ひらめき、アイデアが浮かぶためにすることについて。

 「バタバタになっている。計画を立てられるようになりたい」がテーマでした。店舗でリーダーをされている女性のクライアントさんです。上司が変わったとたんに、提出物が増えて、月間計画表、週間計画表など作らなくてはいけなくなり、バタバタになっているとのことでした。火曜日なのに、まだ今週の計画もできていない…という状況で、日々、思いつきの行動になっていて、スタッフたちも困ってしまうこともあるそうです。スタッフたちよりも、自分をどうにかしないと…と、試行錯誤の真っ最中といった感じです。

 私も、店舗が仕事場で、マクドナルド、アパレルと経験してきましたが、店舗業務と言うのは、自らオペレーションに入ることもあるし、事務所でのパソコン業務もあるしで、2つ役割があります。
 お店に入り浸りすぎても、事務所でのマネジメントの仕事は捗らないし、逆に、お店に入らな過ぎても、スタッフたちからしたら、「働かない店長」とレッテルを貼られてしまうこともあります。全体のバランスを保つのに、ちょっとさじ加減がいるのです。

 まずは、事務所仕事と店舗仕事と、どんな風にバランスをとっていきたいのか? 決めていくことにしました。

 私が、アシスタントマネージャーの仕事をしている時代、様々な店長を見てきました。昼のピークだけお店に入る店長。朝と昼、入る店長。お店の方を優先する店長といました。
 私が、やりやすいなと感じたのは、朝と昼だけ入る店長のときでした。また、お店も一番クオリティー高く運営できていました。一緒に働く方としては、忙しい時間とか、必要な時間に入ってくれていればと思うものです。
 私が、アパレル店長のときは、100%お店に入っていました。スタッフも、私の仕事をフォローしてくれていたのもあると思いますし、会社の方針によるのかもしれませんが。

 セッション中、色々やりとりするなかで、クライアントさんは、「忙しい時に入れればいい。そのほかは、計画を立てる時間にする」と、自分のバランスが決まり、ちょっとホッとしたようでした。

 もう一つの問題点としては、ようやく手があいて、計画を立てようと思い、パソコンの前に座ると、「あれ? 何からするんだっけ?」と、何も考えていなかったことに気付くのだそうです。
 確かに、「よし、やるか」と思ったとき、事前に頭の中に、かるく構成を練ったものがないと、何も始まらないものかもしれません。

 クライアントさんは、5月の連休のレイアウトも、まだ白紙だとおっしゃったので、実行案を考えるにあたり、前々から、あまりアイデアをストックする習慣を持っていないのではないかということが、判明しました。

 例えば、芸人に「何かネタやって!」と頼んだら、ネタが出てくるのは、きっとネタ帳にストックがあるからでしょう。
 つまり、普段から、「いいレイアウトないかな?」と、なんとなく考え、「あ、これは、あの季節に使えるな」など、ネタ帳に仕込み、日頃から溜めておいたらいいのです。それを、必要な場面でアウトプットする感じです。

 クライアントさんにそう投げかけてみると、それは考えたことがないとおっしゃっていました。日頃、メモ帳は、備忘録としてくらいしか使わないそうなのです。
「ネタ帳を持つこと」が、一つ課題になりました。

 では、そのネタをどう収集すると、ひらめきや、アイデアに結びつくのか? 考えていきました。

 クライアントさんは、自店のレイアウトを考えるために、競合店をチェックしに行く、というのが、普段のやり方だそうです。スーパーだったら、同じようなスーパーをチェックするのみで、デパートや路面店へは行かないということです。

 それを聞いて、私は言いました。「それは、情報収集であって、アイデア収集と違いがありそうですね」と。

 競合店を選んで見に行くというのは、「今の季節はこんな提案なのか」とか、「この什器、うちでも使えるな」という目的が根底にあるからではないでしょうか。
 クライアントさんは、そのやり方でやってきて、結果が出なかったのですから、ここで新しい視点を提案しました。

 「競合店以外へ行く」ということです。自分の店と違う客層なども体験するのです。
色々なお店へ行き、お客様の気持ちを体験することが、大事だからです。お客様としての気持ちをたくさん味わうと、自分が何をしたらいいのか? が見えてくるのだと思います。

 実は、私にとっても、それが自分を変化させる新しいアプローチだったのです。ここから、店長として結果を出したことはもちろん、人生が変わっていったように思います。

 「お客様のほうが、自分たちよりも、たくさん見ている」と、アパレル店長のとき、社長に言われたことがありました。悔しいけれど、本当にそうだと思いました。
 高感度のセレクトショップでしたので、実際にパリコレなども、チェックをされているようなお客様を相手にしているのです。それなのに、自分はそれをチェックしていないということは、どうなんだろう? と、そのとき、情けないけれど、そう思いました。

 それから、全く、手にも取ったことのなかった、VOGUEを読み始めたり、高感度のショップにも入ったりしました。客層が異なる、109にもよく行きました。最初は、とても違和感がありましたが、段々と、自分のアウトプットは、変化していったのです。

 色々なお客様層によって、ディスプレーは違うことに自分で気づいていけば、段々とこんな時はこうしたら、受け入れられるのかな? ということが、心のネタ帳に溜ってくると思います。
 店長時代の私は、ディスプレーは出来なかったですが、スタッフに、テーマを意識させることができるようになったことで、スタッフのアウトプットもどんどん変化していったように思います。

 このセッションで、クライアントさんは、昨年の自分とは違う、新しいアプローチが明確になったので、結果もじわじわと出てくるのではないかと思います。

 ネタ帳は持っていますか?