先週の「ALL EARS 対話編」第11回では、フィードバックの本質について深く探究しました。そこには、私たちの対話観を変える重要な気づきがありました。
フィードバックの多様性を理解する
「フィードバック」という言葉は、日常的に使われながら、その意味するところは実に多様です。ネガティブフィードバック、気づきを促すフィードバック、改善を求めるフィードバック──いずれも重要な役割を持っています。
しかし、今回のレッスンで焦点を当てたのは、それらとは異なる種類のフィードバックでした。相手の価値観や在り方を認め、その人のエネルギーを高めるようなフィードバック。相手の心を温かくするフィードバックとは何か。この問いを、参加者の皆さんと共に探究していきました。
30年の時を超えて届く言葉の力
レッスンの冒頭で、参加者の皆さんにこう問いかけました。
「あなたの心に残っているフィードバックは、何ですか?」
ある参加者の方が、印象的な体験を共有してくださいました。30年前に上司から受けたフィードバックが、これまでの人生で「学び続ける」原動力になっていたことに、今になって気づいたというのです。その瞬間、深い感謝の気持ちが湧き上がったと言います。
言葉は、時に30年という時を超えて、一人の人生を支え続けることがある。そのことを、改めて実感する瞬間でした。
私たちは、ほとんど記憶していない
参加者の皆さんに記憶に残るフィードバックを思い出していただいたところ、興味深い事実が浮かび上がりました。実は、印象に残っているフィードバックは、ほとんどないのです。自分が誰かに伝えたフィードバックについても、同様でした。
日常において、フィードバックはそれほど記憶に残らないもの。その現実に、参加者全員で気づいた瞬間でした。
だからこそ、意味があります。これからは、相手の心を温かくするようなフィードバックを届けられるようになってほしい。そう考え、「こんな時、どう返しますか?」という実践的なワークを行いました。
共感の先にある言葉を探して
まず、ある言葉を聞いて、今の自分ならどう応答するか。直感的に出てくる言葉を答えていただきました。
すると──
「大変だったね」
「それは辛いよね」
共感の言葉は、自然と口をついて出てきます。しかし、それ以上の言葉が見つからない。参加者の皆さんも、苦笑いされていました。
ただし、共感の言葉がすぐに出てくること自体は、素晴らしい変化です。それは「共感的理解」の力が育っている証拠だからです。
今、学ぶべきは、その先にある言葉。共感を超えて、相手の存在そのものを映し出す言葉です。
「真実を返す」技術の習得
その言葉を、どのように紡ぎ出すのか。
私自身も長年試行錯誤を重ねてきた「真実を返すフィードバック」。どのような視点で言葉を選ぶのか。何に着目すればよいのか。
その技術をお伝えすると、参加者の皆さんの中に、できるようになってきた兆しが見え始めました。
言葉を選ぶという行為
このように意識的に言葉を選んで相手に伝えるという経験は、多くの方にとって初めてのことかもしれません。通常、私たちは「反応」として言葉を返しています。考えるよりも先に、自動的に言葉が出てくる。
しかし、対話を専門とする仕事では、言葉を選んで返すことが不可欠です。そうでなければ、相手の心に本当に届く言葉は生まれないからです。
今回、仕事を通じて培ってきた知恵を皆さんと共有できたこと。そして、優しい心を持って対話できる人が増えていくことに、深い喜びを感じたレッスンでした。
折り返し地点での深化
Lesson 11──対話編レッスンの、ちょうど折り返し地点に到達しました。このタイミングで、フィードバックの技術へと進むことができたのは、これまでの学びが着実に積み重なってきた証です。
共感から、真実へ。
反応から、選択へ。
対話の質が、また一段階深まっていくのを感じています。
相手の心を温かくする言葉を届けられる人が、一人ずつ増えていく。それが、どのような未来を創造するのか──期待と共に、これからの展開を楽しみにしています。
ALL EARS 対話編も深い旅になっていますので、今後も開催できたらと考えています。
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