★Grit & Glamor Epi.18:ユ・ガット・メンター メール

人生には『やり方』がないこともある。ただ運命がその魔法をかけるのを待つしかない。

◎前回のあらすじ

7月1日のセール開始を前に、予想外の出来事が起こりました。数えるほどしか渋谷店を訪れない社長が突然現れたのです。かつて彼から「学芸会みたいだ」と厳しい言葉を受けたウィンドウディスプレイの記憶が蘇り、胸が締めつけられました。その日、社長は渋谷109店へ私を連れて行き、情熱的に質問を重ねました。当時は不安と混乱の中にいましたが、その日の温かくも厳しい指導が、現在の私の成功につながっていると実感し、感謝の気持ちが湧き上がりました。翌日のディナーで成功者たちと会うことを社長に告げると、「自己紹介と相手の弱点を話せ」とアドバイスをいただきました。この教えが心に刻まれ、翌日、私は彼らとの会話で共通点を見つけ、シンクロニシティの不思議を感じました。その場で提案されたコラボの夢を実現するため、行動を決意しましたが、現実は私の期待を超えて動き始めていました。

7.4 人生初セミナー

私のブログが人気ブログランキング1位になったことをきっかけに、Dさんからビジネスセミナーに参加した人に向けて、フォローアップの無料セミナーのオファーがありました。規模は小さいですが、セミナー講師になるのです。教育実習の経験はありましたが、自分のノウハウを体系立てて話すのは初めてです。不安が押し寄せる中、そのビジネスセミナーで唯一名刺交換をお願いした方から、セミナー前日に連絡がありました。

その方は、ブラックのレザースーツに身を包み、独特な成功者オーラを纏っていたI氏。大阪在住のその方が、私のセミナーに参加してくださるということで、前日に東京入りしていたのです。

「明日セミナーでしょ。効果的な伝え方について、アドバイスをするよ」と。その言葉に、心強さを感じました。品川のビジネスマンで溢れかえるスターバックスで、セミナーの心得を伝授してくださったのです。

セミナー当日、Dさんの事務所に集まった参加者の顔を見ると、緊張が走りました。しかし、アットホームな雰囲気に助けられ、気がつけば50分間、スムーズに話すことができていました。セミナーに参加する側から、する側へ。自分の成長に驚きを感じずにはいられませんでした。

そんな中、気になっていたのは金井さんからのメールです。返信が来ないことに少し不安を感じながらも、私は金井さんの本を読み、学んだことをブログに書いたりしていました。ブログの人気が上がる一方で、思わぬ出来事も経験しました。今で言う「炎上」です。当時はまだその言葉すら存在しない時代でしたが、その経験から多くを学びました。

そして、金井さんにお礼のメールを出して1週間後、待ちに待った返信が届いたのです。
「先日はありがとうございました」。その言葉に、私の心は躍りました。またそのお返事として、初めてのカットの時に興味を持った「カラーアナリシス」についてさらに詳しく尋ねてみると、金井さんは快くおすすめの本を教えてくださいました。カリスマ美容師である金井さんが、こんなにも親身になって答えてくださることに、深い感動を覚えました。そして、私は少し冒険してみることにしました。「最近シンクロニシティがよく起こるんです」。この一言を書き添えたのは、金井さんが占星術も勉強されていたと聞いていたからです。そして、メールの最後に、私は心からの言葉を綴りました。「金井さんを本当に尊敬しています。これからも色々と教えてください! よろしくお願いします」。送信ボタンを押した瞬間、この言葉が私の人生に大きな変化をもたらすことになるとは、まだ知る由もありませんでした。

7.5 夏のセール準備

6月末、店内は熱気に包まれていました。7月1日からのセール開始に向けて、準備は最終段階を迎えていたのです。「よし、5000万円を超えるぞ!」と心の中で自分を鼓舞します。トルソーにSALEのタンクトップを着せると、店内の雰囲気が一気にセールモードに変わりました。

前回同様、ショッピングモールの方に手伝っていただき、梯子で手作りの垂れ幕を吊るしていきます。さらに、Dさんのセミナーで出会った看板屋のKさんに作っていただいた巨大なSALEの垂れ幕は、赤と白、SALEの文字が上下逆さまになっていたり、特別仕様です。これを見たお客様は、きっと足を止めてくださるはず。

そして、SALEのためのウィンドウディスプレイを作成するいつものお花屋さんが到着しました。花瓶に生けられた夏の高原をイメージさせる木々たちが、店内に新鮮な空気を吹き込みます。

さらに今回の目玉は、DJ降臨です! 一年中サーファー風の女性、銀座店のスタッフNさんが、渋谷店にやって来たのです。これまで全く使われていなかったDJブースに、Nさんが颯爽と立ちます。音楽が流れ始めると、店内の空気が一変しました。 

