息をすべて吐き出したことを確認するかのように、話を最後まで聞く。

「その友達のやりとりは、まるで母親とやり取りをしているのと似ているんですよ」と、クライアントさん。その友達といると、イライラしてしまうことが多いようです。イライラは、自分の何かに気付かせるために起こるものです。相手にイライラしているということは、自分の中にも、過去の未消化のイライラがあるのでしょう。


 その友達は、母親とのやり取りを投影しているのではないか?と仮説を立てて、セッションで話し合って行きました。


 イライラの原因は、友達と話していると、友達はどんどん話が広がって意味不明になって行くのだそうです。また、こちらが意見を言うと「でも」となることが多いそうです。だから、どうせ言っても無駄じゃないと思え、今度は「自分のしたいようにしていいよ、それを尊重するから」と言ったら、向こうは突き放された感じに思い、また反論。堂々巡りのようでした。


 まずは、友達のことを理解することについて考えてみました。
こちらの質問に対して、すぐに核心については、答えず、周辺を話してからようやく質問の答えに戻るタイプの人がいます。または、戻ってこない人もいます。

 質問の核心に触れる前に、自分が納得したい自分の話があるのでしょう。
ブーメランのようです。私は、そういうクライアントさんを、たくさん経験をしましたし、自分もそんなときがあるので、人間ってそういうもんだなぁと思って、ブーメランが空中に飛んでいるときは、相手が頭でまとめたい時間が流れているなぁと思っています。なので、その話は完全に理解しなくてもいいことに気付いたこともありました。大体あらすじは聞いています。で、ようやく核心に入ってきたな、というところで、さらに耳を傾けるようにしています。


 「ブーメラン」だなぁ。と思えば、友達の話を最後まで聞いてあげることができるでしょう。クライアントさんは、意味のわからない段階で口を挟んでしまっていたようでした。話は最後まで聞いてみないとわからないですから。


 それから、母親と話しているようだ、と感じることについても深めていきました。

子供のとき、何かをやろうとするとすぐに「ダメ」と言われることが多かったそうです。自分としては、自分で考えたことに対して、自分で失敗してもかまわないと思っていたようでした。心配してくれるのはわかるけど、決められるのが苦手だったようです。

 何かをやろうとすると、すぐに「ダメ」と言う事実は、理由とかを聞かれていないのではないかと。それは母親が最後まで話を聞いていなかったとも言えるでしょう。クライアントさんに事実を確認してみると、「話を最後まで聞かれていないと感じていました」と言いました。


うわべだけみて「ダメ」と大人が言うシーンを、最近私も目撃しました。

 私の2歳半の姪が、小さな木のごみ箱をもって、「ポップコーンおいしいな!」と言いながら、食べるジェスチャーをして遊んでいました。ポップコーン入れに見えたのでしょう。まさに、それくらいの大きさの小さなゴミ箱です。私は、ゴミ箱といえども、そんなに汚れていなかったし、ま、少し大きくなったらゴミ箱だ、って完全にわかるから、ま、いいかと思って、遊びに付き合っていました。

 リビングに行くと、父がいました。姪がリビングに1歩入った瞬間に、「汚いからダメだよ」と少し怒った口調で言いました。それを見て、父の言ったことは正しいと思いましたが、理由を聞いていない、聞かれていない子供にとっては、「なんで?」が蓄積されていくこともあるのかもしれないと思いました。

 私もコーチングを始めたころは、気をつけていても、最後まで聞かないで意見を言ってしまうことがありました。クライアントに「コーチはジャッジしないのではないですか?堀口さんの言葉で自信をなくしました」とメールを頂いたことがあります。

 それ以来、反省して、最後まで話を聞くに徹するようになりました。すると、理解が深まり、私がジャッジをしなくても、人は、話しながら、自分で自分の考えをまとめていくものであると、相手のことを信じることができるようになりました。


 今では、相手が全部話が終わるまで、まるで呼吸で息をすべて吐き出したことを確認するようかのように、話を最後まで聞くようにしています。20分間、相槌だけで済むときが、本当によくあります。それくらい人は話すのです。


 友達の話を最後まで聞くことと、自分が親から話を最後まで聞かれていなかったことが、リンクしました。自分自身も親と同じことを相手にしていたのかもしれません。
それに気付けば、自分がこれから話を最後まで聞くようになればいいのです。子供の頃の自分も自分で癒すことができ、そのうち母親とのコミュニケーションも良くなっていけるのではないかと思います。


最後まで話をしてもらえれば、相手は自分で気づく。
信じてみましょう。


 今日はこちらの質問はいかがでしょうか?

最後まで話せる環境はありますか?

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