自分みたいな人間を育成しようと励むと、うまくいかないリーダーシップ。

 チーフの立場から急に主任になり、リーダーシップをどうとっていいかわからない・・・とのことで、90日コーチングに取り組んでいきたい方のオリエンがありました。自分が主任になったとたんにセールスが下がりピンチになっているとのことでした。

 自分がリーダーになったときは、自分のリーダーシップはこれでいいのだろうかと、多くの方が迷うところだと感じています。うまく行かないというのはやはり、何かが不足しているからなのです。リーダーシップの取り方はいろいろあっても、うまくいきやすいセオリーは、普遍的なところに辿りつくのではないかと思っています。

 リーダーたるもの、計画を落とし込んで、指示を出してやってもらわないといけないとか、もっと厳しく言った方がいいなど、初リーダーになった人に、上司から色々とアドバイスが飛んでくるでしょう。そして、ますます混乱していくのです。
 アドバイスはありがたいですが、やはり自分の目でスタッフをよく見て取り組んで行くことが大事だと思います。

 いちスタッフからリーダーの立場になると、景色が変わるのは当然です。自分だけができればいい世界から、皆に動いてもらうにはどうしたらいいか? になっていくのです。自分だけが頑張ればよかったのが、今度は全体をみる意識が必要です。

 セッションの最初のほうで、「スタッフがどうなってくれたらいいのか」とお聞きしてみたら、「自分のようなスタッフがいれば自分も楽になる」とおっしゃっていました。
 
 私もそう思っていたことがありました。1つ言えば、10くらい想像して仕事を遂行する責任感を持っている人間が、沢山いたらいいなぁと。そして、自分みたいなコピーを作ろうと一生懸命になればいいのかと思いました。しかし、今思うと、自分みたいな人間を育成しようとするのは、どうやらあまりいいやり方ではなかったのです。


 数年前のNHKスペシャルで、王監督と長嶋監督の物語をやっていました。
王監督は巨人軍の監督時代、駒田選手を自分みたいなホームランバッターに育てて、点を稼がせる方向で駒田に猛特訓をしたそうなのですが、駒田選手は「王さんのようにはなれません」と言ったそうです。そして、優勝できませんでした。結局、巨人軍の監督をお辞めになりました。

 それからかなり経って、福岡ダイエーの監督に就任しました。
 今度こそはと、選手一人一人を見ていくのですが、ベンチで選手の強化をしなくてはならない部分をノートに書き、それを選手にフィードバックするようになったそうです。
 しかし、それでもまだ優勝できずに、観客からは、監督を辞めろコールが鳴りやまなかったこともありました。
 
 でも、今回は諦めずに、やり方を180度変えて、自分から選手に声をかけて食事に誘ったり、ベンチでは、今度は選手のいいところをノートに書いたりして、フィードバックするようにしたそうです。弱みを強化しようとする方法から、強みを伸ばす方法へと180度変えたら、遂に優勝を果たしたのです。

 王監督が、「監督の仕事は、気づかせ屋」とおっしゃっていました。みんな自分のいいところに気づいていないから、それを気づかせてあげるのが監督の仕事なのだと。

 王監督でさえ、リーダーシップを取るのにそこまで試行錯誤していたのですね。本当にリーダーシップは難しいのだと思います。

 その番組を見て、私も全く同じことをしていたと気づきました。2店舗目の渋谷店に異動してから、自分が店長としてできることは何かと考えたときに、接客をみんなに教えることだと思いつきました。アパレル2年目でしたが、接客だけはできるようになっていたからです。

 そして、接客ノートをスタッフに書いてもらうことにしました。赤ペン先生のように私がフィードバックするシステムです。しかし、1ヵ月も経たないうちに、皆、接客ノートに何も書かなくなりました。やりたくないことをやらせることはしたくないので、私も何も言わずに、辞めることにしたのです。

 しかし、まだまだみんなを巻き込もうと必死でしたので、次に、売上目標を意識させるために個人売り上げをパソコンで打ち込むようにと、習慣づけようとしましたが、それもダメでした。

 もう、何もかもダメだとわかり、逆にそこから、ちゃんと売り場を見られるようになったのだと思います。

 ある日、「みんなの接客は、どうなんだろう」と、ふと観察していたときに気付いたのが、「みんなちゃんと接客ができている」ということでした。
 よく見ないで、勝手な私の思い込みで、皆の接客が悪いからお客様が来ないのだと思っていたのです。

 ということは、自分が集客に力を入れれば、皆の接客力が助けとなって、売り上げがあがるという計算式が成り立ちました。「なんだ、自分がいちばん店長としてできていないのだ」と、初めて気づいたのです。

 そんな話をクライアントさんにしたら、クライアントさんも自分が得意なディスプレーをやらせるときは、ダメだしをしがちで、自分があまり得意でない仕事については、スタッフに頼みはするけれど、一緒になって取り組む姿勢はとれていないということが見えてきました。

 つまり、全体を見られていなくて、自分が注意を払えるところだけに一生懸命になっている状態です。いちいち細かいところを注意していっても、店はよくなりません。
 
 リーダーは、スタッフとどうかかわってやる気とパフォーマンスを引き出すかに注力することでしょう。

 指示よりも、スタッフがやったことに関しての感想を伝えることから始めてみようとやることが明確になりました。

 使われる立場から使う立場へ。それだけでも180度逆転です。相手の思いに立つことを学べ、人間としてもかなり成長できる機会なのではないかと、実体験から感じています。


 今日はこちらの質問はいかがでしょうか?

思い込まないで、ちゃんと見ていますか?



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