『アルバート氏の人生』鑑賞。

 「女性が男性として、どんな人生を生きたのだろうか?」と予告編から気になっていました。
主人公のアルバートを演じたグレン・クローズは、30年前に、オフ・ブロードウェイで、アルバートを演じており、この作品をいつかスクリーンで、とずっと夢見ていたものを実現させたとか。グレンが、主演と脚本と製作を担当し、第84回アカデミー賞で主演女優賞にノミネートされた作品です。

 映画が終わってから、一緒に鑑賞していた母が言いました。
「奥深い映画だったわね。悲劇とも言えるし、喜劇とも言える」と。

 あとからさらにじわじわくるので、映画が終わってから5時間経っても、語らいが止まりませんでした。母は、かなり細かい描写まで見逃さずに観ており、私も後から、謎が解明されることも多く、恐れ入りましたと思いました。(笑)





 テーマは、もし、仮面の人生を送り続けたら?です。

 主人公のアルバートは、子供の頃から孤児であり、14歳の頃、強姦され、それから男性として生きて行くことを決め、ホテルのウエイターになるのです。楽しみと言えば、貰ったチップを貯めることくらいで…。

 そんなところに人生の転機が訪れます。ある日、ペンキ塗装をしているヒューバートに、秘密を知られてしまうのです。しかし、ヒューバートも実は、あることを隠して生きていました。そんな自分らしく生きているヒューバートに影響され、アルバートも自分の夢を叶えようと動きだすのです。妻を持ち、自分の店を持つぞ…と。

 夢を持つこと。夢を妄想すること。普通のストーリーとしては、凄く楽しいシーンになるのでしょうが、アルバートに関しては、とても切ないです。
 本当の自分の妄想ではなく、偽りの自分の妄想。自分を偽り、男として生きることを決意した自分が作りだした虚像だからでしょうか…。どんどん人生に逆らっているように感じました。
 しかし、アルバートにとっては、激変なのだと思います。これから生きて行く中で、段々と自分らしさを取り戻せるのではないかと・・・。

 その後、ヒューバートの愛していた人が、チフスで亡くなり、アルバートは、落胆するヒューバートのもとに会いに行き、「一緒に暮らそう」と、助けようとするのですが、逆に「もう自分に正直になれ」と、ビューバートに助言を受けるのです。
 
 ある日、女性の格好をして、解放されるシーンがありました。本当に素敵なシーンでした。そこで、女性に戻るのかな? と思いきや、男としての自分の夢を叶えようと、さらに動きだしてしまうのです。
 
 「自分に正直になれ」と言われて、さらに男として正直になるアルバートの夢を妄想する「瞳」は、映画の中では、とても印象的でした。
 その「瞳」に関して、後から気づいたのですが、自分ではなく、他の人が語っているストーリーを「いいなぁ」と憧れの目で見るような「瞳」だったのではないかと。観ているものに、何かが伝わる「瞳」でした。


 自分の妻を持つという夢を叶えるために、プロポーズをするシーンは、自分の中の何かを埋めようとして、好きになった相手に恋をしている状態なので、全然相手の事が見えていなく、うまく伝わりません。

 不器用すぎます。行動しているのに、お金を貯めているのに、自分の夢を叶えることが全然出来ないのです。そして、切ない結末でした。アルバートを取り巻く人たちも、アルバートの結末から、それぞれの人生に変化が生まれていましたが、そこだけが、救いでした。観客としても、結末から、何かを見出そうと、なんとなく心が動かされる余韻のある映画でした。

 また、どの人物も、秘密やトラウマを知ってしまうと、どこか許しの目で観ている自分がいました。だから、切ないという言葉があうのかもしれません。

 何とも言えない、鑑賞後の感じが続いています。とても丁寧な作りの映画なので、もう一度観たい作品です。さらに、何かを発見しそうな気がしています。



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