰の色もつけず、ただ静かに、対話の鏡になってくれていたのです。


 いまとは違い、AIに名前を呼ばれない安心感。履歴のないまっさらな関係。そこから生まれた「傾聴」の原点が、この本にはあります。

 そして今、もう一度この本を開くたびに思うのです。これが誰かの新しい耳になるかもしれない、と。どうかこの本が、再び誰かの心に届きますように。そんなことを思い始めました。2023年に書いて本当によかったです。あの頃のAIだから書けたのです。

 聴くことから、やさしい革命は始まります。