人々があなたの変化に気づくとき、それは本当に変わった証です。そして、変化を自覚すると、さらなる変化がやってきます。
◎前回のあらすじ
ブログを始めて2ヶ月が経ち、アパレル業界の最新情報を求めて「ファッショントレンドセミナー」に参加。パリ、ミラノ、ニューヨーク、ロンドンのコレクションについて学び、トレンドの理解が深まるとともに、販売員としてのスキルアップに意欲を燃やす。また、本田健さんのセミナーで「メンターに出会う」「決断する」「行動する」の重要性を学び、自分の成長と未来に希望を抱く。学んだ知識を実践し、店舗運営に役立てることで、自分とスタッフの未来を見据えた新たな働き方を模索することを決意する。
5.4 女性起業家のパイオニア
日経MJ新聞主催の「女性力」をテーマとしたセミナーに参加してきました。講師は女性起業家支援をしているTさん、わずか31歳で、その経歴は驚くべきものでした。彼女は1年ごとに転職を繰り返し、3社で経験を積んだ後、26歳で起業を果たしました。まさに当時の女性起業家のパイオニアでした。
Tさんの話を聞いていると、その戦略的思考と鋭い洞察力に圧倒されました。彼女のアイデアと作戦は次々と斬新で、私の心は躍りました。自らを「成長マニア」と称するKさんは、常に自己成長の機会を探り、それを即行動に移す姿勢がとても印象的でした。
彼女は「女性は起業しやすい」と語り、その理由を「女性は自分のニーズを直接ビジネスに反映しやすいから」と説明しました。起業の鍵は、自分にしかできない独自の強みを見つけ、それを突き詰め、社会に必要不可欠な存在となることだと学びました。
こんな風に成長し続ける人物に出会うと、私も奮い立たされずにはいられません。もし私が起業するとしたら、どんな会社を作るのだろう? 今、渋谷店で結果を出そうと努力しているこの経験を、いつか成功体験として語れる日が来るといいな。セミナーを後にする頃には、私の中にも新たな意欲が湧き上がっていました。
第6章 想定外の未来への序章
6.1 クリスマスの奇跡
2004年12月、街の明かりがクリスマスイルミネーションに染まる頃、ショッピングビルで、クリスマスツリーコンテストが行われました。ツリーは支給されるけど、飾り付けは自由。デザインセンスのあるスタッフにアイデアスケッチをお願いしました。
休日、私は渋谷の街で材料を探し回りました。白いツリーに、大きな赤いリボンと、オーナメントが吊るされ、ゴージャスなツリーが完成しました! 周りの店舗からも好評で、もしかしたら入賞できるかもしれないと思い始めました。
年末、ファッションビル内のホテルで従業員親睦パーティーが開かれました。緊張と期待が入り混じる中、結果発表の時が来ます。なんと、60店舗中の3位! 賞金3万円に加え、抽選会では、「映画チケット」「ディズニーランドペアチケット」「電動歯ブラシ」を我が渋谷店スタッフは引き当てました。引きが強すぎる人が多い!
