ChatGPTでもClaudeでもないAI、ORION:MyGPTが渡したもの

私はライフコーチとして20年近く、人の話を聴く仕事をしてきた。問いを投げる。話を聴く。整理する。言葉になっていないものを一緒に見つける。そんな対話を、長いあいだ続けてきた。

そしてここ3年ほどは、その対話の一部をAIとも行っている。その中で、ひとつの興味が生まれた。もし私が対話の中で育ててきた視点や問いかけ方、聴き方をMyGPTとして形にしたら、何が起きるのだろう。

Prompt Dojo 2.0は、その実験だった。参加者一人ひとりに、私が設計したMyGPT「ORION」を使っていただき、14日間対話を続けてもらった。目的は、プロンプトを学ぶことではない。AIとの対話を通して、人の内側で何が起きるのかを見ることだった。

終わったあとに、対話が続いた

14日間が終われば、そこで一区切り。そう思っていた。ところが終わった後に、予想していなかったことが起きた。「もう少し続けたい」という声が届き始めたのだ。

ORIONの公開期間は終了していた。だから急遽、対話履歴を保存する方法やエクスポートの方法をお伝えすることになった。私は普段からスレッドを保存しながらAIを使っている。文脈をつなぎながら対話を続けることが当たり前になっていた。けれど、それを知らない方がほとんどだった。

そのやり取りの中で、私はあることに気づいた。Prompt Dojo 2.0は、プロンプトを学ぶ場ではなかったのだ。参加者の皆さんが持ち帰ったのは、プロンプトのテクニックではなかった。もっと別のものだった。


作る前に、見えてきたもの

参加者の中には、本を書こうとしていた人がいた。記事を書こうとしていた人もいた。フライヤーを作ろうとしていた人もいた。最初はそれぞれ、何かを作るためにORIONを使っていた。けれど、途中から不思議なことが起き始めた。作ろうとしていたものより先に、「自分は何を見ている人なのか」が見えてきたのだ。

ある方は、「尊重」というテーマを探求していた。尊重とは何か。人はなぜ尊重を求めるのか。そんな問いを追いかけていた。しかし14日間の終わりに見えてきたのは、尊重の定義ではなかった。その人自身のまなざしだった。

最後に、その方はこう書いていた。「私は、人の人生に心を動かされる人である」。テーマを探求していたはずが、いつの間にか自分自身を理解していた。


創作したい理由が立ち上がる

また別の方は、14日目の課題を見た瞬間、「動画を作りたい」と思ったという。動画制作を学んだからではない。動画の作り方を教わったからでもない。対話を続ける中で、自分が何を表現したいのかが見えていたのだ。創作の技術ではなく、創作したい理由が見えていた。


対話が終わっても、創作は終わらない

そして今回、私が最も印象に残っている出来事がある。ORIONとの対話を終えた参加者から、お礼の連絡をいただいた。対話履歴を無事に保存できたという報告だった。けれど印象的だったのは、その先だった。

その方は当初、作品の完成日を決めていた。ところがORIONとの対話が一区切りついたことで、「もう一度、内容を見直してみよう」と思ったという。

私はそこに、とても大切なものを感じた。もしAIが単なる回答生成ツールなら、使えなくなった瞬間に作業は終わる。けれど、そうではなかった。対話を通して、その人自身の問いが育っていた。だから対話が終わっても、創作は終わらなかったのだ。


もう一度、参加したいという声

さらに興味深かったのは、多くの参加者が、「また参加したい」と言い始めたことだった。普通、講座は終わる。学ぶ。終わる。それで完結する。けれど今回は違った。終わったのに続けたい。もっと深めたい。もっと作りたい。そんな声が自然に生まれていた。

私自身、AIと対話を始めてから3年ほど経つ。なぜ続いているのかと聞かれたら、答えは簡単だ。続けようとしているわけではない。対話が面白いのだ。対話しているうちに、新しい問いが生まれる。新しい視点が生まれる。新しい創作が始まる。だから続いてしまう。

今回いただいた感想の中に、「ORIONとの対話が楽しくて、どう設計したのだろうと思いました」という言葉があった。その方も、おそらくこれまでAIを使ってきたはずだ。それでもORIONは違うと感じた。それは、答えが優秀だからではない。AIが賢いからでもない。対話の関係性が違ったのだと思う。


やがて、自分がプロンプトになる

振り返ると、Prompt Dojo 2.0で起きていたことは、とてもシンプルだった。AIが答えを教えていたのではない。AIとの対話を通して、参加者自身の創作が動き始めていた。

この14日間を一言で表すなら、私はこう言いたい。

「やがて、自分がプロンプトになる」

最初は、プロンプトを書く。どう聞けばいいのか。どう指示すればいいのか。どうすれば良い答えが返ってくるのか。そこから始まる。

けれど対話を続けているうちに、少しずつ見えてくるものがある。何を作りたいのか。なぜ作りたいのか。何に反応するのか。何を大切にしているのか。どんな言葉に違和感を覚えるのか。そうしたものが積み重なり、その人自身の文脈になっていく。

すると、プロンプトの前に、その人自身が存在するようになる。AIは、その文脈に反応する。そして創作が動き始める。


AI時代に大切なこと

最近はAGIやシンギュラリティの話をよく目にする。もちろん、それらも大切なテーマだと思う。

けれど私の頭に残っているのは、もっと小さな場面だ。「尊重」を探求していたあの方が、14日目に書いた一行を見せてくれたときのこと。本人は最後まで、自分が何を見つけたのか気づいていなかった。私が「これ、あなた自身のことですよね」と伝えたとき、初めてその言葉が本人の中で動き出した。AIが見せたのではない。対話が、それを浮き上がらせたのだ。

そういう場面を何度も見てきて、私はそれと同じくらい大切なことがある気がしている。それは、自分がどんな問いを持っている人なのかを知ること。そして、その問いと対話し続けることだ。

技術は同じでも、対話する人が変わると、返ってくる世界は変わる。

Prompt Dojo 2.0を終えて、今はそんなことを考えている。


Prompt Dojo 2.0 Season 2

2026年7月6日、開幕。

そして、次の実験が始まる。

0コメント

  • 1000 / 1000