我慢でそうしているのか? 能動的にそうしているのか? 

 5年前くらいからのリピーターのクライアントさんで、継続セッション中は、会社で成果を出すことにつながりました。最近では、転機のときや突破口が必要なとき、単発セッションのご依頼を頂いています。

 昨年、本当にやりたいことをしていこうという思いから、東京に出てこられました。それからのことは、色々大変だったご様子で、混沌としていたところからようやく抜け出してきて、これから先へ進めたいという思いが出てきたため、セッションのご依頼を頂きました。


 これから先へ進めるまえに、現状の問題点の話に自然となっていきました。年末から今年のはじめにかけては、環境を立てなおすことが第一で、そこをクリアしたと思ったら、今度は人間関係の悩みで、よく繰り返す事象のようです。

 現状は、どちらかと言うと人間関係の問題を避けようとして、なるべくおとなしくいるようにして、もめごと起こさないように我慢をしていることが、ストレスにつながっているようです。

(私から)
「人間関係の悩みは、他の人も巻き込んでしまうような問題になったんですか?」

「問題にはなっていません」

「え? 問題は起きていないんですか。確かに、もめごとを起こさないようにしているということは、周りの人から見ると何にも悪いことはないですよね」

「そうですね…」

「それって、人間関係の問題って言わないですよね。自分だけが、問題だ、って思っているわけで…」

「あ、はあ。そうですね。今の仕事場では、先輩から教えてもらうために合わせるようにしています。自分が低姿勢でいるようにして、たまにお菓子の差し入れもしたりして。でも、もしかしたらそういった低姿勢ぶりが、逆に相手を意識していると思われすぎて、相手の機嫌が悪くなっているのかも…と思ったりもするんです。自意識過剰ですが…」

「つまり、相手の態度によって、自分の出方が変わり、自分の在りたい姿を決めていない感じですよね」

「そうですね。自分としては教えてもらうための低姿勢でもあるので、それが変に相手へも意識させることになってしまわないかと、そこも心配になってしまいます。考えすぎですが」

「なるほど。ここまでの話を聴いて、2通り取れると感じました。『自分は我慢している』ととるか? 『相手がやりやすいように仕向けている。相手らしさを引き出している』ととるか」

クライアントさんは、少しハッとされたようでした。
「相手にイライラするときもあって、そういうときは、口に出さないでいることが多いのですが…。言った方がいいのかなと思ったりもするのですが、大抵言いません」

「相手にイライラすると。それは、自分の言うことを我慢しているからってことですかね。でも、言わないようにしているのは、相手と関係を続けようとしているためじゃないですか? だから、言わなくてよかったこともあるのでは? 私もセッションでは、傾聴を心がけています。言いたいことを我慢しているというよりも、聴くようにすると決めているから、言わないのです。我慢と思うとつらいけど、相手に促しているという風に、能動的にとらえると楽になりますよ。○○さんは、周りに合わせる適応力があるのかもしれませんね」

「はい。周りに合わせるのは得意と思っていた時があったのですが、もっと積極的にならないとダメと言われた辺りから、自分を抑えていると捉えるようになってしまったのだと思います。八方美人なところもある気がします。周りを気にし過ぎて」

「なるほど。周りを気にし過ぎてというと、ネガティブな感じですが、周りを気遣うと言うと、印象変わりませんか? 能動的に。気遣うと思うと、もっと自分ができることないかな? って探せますもんね」

「あ…。受け身だと被害者。自分がしていると思うと能動的ということですね」

「そうです。例えば、売上で1位を獲得していらっしゃいましたけど、お客様を説得したと言うよりも、最後までお客様の話を聴いて、『では、お客様にはこちらですね』ととどめの一言で売れていったのではないですか?」

「はい、まさにそうでした。それしかできないので…」

「それって、積極的傾聴をしているということなんですよ」

 そんなやり取りをしました。クライアントさんが、我慢していると思っていたことが、自分は相手とうまくやりたいと思って、積極的にそうしていたということに、気づけたのです。段々と今までダメだと思っていたことが、むしろ強みとして、生まれ変わってきたのです。

 仕事の場面では、「アピール不足」と言われ、昇格戦に敗れてしまったこともあったようです。成果を出しているのにもかかわらず、「なんで1位なの?」と疑問視する上司もいたようなのです。でも、クライアントさんは、自分のやっていることなんて、理解してもらえるはずないと信じ込んでしまって、上司に自分のやり方について語ったことがなかったようでした。
 どちらかというと、引き気味にして売れている人っていうのは、きっと基本引き気味だから、そう思っていても言わない人も多そうですし。

 しかしこれからは、「自分はそうしています」と、自分の在り方を言えること。そこは、クライアントさんに必要なところかもしれません。
 これまでは、「どうせわかってもらえない、確かにアピール不足だし、何も言えない…」となっていたのでしょう。

 
 我慢していると思っている人が、「能動的に私は我慢しているんだ」と気づくとどうなるのでしょうか? 相手と関係を続けたいと思うからこそ、我慢をしているんだと。

 クライアントさんが最後におっしゃいました。
「視点が変化したのを感じます。何となくやっているということが多いから、意図してやっているという捉え方で自分の行動を見直してみます」と。

 世間的にそちらの方が優秀というような判断があることで、価値に気づきにくくなっていることもあるのだと思います。ニュートラルに、そういうのが特徴なのだと捉えると、もっと自分が見えてくるでしょう。


今日はこちらの質問はいかがでしょうか?

あなたがダメだと思っていることが、実は価値があるかもしれません。