興奮冷めやらぬ中、ふと思いました。
「たかがクリスマスツリー」と思うか、「されどクリスマスツリー」と思うか。その意識の差が結果を分けたのかもしれません。お店の士気を高める絶好の機会となり、実りある経験となりました。クリスマスツリーの光は、私たちの未来への希望も照らしているようでした。
6.2 渋谷駅から見える垂れ幕
冬のセールディスプレーとして、夏の「SALE」タンクトップからの発展バージョン、大胆なディスプレーを思いつきました。これも、本気でやるかやらないかで、未来が変わる。私の脳内には完成図が鮮明に浮かび、思わずニヤリ。渋谷駅からも見えるよう、お店の入口に大きな垂れ幕を掲げるアイデアを思いついてしまったのです。
5メートルの白い布を購入し、夏に妹に教わった方法で赤いペンキを使って「SALE」の文字を何行も描くものです。この作業は大がかりであるし、時間を要するため、スタッフにも手伝ってもらわねばなりませんでした。不器用を理由に断るスタッフもいましたが、意外な才能を発見することもありました。
おかげで、脳内イメージ通りの垂れ幕が完成。ほっとした瞬間、はっとしました。「これ、どうやって吊るすの?」と。思い付きを実行し、後から始末に追われることは、私にはよくあることです。
思案の末、ビルのマネジメントオフィスに駆け込みました。「すみません、天井まで届くはしごをお借りできますか?」とお願いすると、ビルのスタッフが「手伝いましょう」と申し出てくれました。
閉店後、とてつもなく背の高い脚立が店に運ばれ、これはひとりでは無理だ! と笑いがこみ上げてきました。本当に長いはしごで、命がけの作業と言っても過言ではありません。ハラハラしながら下ではしごを支えていました。ついに垂れ幕の設置が完了。店内が一気にSALEムードに包まれました。
この出来事を機に、ビルの管理会社との関係もぐっと近くなり、「これからは協力をお願いしやすくなりそうだ」とニヤリ。私たちの店は、ビルの玄関口。お店の集客が増えれば、それはビル全体の活性化にもつながるのです。きっと協力してくれるはずです。
ふと1年前の自分を思い出しました。「自分の給与を上げるには?」とばかり考えていたあの頃。今の自分は、もっと大きな視点で物事を見られるようになっていました。垂れ幕を見上げながら、静かに成長を実感した2004年の大晦日でした。
6.3 止まらないお客様
2005年1月2日。開店と同時に、お客様が一斉に押し寄せてきます。昨年を100名も上回る来店数に、スタッフ全員が目を見開きました。2日目も勢いは衰えません。むしろ加速していきます。3日目には、さらに客数が増加。店内はまるでお祭りのような活気に満ちていました。4日目、世間の仕事始めの夜。フィッティングルームは常に満員。「試着をご希望の方は、こちらの用紙にお名前をご記入ください!」とスタッフが叫びます。そんな騒然とした中、ある人物が店に足を踏み入れました。109のカリスマ店員ブームを作った女性経営者です。
以前、私が渋谷店に異動したばかりの頃、彼女から「空調の音がうるさいね」と指摘を受けたことを思い出します。緊張が走ります。しかし今回、彼女は私の履いている新作ワイドパンツを指さして、「それ可愛いね!」と気さくに声をかけてくださり、安堵しました。
店内には購買意欲をそそるアップテンポの音楽が流れ、スタッフたちは高揚感に包まれています。私はエナジードリンクを差し入れ、疲れを吹き飛ばし、全員が笑顔で接客に没頭しています。SALEの熱気と音楽が一体となり、店全体が一つのリズムを刻んでいるようです。
ふと気づくと、主要なスタッフはほぼ同じなのに、1年前とは別人のように成長しています。自信に満ちた表情、テキパキとした動き、お客様との自然な会話。この4日間、私たちの店は間違いなく渋谷で最も熱いアパレルショップになっていました。成長の証を目の当たりにし、胸が熱くなります。これからどこまで成長できるのか、その可能性に心が躍りました。神戸での店長会議では、渋谷店に商品を回すように、自信をもってアピールできました。
ブログでは、お客様に良いタイミングで来ていただけるように、毎日の売れ筋情報と新作のお知らせ、人気商品の在庫状況などを伝えていました。そんな中、2005年1月4日のブログから、ブログ記事の最後に「人気ブログランキングに参加しています」のバナーを掲載するようになりました。これがとんでもない未来につながることは、まだ知る由もありません。
■編集後記
今回の挿し絵は、実際の写真をアプリで加工したものを使用しています! 20年前のブログを残しておいてよかったです。
はじめて「女性起業家」という呼び方に触れたころです。渋谷店にいらっしゃった109の有名ブランドのMさんは、1回目は空調の苦情について話してきましたが、2回目は私の履いているパンツを褒めてくれました。この現象について英会話の先生が、「私の在り方の変化を投影している」と言ったことが腑に落ちて、20年経った今頃、私の次元が変わった瞬間を掴みました。(笑)
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