「気持ち」と「感情」についての考察。

 講座の課題は、ある事例、Aさんとの対話をどのように進めて行くか? というものもありました。
 コーチングでも、ある事例があって、「このマネージャーのコーチングを進めて行くにはどうしたらいいですか?」というようなことを考えるクラスもあったと思います。そんなケーススタディー精神対話士バージョンといったところでした。

 コーチングのクラスを受講していた時のケーススタディーは、「力をうまく発揮できていない部下との対話」などが、よくある事例だったと思います。

 今回は、行動をしたいけれど、不安な状態にある方の事例です。事例を簡単にまとめると、「70歳の女性で、3年前に旦那様を亡くされて、娘さんも結婚されて、連絡を取り合っていない状態で、気晴らしに街に出てみたけれど、親子連れや夫婦連れをみると、虚しい気持ちになってしまい、周りに弱音も吐けなくなっている・・・」というような状況の方の対話をどう進めて行くか? というテーマでした。

 じっくりと考えて、どうAさんに寄り添うか? 私なりの考えにまとめました。
まとめてみて、自分の傾聴力の変化を客観視できました。変化とは、ここ2年、自分のネガティブな気持ちに向き合ってきたことで、見えていなかった部分が見えるようになったと感じたことです。
 それは、Aさんの気持ちの奥にある感情に目を向ける視点が養われたことです。やはり講座を受ける前と受けた後では、回答できなかったであろうことが、書けたと思えました。基礎講座だったので、ロープレの実践がなかったのにです。コミュニケーションは、実践がとにかく大事だと思っていたのですが、「考えること」がこんなにも大事であるとは、目からうろこでした。その体験もあって、私も講義スタイルのセミナーをやってみたらいいかもと、背中を押してもらった気がしています。

 コーチングを勉強し始めた頃は、「Aさんはカウンセリング分野」と割り切って、どう寄り添うかも想像できなかったと思います。
 しかし、今は、コーチとしても、クライアントさんの行動をサポートするために、「気持ちの奥にある感情」を想像できる傾聴力は必要だと感じています。

 実際、6年間コーチングをしてきて思うのは、「行動したいけど不安」という状態のクライアントさんが、ほとんどを占めています。言うならば、コーチングとカウンセリングの中間くらいの方が多いと感じています。実は、私もここ2年間、そんな不安とずっと対峙していたのです。この不安を体験してみて、「こういった状況は、誰でも起こりうる」と、普通に思いました。行動している時もあれば、不安な気持ちを持ちながら、ゆっくり行動する日々もあるというだけのことです。

 行動したいけどできない恐怖心に向き合うには、まず、「気持ちの下にある感情」に気付く必要があります。当事者は、なかなか気づくことが難しいようですが、対話を通して段々と発見に至ります。
 実は、その感情が癒されることで、自分らしく進みたいと思えるようになり、行動力が自然とアップし、流れが急によくなっていくというパターがやってくるようです。 
 

 今日のセッションで、上司が自分を正当化するような態度を取ることが多いと感じていて、なかなか上司にものを言うのも躊躇してしまうという話が出てきました。 
 そのクライアントさんとは、2年くらいコーチングでお話を聴いており、だいぶ状態が変わってきたのですが、この上司との関係は、ずっと残っている悩みでした。

 上司を理解しようと、クライアントさんも、ありのままを見る視点で、上司のいいところも色々と発見し、理解しようと努力されてきました。でも、まだ「イライラ」や言いたいことを言えない「我慢」がおさまらないのです。
 言いたいことを我慢すると「咳」が出やすくなるのでしょうか? (最近の私の持論ですが 笑) そのクライアントさんが、百日咳にかかってしまっているようなのです。

 今回は、より注意を払って、お話しを聴いていました。何かを発見できそうな気がしていたのもありました。

 お話しを聞きながら、クライアントさんは、自分が色々な思いをしてきた分、人を観察して、あの人はこう思うのではないかとか? 想像する力がとてもあると感じました。
 なので、その上司にイライラする原因は、上司の態度にイライラしているというよりも、自分の願いや思いに気づけていないところに、イライラの原因があるのかもしれないと思ったのです。

 「自分が大切にしていることをしていない相手を見てがっかりして、イライラしているのかも」とクライアントさんに訊いてみたら、「はー。そうかもしれないです」と返ってきました。

 「今までは、イライラして、言いたいことを言わずに我慢して、まあ、仕方ないかで済ましていたところを、『自分が大切に思っていることがあるんだなぁと』と自分の中にある願いや思いに気付いてあげることのほうが、相手のことは、そんなに気にならなくなるかもしれませんね」とお伝えしました。
 「なるほど」とクライアントさんはおっしゃっていました。

 きっとそうなのだと思います。
相手の対処法を考えて、乗り越えようと努力するよりも、相手から触発されるようにして湧いてきた気持ち。そして、その下にある感情に気付き、癒したり、自分の思いや願いに気づいたりすることが、「自分の答えが見つかる」ことなのではないかと思うのです。
 逆を言うと、そうすれば、相手に自然と配慮できるようになり、コミュニケーション力も自然にアップするのではないかと思うのです。

 「気持ち」と「感情」という言葉を、どうすれば、分けて使えるのだろうか? と2年前くらいから悩んでいたのですが、ようやく、自分なりの分け方を発見しつつあります。このブログを書きながら、次第に深めて行きたいと思っています。

 今日はこちらの質問はいかがでしょうか?

自分が大切に思っていることを見つめていますか?