AIで教材を作る話は、もう珍しくなくなりました。今回実感したのは、その一歩先のことです。
AIと一緒に作ったテキストで、ALL EARSのマンツーマンレッスンをしました。
テーマは「シルキーフィードバック」。相手の話を深く聴くと見えてくる「前提」を、診断のように言い渡さず、相手が自分で確かめられる形にして返す。そういうフィードバックの考え方です。
今回のテキストは、60分のレジュメとは違います。読みながらそのまま進められる、授業のスクリプトです。
事前に私はAIと、何を学ぶ回なのか、どこまで理解できればいいのか、どんな順番なら腑に落ちやすいのかを、かなり共有しました。するとAIが、導入、説明、具体例、問い、ミニケース、考察、まとめまで含めた60分の流れを組んでくれます。
当日、私は「次に何を話そう」と考え続けなくてよくなりました。これが、思っていた以上に大きかったです。
進行を考えなくていいと、生徒が見える
レッスンはテキストを読みながら進みます。途中で生徒が言いました。
「読むとわかるんですけど、質問されると出てこない」
私はテキストを先へ進めず、「じゃあ、どこまではできていますか?」と一緒に確認しました。
すると、相手が「完璧にやらなければ」と思っている、失敗を怖がっている、周囲から認められたいと思っている。そうした相手の前提は、すでにかなり感じ取れていました。
詰まっていたのは、その先です。見えたものを、どういう言葉で相手に返すか。
進行まで頭の中で管理していたら、この「どこで詰まっているか」を、ここまでゆっくり見られなかったと思います。
「あなたは」から「私には」へ
話しているうちに、ポイントが一つ見えてきました。
「あなたは失敗するのが怖いんですね」
こう言うと、相手を定義してしまいます。
「私には、失敗しないことをかなり大事にしているように聞こえました」
これなら聞き手側の仮説です。相手は「そうかもしれません」とも「いや、少し違います」とも言えます。
その違いを話している途中で、生徒が自分で言いました。
「I(アイ)メッセージか」
理解が一段深くなったのがわかりました。私は答えを教えていません。教材を一緒に見ながら、本人の中でつながるのを待っていました。
「今は」と返すだけで、未来が残る
もう一つは、相手を固定しないために「今」を返す、という部分です。
「あなたは人の評価を気にする人ですね」
これを、こう変えます。
「今は、人からどう見られているかをかなり意識しているように聞こえます」
すると生徒が言いました。
「"今は"って聞かれた瞬間、じゃあ未来は変わるかもって思いますね」
本人の口からここまで出てくると、もうこちらが説明することはありません。相手を説明する言葉をやめて、次の選択が残る言葉にする。その意味が、本人の中でつながりました。
AIは整理する。人間は聴く、話す。
今回のレッスンで、分担がはっきりしました。
AIがやること。
- 大量の考えを整理する
- 順番をつくる
- 概念を言語化する
- 60分の道筋を用意する
人間がやること。
- 相手の言葉を聴く
- どこで詰まっているかを見る
- 問いかける、フィードバックする
- 本人が気づきを言葉にするまで待つ
先生の仕事は減っていません。本来やりたかった仕事に集中できるようになりました。
レッスンの最後は、「今日、自分の中で何がわかりましたか?」と本人に返しました。先生がまとめを全部言って終わらせず、本人の言葉で終わる。
答えを全部渡さない。一歩手前で返す。問いを置く。続きを本人に渡す。
ALL EARSでずっと扱ってきたことです。今回のレッスンそのものが、シルキーフィードバックになっていました。
AIに任せたのは授業の構造です。そのぶん、私は人を見ていました。
準備も変わった
昨年は、ALL EARSのレッスンのために、AIも使いながら半日かけてパワポを作っていました。
今年は、テキストをWeb版で作ることを思いつきました。パワポは作らなくてよくなりました。しかもパワポより「教科書」感があって、わかりやすいのです。
教える側の立ち位置も、準備の時間も、大きく変わりました。
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