はっきり言ってしまうと、相手が凹んでしまいそう。そんなとき、どのように伝えればいいのか?についての考察。

 スタッフに、自分の要望をどう伝えたらいいのか? というテーマのセッションでした。
 前回のセッション後、初めてスタッフ面談を導入したそうで、とにかく、聴くに徹したようです。いつもなら、言いたいことが出てきて、イライラっとしてしまう場面でも、ぐっとこらえたとか。すると、スタッフ間どうしが、お互いにどう思っているのか? という気になっているところまで話が聴けたとのことでした。自分でも、よく聴けたと、自分を褒められるくらいの達成感を持ったようです。


 一方、聴くに徹するばかりで、相手に改善を求めたいパフォーマンスについて、言うタイミングを掴めなかったとか。どこまで聴くのか? どこまで話していいのか? 悩んでいるとのことでした。

 実際、面談で何を言いたかったのか、私をスタッフと思って、話してもらうことにしました。

 「もう少し練習をしてもらって、クレームが出ないようにして欲しい」と伝えたかったようです。
 
 私は、スタッフの気持ちになって、その言葉を聞いてみました。
感じたのは、「クレームが出ないようにちゃんとやってくれ」という、上司の立場を守るような発言にも取れました。もう少し、具体的に自分のどの部分を改善すべきか、熟練した立場からのアドバイスが欲しいところです。

 一方、「クレームにならないように」という言葉を選んだクライアントさんの気持ちもなんとなくわかります。はっきり言ってしまうと、相手が凹んでしまい、そのためにどう対応していいか困ることを恐れているかのようです。

 このクライアントさんの場合、現場にも立っている経営者の方なので、スタッフからしてみたら、TRでもある状態です。だから、相手のスキルアップを願って、指導する立場という認識を持っていいのだと思います。

 いつも、そのスタッフを見ていると、「そんなことも分からないの? それで、頑張っていると思っているの?」と、イライラしてしまうそうです。でも、そのイライラは、本当のところ、スタッフというよりも、自分自身にイライラしているのではないでしょうか。「自分でまいた種です。頑張りましょう(笑)」と言ったら、クライアントさんも笑っていました。

 ここまでの話をして、現場であとは実践あるのみ・・・と思ったのですが、クライアントさん、さらに困っている話が出てきました。

 改善点を具体的に伝えたこともあるけれど、スタッフが指摘されると、凹んでしまうタイプのようです。また、本人は、自分のやり方が100点だと思っているようだから、指摘が難しいとのこと。

 「凹んだらどうするのですか?」と聞いてみたら、「今は凹んでいる時ときは、そのまま放っておいている状態です」と返ってきました。
 「凹んでおきなさい・・・」とは、言わないでしょうが、なんとなく、頂上から1合目を眺めているような、そんな隔たりを感じました。


 相手が落ち込んでいる時、極端に言えば、一緒に落ち込むことで、相手は励みになることがあります。
 「私もね…」と、自分の経験談をシェアすることで、「○○さんもそんなことがあったのですか?」と相手は安心します。

 そうクライアントさんに話したら、「自分は、それをマスターするときに、挫折した経験がなかったので・・・」とさらりと答えました。

 「問題はそこのようですね(笑)」と明確になりました。クライアントさんのその返答で、私が気づいたことがありました。共感的理解を示すところは、経験というよりも、気持ちのところです。

 自分でどんどん前進できるタイプは、自分はフォローしなくても進めたから、そんなこと言わんでもわかるだろう・・・なんて、思ってしまいがちです。しかし、そのまま、突っ走って行くと、部下がついてこなくなるという失敗をしてしまうかもしれません。「相手の気持ちになる」ことは、どこかのタイミングで、きっと学ぶことが必要になるでしょう。

 
 相手の気持ちに立つために、自分も凹んだ時のことを思い出してみるのです。
たとえば、自分が良くできていると思っているのに、指摘されて、凹んだことはないでしょうか。その時の気持ちを思い出してみれば、どう言えば、伝わりやすいかということも、おのずと見えてくる気がします。

 「もっとこうしなさい、ああしなさい・・・」という指摘では、全てを否定されたように感じるものです。「そっちはできている。ここに関しては、もう少しこんな風にやってみたらどうだろうか。まあ、なかなか難しいんだけどね」と伝えてみる。

 一言、横に座って寄り添う感じで伝えると、相手は、冷静に言葉を受け取ることができ、自ら「練習します」と、解決策を言うようになるでしょう。

 気持ちの共感を通して語られる言葉は、相手と自分をつなぐことができ、信頼感を生むのだと思います。そして、いつでも本音のやり取りができるようになっていくでしょう。自分がそこまで体験したことがなさそうでも、想像力を膨らませることは、できるのではないでしょうか。

 
 リーダーをすることで、何でこんなに相手の気持ちに立たなくてはいけないのか・・・と、私も大変と思うこともありましたが、そこに自分の成長ののびしろがいっぱいあったんですね。

 色々な人の気持ちを想像してみることで、自分の視点だけでなく、相手の視点から、改めて世界をのぞくこともできたりして、自分の人生を豊かにしてくれるものだと感じています。自分の可能性も広がっていくでしょう。

 映画『最強のふたり』の主人公のフィリップ役を演じた役者さんが、車いすで生活している人の気持ちになってみたかったという理由もあり、役を受けたとインタビューに書いてありました。印象深い言葉でした。

 
 今日はこちらの質問はいかがでしょうか?

どこまで話していますか?