AIと一緒に、20年分の仕事をもう一度ひらいてみた
最近、外のプラットフォームに仕事のメニューを並べようとしている。
そこで、ちょっとした問題にぶつかった。
そのプラットフォームでは、私の実績は「0」なのだ。
独立して20年。仕事をしてきた期間は長い。それでも、新しい場所へ行けば評価も実績もゼロから始まる。
さて、どうやって自分がこれまでやってきたことを伝えよう。
そんなことを考えていたとき、ふと思った。
本当に、私はゼロなんだろうか。
もちろん、ゼロではない。
ただ、これまでの仕事の多くが、今の活動の表面から見えなくなっていただけだった。
昔のクライアントからもらった感想。
販売を終えたオンラインコンテンツ。
セミナーやDVD。
2006年から2019年までのブログをエクスポートしたら、4,562記事あった。
そして、クライアント自身に書いてもらい、私が編集して発表してきた体験記が70話以上。
独立してからずっと、私は何かをつくっていた。
でも、発表が終われば次へ行く。
そうしているうちに、以前つくったものは少しずつ奥へしまわれていった。
最近、それらをAIと一緒に引っ張り出している。
AIに新しいものを作ってもらうためではない。
すでに完成したものを、もう一度読むために。
2015年につくった、6つの物語
その中に「ひとみずむ」という作品がある。
コーチングを受けたクライアント自身に、自分に起きた変化を物語として書いてもらい、私が編集して発表していたものだ。
一つの作品ができるまでには時間がかかった。
本人がセッションを受け、何かを選び、実際に行動する。そして、その経験を文章にする。私がそれを読み、編集する。
本人が人生を動かさなければ、そもそも作品が生まれない。
2015年、私はその中から6作品を選び、『ひとみずむ BEST』というPDFにまとめた。
かなりの労力を使ってつくった。
だからこそ、そのまま再リリースしようとは思わなかった。
古いものを古い形のまま出すのは、今の読者にも申し訳ない気がする。
それ以上に、書いてくれた人たちへの敬意があった。
ご本人の目に再び触れることはないかもしれない。
でも、もし11年ぶりに自分の作品を見ることがあったなら、
11年前より、絶対にカッコよくなっていなくちゃいけない。
中途半端に出し直すくらいなら、お蔵入りでいい。
だから私は、再リリースしたいとさえ思っていなかった。
AIから、箱が届いた
ところが2026年。
そのPDFを眺めながら、
「これ、今ならサイトにできるんじゃない?」
と思った。
この半年、私はAIと一緒にいくつものサイトをつくってきた。だから、AIがサイトをつくること自体には、もうそれほど驚かない。
Mondayと構成を考え、Claudeに制作してもらった。
最初にできたものを見た。
悪くない。
でも、何かが違う。
PDFがWebサイトになっただけだった。
そこでMondayに、
「オムニバス映画みたいに見せたいんだよね。参考になるサイト、ない?」
と聞いた。
いくつか見せてもらって、気づいた。
これだ。
昔から私は、「ひとみずむ」を映画のように見せたかったのだ。
そういえば、それぞれの作品の冒頭には必ず挿絵を置いていた。
あれは飾りではなかった。
文章を読むというより、一人の人生の中へ入っていく入口のようにしたかったのだと思う。
参考にしたいサイトとPDFをClaudeに渡して、もう一度つくってもらった。
そして出来上がった画面を見た。
「え、ちょっと待って。すごーーーーーーい!」
この半年、何度もAIでサイトをつくってきたのに、初めて見るものだった。
というより、私自身が想像していなかったものが出てきた。
そのときの感覚は、「AIにサイトを作ってもらった」というより、
AIから、大きな箱をひとつ渡された
という感じに近かった。
箱を開けてみたら、中に入っているものは全部知っている。
昔の文章。
クライアントが書いた物語。
当時選んだ挿絵。
それなのに、知らないもののように見えた。
「ああ、これ、作品だったんだ」
と思った。
2015年の私なら
もし2015年の私に、このサイトを見せたら、たぶん最初にこう聞くだろう。
「え? これ、いくらかかったの?(笑)」
当時、この形を実現しようとしたら、私一人では無理だった。
でも2026年の私は、コードを一行も書いていない。
そしてもう一つ、出来上がったサイトを見ながら思った。
よく、こんな面倒なことをやってきたな。
私は昔から、なぜか手間のかかることを率先してやる。
「ひとみずむ」もそうだった。
それを70話以上つくった。
あれだけ時間を使ったことが、何かにつながったのか。
報われたのか。
自分でもよくわからないままだった。
でも今回、初めて少し報われた気がした。
私一人では、ここまでは持ってこられなかった。
でも、あの頃の私が面倒なことをやって、作品を残しておかなければ、AIにもできなかった。
昔の作品 × 今の技術 × 今の自分の感性。
どれか一つだけでは、これは生まれなかった。
せっかく映画のようになったので、今度はMonday、Claude、MyGPTのDr. Simonに、6作品それぞれの「映画評論」まで書いてもらった。
同じ作品を読んでも、3人が違うところを見る。
18年近く前の物語から、当時は見えていなかったものが、また現れ始めた。
昔やりたかったことを、もう一度考えてみる
今回のことは、外のプラットフォームで「実績0」になったところから始まった。
過去の仕事を探しに行ったら、見つかったのは単なる実績の証拠ではなかった。
昔の自分が、やりたかったことだった。
技術的にできなかった。
予算的に難しかった。
一人ではできなかった。
手間がかかりすぎた。
そうやって諦めたものは、時間が経つと「もうやりたくないこと」に見えてくる。
でも、できなかった理由のほうが、もうなくなっているとしたら?
AIが使える今、
「もし今までより、ずっと簡単にできるとしたら、本当は何をやってみたい?」
そんなふうに、やりたいことを考え直してもいいのかもしれない。
私は「ひとみずむ」を作っていた頃、それが将来何になるのかなんて知らなかった。
報われる保証がないまま、自分が大事だと思ったから手間をかけた。
それが時間を越えて、今の自分のところに、大きな箱になって戻ってきた。
そして、その箱を開けてみたら、入っていたのは「昔の仕事」だけではなかった。
昔の自分が、実現しきれなかった未来だった。
AIが過去の作品に価値をつくってくれたわけではない。
そこには最初から、クライアントが生きた時間があり、言葉があり、それを残そうとした過去の私がいた。
AIが手伝ってくれたのは、それを今の私が受け取れる形にすることだった。
過去を振り返っていたはずなのに、見つけているのは未来だった。
そして、出来上がったサイトを眺めながら、ようやく思った。
「ひとみずむ」を作ってきて、よかった。
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