ヨガウェアを着る。それだけで、障害物はもう取り除かれているかもしれない。
ドーパミンと幸せを求めて:日常の中の小さな冒険
ここまで、ドーパミン・オキシトシン・コルチゾールという3つの脳内ホルモンに注目しながら、「なぜ私たちはある行動に惹かれ、またある行動を避けたくなるのか?」という心と体のしくみを見つめてきました。
考えを形にするクリエイティブな作業はドーパミンを刺激し、人と深くつながったときにはオキシトシン(愛着ホルモン)が分泌されます。反対に、「やらなきゃ」というプレッシャーや疲労が続くと、コルチゾール(ストレスホルモン)がじわりと出てきてしまう。
こうした繊細な内面のリズムを、どう日常の中で上手に扱っていけるか──。 この章では、私自身の1週間の過ごし方を振り返りながら、「ストレスをためずに継続していく」ためのヒントをまとめてみました。
自分の一週間を見直してみると
改めて自分の1週間を振り返ってみて、そのバランスに気づけたことは大きな収穫でした。
特に、毎日の瞑想やジム、週2回のヨガといった“整える系”の習慣が、知らないうちに行動の土台をしっかり支えてくれていたのです。コルチゾールを穏やかに下げてくれるこうした習慣があるからこそ、気合を入れなくても自然とリズムが整い、行動も続いていたんですね。
ちなみに、30代前半のころの私は「ジムに行く」と手帳にしっかり書いていました。でも今はもう、書かなくても勝手に行っている。
だから、ここで過去の自分に言いたいのです。
「“ジムに行く”とか“ヨガをする”は、もう手帳に書かなくていいんです!」
“自分の土台”になると、習慣はもはや予定ではなく「在るもの」になるのだと感じています。だからこそ、手帳にはこれからの“新しい冒険”を書いてあげてほしいと思います。
ドーパミンと「可能性」について
ChatGPTに「いろいろとやりたいことをすることは、ドーパミンが出やすいですか?」と尋ねたことがあります。返ってきたのは「ドーパミンが出る可能性があります」という答えでした。
この“可能性”という表現に少し違和感を覚えた私は、「なぜ言い切らないのか?」とさらに聞いてみました。すると、行動に対する“主観的な意味づけ”や“感情的な文脈”がドーパミンの分泌に大きく関わっているという答えが返ってきました。
つまり、同じ行動でも、「自分で選んでやっている」と感じるときはドーパミンが出やすく、「やらなければならない」と感じるときは、コルチゾールが優位になり、ドーパミンの回路が働きにくくなってしまうのです。
このことは心理学や神経科学の領域でも示されていて、「期待感」「達成感」「好奇心」といったポジティブな感情と結びついた行動では、ドーパミンが自然に分泌されやすくなります(Berridge & Robinson, 1998)。
やりたいことを「やらなくちゃいけない」という感覚で取り組むと、それは無意識のうちに“内なるノルマ”となり、コンプレックスや疲労感につながってしまいます。
でも、「これができたら自信が持てそう」「ちょっと試してみたい」と感じる小さなモチベーションの芽があると、ドーパミンはやさしく背中を押してくれるのです。
意図が未来をつくる:0.03秒の世界
ところで、「行動は0.03秒遅れて現れる」という理論をご存知でしょうか?
なぜ信号が青になっても、すぐに歩き出さないのだろう──そう思っていた私に、ある日、ディスペンザ研究会の準備中にコラボしていた知人がこう教えてくれたのです。
「人間の行動は、0.03秒後に起こっているんだよ」
つまり、脳が「動け」と指令を出してから、筋肉が実際に反応するまでには微細なラグがあるということ。これは、リベット実験(1983年)などでも示されている神経科学的な事実です。
この話を聞いたとき、私ははっとしました。
「やっている」という今は、すでに“ちょっと前の私”が決めたことの結果。 ということは、「やろう」と思ったその瞬間こそが、本当の出発点なのです。
行動という現象は、すでに“過去の私”の延長線上にある。 ならば、今この瞬間にどんな意図を持っているか?が未来をつくる鍵になるのではないか。
私は今、行動そのものよりも、「どんな意図で今を生き �ているか」を大切にしています。 未来は行動でつくられるのではなく、意図で起動されている──そんな感覚があるのです。
だからこそ、「好きなことは何だろう」と頭で考えすぎるよりも、まずは身体を動かしてみること。そうした一つひとつの行動が、意図のエネルギーとつながっていくのを感じます。 その積み重ねの中で、ふとした瞬間に「これがやりたい」が浮かび上がってくることがあるのです。
コルチゾール対策のヒント
コルチゾール(ストレスホルモン)は、「やらなきゃ」という義務感が続くと、じわじわと分泌されて、行動のモチベーションを奪ってしまいます。
そこで、“やる気”に頼らず自然に動けるように、日々の生活に小さな仕組みを取り入れることが大切です。 以下は、私が実際に試して効果を感じている6つの工夫です。
1.手間を減らす
服装から行動スイッチを入れるヨガウェアで1日過ごすだけで、「着替えるの面倒」というブロックが消えます。行動のハードルが下がると、脳は「やらされ感」を感じにくくなり、自然と動きやすくなります。
2.お風呂も立派な“運動”の日
「今日はジム行けなかった…」ではなく、「お風呂に入っただけでもOK」と思える余白があると、コルチゾールは増えにくくなります。自分にやさしくすることも、大切な対策です。
3.お試し期間で“未来の義務”を消す
「1週間だけ」「3日だけ」──そんな小さな区切りを設けることで、「ずっと続けなきゃ」のプレッシャーから自由になれます。継続できたらラッキー、合わなければ卒業。それでいいんです。
4.ジャッジしない:時間に意味をつけない
たとえば、ブログを2000文字書くという“修行”をしていた時、5時間かかることもよくありました。でも「5時間もかかった」と思うと、それだけで自分を責めてしまいますよね。だから私は、「5時間かかった」とただの事実として見るようにしました。気づけば、ZONEに入っていたのかもしれません。時間を評価の軸にしない。これも、ストレスをためない技術のひとつです。
5.「初心者卒業宣言」で自己効力感を育てる
いつまでも「初心者です」と言い続けていると、行動が“仮の自分”扱いになってしまいます。小さな節目で「私はもうやっている人」と意識を切り替えてみましょう。
6.準備に時間をかけすぎない
新しいことを始めるとき、「まずは道具を揃えてから…」と考えると、スタートがどんどん遅れてしまいます。まずは“やってみる”ことにOKを出す。それだけで、脳の重さは軽くなります。
こうした習慣が“ひとりの力”だけで続いているわけではありません。 英会話の先生、ヨガの先生──相手がいてくれるからこそ、私は続けてこられたのです。
行動を支えてくれる“存在の力”。それは私にとって、大きなエンパワーメントの源でした。
次回は、「習慣を支える力」について、私がどのように他者と共創しているか?について具体例をお話ししたいと思います。
編集後記|Quiet Creation
ヨガウェアを着るだけで行動のスイッチが入る。
「初心者」から一歩抜けるだけで、やることが“本当の自分”になる。
──そんな小さな変化の積み重ねが、意外と一番未来を変えていくのかもしれません。
🖊 英語版
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