共感とは、相手の考え方を理解すること。

 接客の苦手意識をなくしたいとのことで、セッションがありました。20代前半の女性でした。最近、大学生のセッションもしているので、これから若い方が増えそうな予感がしています。

 ずっとメンズの販売をしていたそうなのですが、レディースに移り、急に難しくなってしまったそうなのです。
 女性が苦手と言うよりも、買い物に来る女性というカテゴリーが、まるで難しいもののようになっていました。自分も女性ですが、どうやってつながっていけばいいか見当がつかないそうなのです。もともと、メンズの販売を希望したのも、女性は苦手だからと言っていました。しかし、このたび新規出店のため、レディースへ配属されたとのことでした。

 クライアントさんの悩みが5,6個あって、1つ1つ丁寧にみていきました。
どれもこれも、接客と言うよりも、「相手を理解する」ことについて考える内容でした。これまでも、クライアントさんと何度も考えてきましたし、私も抜けるまでに、相当かかった分野です。コーチの仕事についたのも、自分の課題をクリアする一環だったのかと思うほどです。

 さて、今回のセッションの中で、印象に残ったのが、「共感」について考えたことです。
 クライアントさんは、上司からもアドバイスをもらおうと、色々と質問をしたそうです。その時に、「相手に共感することが大事」と教わり、早速共感をする接客を試みたようなのですが、難しさを感じているようでした。

もう一つ、「共感について、どうお考えですか?」と、聞いてみてもよかったですね。定義が違うことは、意外に多いです。

 ということで、共感について、どう考えているのか? 聞いてみることから始めました。

「共感ってどういうものだと思っていますか?」
「相手が言ったことに対して、私もそう思います、と言うことだと思います」
「なるほど。それは、共感というよりも、同意というものでしょう」

 クライアントさんは、相手との共通点を見出して、「私もそう思う」と答える事だと思っていたようでした。そうなると、合わないと感じる相手には、「私もそう思いますよ」といいながら、ひそかに難を逃れていくことになりそうで、ずっと自分に嘘をつくのも辛くなりますよね。

 「相手から、私もそう思うよと言われたら、どう思う?」と聞いてみたら、「本当に分かっているの? と思ってしまうかもしれません」と笑って答えました。

 友達は、自分と似たタイプが多く、同意ができるから、苦手とか思ったことがなかったようなのです。逆に言うと、同意できない人と交わらないようにしているだけとも言えるでしょう。それでは、いろいろな出会いを受け容れられなくて、小さな世界だけで終わってしまいます。

 では、共感とは、どんな意味で捉えるといいでしょうか。
「あなたはそう考えるのですね」というのが共感です。あなたの考えを理解しましたと示すことです。だから、自分と同じ所を探そうとしなくても、相手に「なるほど、そう考えるのですね」と言うことで、相手は理解してもらったと感じるのです。
 実際に、クライアントさんに向かって、「なるほど、そう考えるのですね」と言ってみたら、「ああ、確かに!」と共感の言葉を体感できたご様子でした。


 私も、つい半年前まで、相手と一緒になることに努めて、自分の経験の中から、共通項を見出して…というプロセスで、共感を作ろうとしていたこともありました。だけれども、やはり、自分と全然違うようなタイプの方とのセッションでは、どうもそれが難しく感じていました。たまたま、共感しやすいクライアントさんが多かったのかもしれません。ただ、それでは、自分の幅は、やはり広がっていかないです。

 今年の春夏に受講していたメンタルケア講座で、鬱とか終末期の方とか、自殺願望があるケース、ひきこもりなど、自分の未体験の方々への共感について、考える機会がありました。そのおかげで、本当の意味で共感を理解しました。

 私のセッションでは、行動状態なのだけれど、まだ不安要素の強い方もいらっしゃいます。
昔は、絶対に無理と感じてしまう分野でした。しかし、共感の言葉をかけられるようになってから、自分が身構えることがなくなりました。共感を伝えれば、相手がもっと話すので、それに任せていけば、相手が自ら元気を取り戻し、行動が進んでいくことを信じられるようになったのです。これが寄り添う力かと、ようやく理解できました。共感は、相手の力を引き出します。

 そのほかの悩みも、自分が何かすることに一生懸命すぎて、相手を見落としがちな部分が散見されました。「自分だったらそんな時どう感じる?」と質問してみると、解決する部分も結構ありました。普段の思考パターンも、相手の立場の方から想像する視点を忘れがちになっているようでした。

 たいてい悩んでいるときは、自分の視点でいっぱいになっている場合が多いので、相手の立場だったらどうだろう? と、視点を変える習慣を持つと、自分の箱から抜け出す一歩を踏み出せると思います。十人十色ですから、違うのは当たり前ですが、想像してみることが大事なのです。

 セッションが終わって感想をお聞きしたら、「とても楽になりました。堀口さんと話しているだけで、パワーをもらえました」とおっしゃっていました。これは実は、私がパワーを与えたわけではなく、「できそうだ!」とか「やってみたい!」と思うことが見つかると、自然と自分の内側からパワーが湧いてくるほうの感覚なのだと思います。


 今日はこちらの質問はいかがでしょうか?

共感について何か気づいたことはありましたか?