相手の言葉に「え?」と反応し、返す言葉が見つからないときは、どうするのか?

 「仕事・家庭・・・・どこに重点を置いていくか?」というテーマでのセッションでした。
結婚や出産を機に仕事を辞めたりセーブしたり、身近な友人も転機がおおい年代。自分はどこにプライオリティーを置くのか? もそうだし、実際、仕事の方でもリーダーシップがあるとは思えない自分についても、どうしていけばいいか? 悩んでいらっしゃいました。

 店長となり、休みも少ないし、結婚して通勤に1時間かかるし、旦那さんのほうが早く帰ってきてしまうことにも、こんな自分でいいのかな? と考えてしまうそうです。そうすると、仕事にも身が入らないし…とおっしゃっていました。

 現状をお聞きすると、早速仕事の話がでてきたので、「やはり、セールスアップしたいってことですか?」と聞いてみると、「そうです」と返ってきました。
 キーポイントの二人が仕事についての考え方が違うし、みんなの意識がバラバラな気がしていていることからして、うまくいっていないとのことでした。

 会社で用意された目標管理のシートを使い、あるスタッフの面談をしているとき、「目標は?」と聞いたら、「目標って必要ですか?」と逆に訊かれ、今まで言われたこともなかったし、返答に困ったそうです。

 でも、そのスタッフは人とのつながりを大切にしているような生き方をしているし、目標がないことに悪いとも思えなかったそうです。
 自分自身が、「全部のことがみんなできるように」という育て方をされてきたというのもあって、みんなに平均値を求めてしまうけれど、それよりも、適材適所なのかな? と思う自分もいるとか。

 「自分が適材適所かなと思うのならば、それでやってみればいいんですよ。自分のやりたいようにやってみることでいいんですよ」と私がいうと、「私は、社会の通例に弱いところがあるんですよね」とおっしゃいました。「こうしたほうがいい」に縛られて、自分がこうしたらいいのかな? と思っていることが、違う様な気もして、迷いが生じることが多いようです。

 他のスタッフの話も出てきました。「1回ごとの接客に丁寧についていて、客単価は高いけれど、時間が長い接客をするので、売上となると、あまり取れていない」というスタッフにも、どう言っていいか? 悩んでいらっしゃいました。

他の接客方法もあるなど、自分の話せることは全てシェアし尽くした感もあり、それ以上どうしていいか? 見えなくなっているそうでした。

 ここまでの話を聞くと、「いいんだけど、悪いところもある」というような、どのスタッフにも、そういう見方になっていて、じゃあ、その弱みのところを克服させるようにするのか? というと、そこはなんか違う様な気もしている…というクライアントさんの心情が浮き彫りになっている気がしました。

 ここは、「社会の通例」とか「会社が求める平均値」とかは、おいて、自分がその相手に関して、いいと思えているところを、そのまま伸ばしていくことに自信を持って取り組んで行ったらいいのではないかと、私は、クライアントさんの考えを支持しました。

 教えるだけでなく、これからは、それぞれの強みを、「引き出す」ことを、意識するということです。それが、クライアントさんにとっての成長にもつながるでしょう。

 できないところがあって当然なのです。私は、むしろ器用じゃないスタッフには、細かい作業は、積極的にやらせないようにしていました。「細かい作業のできる、○○さんと○○さんだけにお願いします(笑)」と振っていました。どのスタッフもそれぞれの強みを共有しているので、そんな風に言っても、ギャクになってしまうのです。

 片づけのできないスタッフ、お札の向きを揃えないスタッフ…。私は、それも徹底させるように言ってきたのですが、あるとき諦めました。そんな小さなことなら、私が黙ってやっておけばいいのだと。(笑)

 そんな話をクライアントさんにしたら、クライアントさんも全く同じことを思ったことがあったらしく、「私って、なんかちっちゃいですね」と笑って答えていました。

 そして、続けて言いました。「友達は、あわなければ、もう会わないという選択もできるけれど、仕事のなかで、自分と違う考えの人の存在は、違うから逆に知りたいとも思えるし、仲良くなれたらいいな、とも思います。自分の思い通りにいかないことがあるからこそ、勉強になりますね。ここで向き合っておくことで、仕事以外でも役に立ちそうです。この人は何が得意かなど、人のことはよく見えるほうだと思います」とクライアントさんが、自分で自分のことを確認するようにおっしゃっていました。

 このあと、家庭のことも少し話して整理したら、「もっと自分の可能性を知りたいから、今は、目の前にある仕事を通して見つけていきたい」と重点を置きたいところが明確になりました。また、「時間がないとか遠いというのは、出来ない理由として、並べていただけかもしれない」とおっしゃっていました。

 
 クライアントさんの突破口が見えなかった理由としては、自分の中で理想の答え像があって、そうじゃないと、「え?」と反応して終わりになっていたということです。セッションでは、「え?」となっていた理由と、その先を考えてみる機会になったようです。

 自分が上司となると、自分の話を聞いてくれるひともいなくなり、これでいいのか? と思っていたことが、いっぱいになっていたそうです。そこで、私が「それでいいんですよ」と言うことで、払拭されたようでした。 
 私は、「正解」を発したから、「それでいいんですよ」と発したのではなく、クライアントさんが迷っているAとBのうち、クライアントさんの心の声に近い方に「それでいんですよ」と話しかけたのです。


 相手の言葉に「え?」と反応し、返す言葉が見つからないときは、自分の思い込みに反応しているだけなので、自分でそこを解除して、相手の言葉を受け取り、もう少し深めて聞いてみればいいのです。質問をするだけなのに、相手と分かりあえたその感覚が、なにしろ嬉しい感じもします。


 今日はこちらの質問はいかがでしょうか?

なんとなく、いいわけチックになっていることはありませんか?