単に音楽を流しているのとは違います。Nさんは場の雰囲気を読み取り、次々と曲を選曲していきます。その場にぴったりの音楽が流れると、お客様の表情も明るくなり、店内のエネルギーが高まっていくのを肌で感じました。

セール初日が終わり、売上を確認した時、私は思わず声を上げそうになりました。お正月の売上よりもさらに上回っていたのです。私の胸は感謝の気持ちで一杯になりました。この成功は、決して私一人の力ではありません。多くの方々の協力があってこそ、この結果を手にすることができたのです。

ふと、過去の自分を思い出しました。ひとりで頑張ろうとしていた頃の私には、今の現実は想像すらできなかったでしょう。今、目の前に広がる世界は、まるで夢のようです。会社に勤めているからこそ得られる恩恵があります。経費は会社が負担してくれる。私は自分のビジョンを追求するだけでいい。そう考えると、胸が熱くなりました。

「サラリーマンって、実はすごいチャンスなんだ」。その思いが、突然心に浮かびました。個人でビジネスをするよりも、もっと大きなお金の流れを生み出すことができる。それなのに、給与ももらえる。この恵まれた環境に、今まで気づかなかったことが不思議に思えました。この環境を最大限に生かしてきたのだと実感します。そして、それが今の現実を作り出したのだと。「ありがとう」。スタッフに、会社に、協力してくれた人々に、そして自分自身に。

7.6 メンター現る

ある朝、私はいつものようにパソコンの電源を入れました。そして、目に飛び込んできたのは金井さんからのメールでした。心臓が高鳴るのを感じながら、私は急いでメールを開きました。

 
「シンクロはいつでも起こります。夜寝る前に、この質問をしてください。『明日、奇跡が起きるとしたら、どんな奇跡が起きてほしいですか?』」

短い文章でしたが、その言葉は私の心に電撃のように走りました。コーチングを勉強していた私にとって、こんなにも魅力的で夢のような質問は初めてでした。

そして、奇跡は本当に起きたのです。2005年7月6日、金井さんから一通のメールが届きました。

「ほりぐちさんのワクワクすることはなんですか?」
この簡潔な一文が、私の人生を大きく変える始まりでした。まるで運命の扉が開いたかのように、金井さんとの毎日のメールのやり取りが始まったのです。私にメンターが現れたのです!

興奮で手が震えるのを感じながら、私は勤務先のパソコンにもメールの転送設定をしました。この設定は、金井さんからのメッセージをリアルタイムで読むために不可欠だったのです。

スタッフから、「金井さんからメールが来ていますよ!」と声がかかります。日々のリズムが自然と出来上がっていきました。金井さんは午前中にメールを送り、私はその日の締めくくりとして夜に返信する。この習慣は、私の変化を加速させました。朝に問いかけられ、夜に答えを出す。金井さんは多忙な中でも、毎日欠かさず問いかけてくださいました。その姿勢に、私は深い感銘を受けました。

毎晩、問い掛けに答え、実行した結果報告を返信メールを書き終えるたびに、私は小さな達成感を味わいました。そして、次の朝を心待ちにする自分がいました。この繰り返しが、私の人生に新たな可能性をもたらしていったのです。

この頃、ビジネスセミナーで出会った上下レザースーツだったIさんが、私に向かって言ったのです。「君はネット系が得意だから、商品づくりが得意な人と組んで、何かネットでものを売ってみたら?」と。この時代は、ネット通販と言えばヤフオクくらいでした。しかし、その提案は私の心に火をつけました。そして、突然のひらめきが訪れました。「そうだ、バリ島に行こう!」

金井さんにも、バリ島のオススメをいろいろと伺いました。また、乾季がよさそうです。7月後半がよいかも…。私は震える手で手帳を開き、日程を確認しました。ちょうど、一緒に働いていた同僚が転職するタイミングで、彼女は商品づくりに関わっていました。彼女は、バイングとメーカーとのやり取りの経験もあります。夏休みを使って、その彼女と一緒に「買い付け」へ行ってみることにしたのです。

バリ島行きの航空券を予約したあと、旅行の数日前に、以前の美容師さんの彼氏がバリ島に現地人の知り合いがいるということで、紹介もしてくれました。なんと、車で送迎をしてくれそうなのです。またもシンクロニシティーに恵まれました。流れに身を任せているだけで、自分に必要なことがどんどんやってきたのです。きっと5000万円も達成できそうな流れでしたので、安心してバリ島の予約をしました。
 

■ 編集後記

ついに、2008年にリリースした『かないずむ』とここで合流しました。メンターの金井さんにお会いするまでに本当にいろいろなことがありました。なので、メンターと出逢うにはどうしたらいいですか? と、かつてよく質問を頂いていたのですが、こういうことだったのです。