未来を追いかけるのは疲れることもある。だから、今この瞬間にひと休みしよう。
与論島2日目
朝の10時。旅に来ているのに、オンラインでコーチングセッションをする私。不思議なもので、旅の最中にこそ、クライアントからのお問い合わせやご感想が普段以上に届き、仕事がうまく行っていることに安心感を得ます。
曇り空から始まった2日目。小雨がぽつりぽつりと降り始めていましたが、今日の目的地はクライアントさんに教えていただいた『海カフェ』。与論島は観光地が少なく、目的が決まっただけでも安心です。
映画『めがね』で、宿のスタッフ・ユージと主人公・タエコのこんな会話があります。
"ユージは『観光する所なんてありませんよ』と言う。『じゃあ、ここに遊びに来た人は何をするんですか?』とタエコが質問すると、ユージは『うーん、たそがれる?』と口にした。"
私も「たそがれ」の境地を獲得するために与論島へ来たのです。行先をカフェだけに決め、そこで「たそがれる」。そんな時間を過ごそうと考えていました。島での移動手段は、車がない人にとっては自転車しかありません。私はパーカー付きのラッシュガードを羽織り、ママチャリで出発しました。
与論島には標識が少ないため、スマートフォンの地図を頼りに港へ向かいます。久しぶりの自転車。懐かしさを感じつつも快調な滑り出しです。途中、道を間違えたことで思いがけず薬局を発見。虫刺され対策の『ムヒ』を購入しました。この時は、これが後に大いに役立つとは思いもしませんでした。
時折強まる小雨の中、約20分かけて『海カフェ』に到着しました。白いギリシャ風の建物が曇り空の下でひときわ映えています。鮮やかなブーゲンビリアの花が、南国らしい彩りを添えていました。
店内に足を踏み入れた瞬間、まるで夢の中にいるような心地よさに包まれ、「来てよかった!」と感じました。中央には大きな木製のダイニングテーブルが置かれ、周囲には素朴なクロス型の木製チェアが並んでいます。天井にはクラシックなデザインのシーリングファンが設置されており、トロピカルな雰囲気を添えています。ミントグリーンのアクセントウォールには、さまざまな小物や写真が飾られ、温かみのある空間が広がっています。大きな窓からは自然光がたっぷりと差し込み、店内を明るく開放的に照らしていました。まさに、たそがれ時を楽しむのにぴったりの場所です。
さらに、思いがけず貸し切り状態でした。これは絶好のチャンスと思い、ブログ用の写真撮影をすることにしました。
その前にオーダーです。メニューを見てみると、「ひとりで作っているため、お時間を頂きます」と書いてありました。こんなところにも島時間がありました。チキンピタカサンドを頼んで、しばしブログ用の写真撮影タイムにすることにしました。持参した携帯用の三脚を組み立て、お店の中央付近に設置。私は窓際で「たそがれ」のポーズ。そんな構図を何度か撮影するために、そのたびに椅子から立ち上がり、カメラの自動シャッターを押し席に戻るを繰り返していました。2025の今ならば、Bluetoothで遠隔でシャッターが押せますから、何だか滑稽に思えてきますね。そしてベストショットが撮り終わると、今度こそ安心して着席しました。
白く柔らかなピタパンで包まれたチキンサンドが運ばれてきました。ハーブでマリネされたチキンは、しっとりと焼き上げられ、ツヤのある焼き色が食欲をそそります。素材の新鮮さと盛り付けの美しさが際立つ、見た目にも美味しそうなサンドイッチ。このギリシャの風景のなかで、このサンドイッチをいただきながら、その美味しさに満足するも、頭の中では、これからの仕事のことばかり考えていました。
途中、親子と見られる20代の青年と父親が入店し、テラス席へと向かいました。店内には私しかいなかったため、ふたりの会話が自然と耳に入ってきます。息子さんが「カフェを開きたい!」と熱く夢を語っており、それを聞きながら、夢を語る瞬間に立ち会える自分は、ライフコーチらしいと感じました。
デザートにはストロベリーワッフルとギリシャ風のアイスコーヒーを注文しました。店の看板猫が、のんびりと私の食事を見守っています。外は相変わらず雨が降り続いていたため、雨宿りがてら、しばらくここでゆったりと過ごすことにしました。
ふと、先ほどの親子の会話を思い出します。なぜか心に残っているこのやりとりには、どんな意味があるのだろう? そう考えたとき、ふいに気づきました。「あれ? 今、私の夢は叶っている。好きな時に好きな場所へ旅行する——そんな夢が、すでに実現していたんだ!」と。その夢が、気づかぬうちに叶っていたのです。そう思うと、これからの夢も、きっとまた叶えていける——そんな気がしてきました。
小雨になるまで待っていたら、気づけば3時間も海カフェに滞在していました。何もない場所で3時間も過ごせるなんて、せっかちな私にしては大健闘です。
蚊に刺された箇所に、さっき買った『ムヒ』を塗りながら、次の目的地を考えます。目指すのは、「めがね」で有名な海岸。小雨の中、店の前で自転車と自分の撮影もぬかりなく済ませ、いよいよ出発です。
自転車を漕ぎながら進んでいると、「品覇海岸」の案内を見つけ、ふと立ち寄ることにしました。傘をさしながら波を眺めていると、雨に煙る海に少しだけ恐怖を感じます。それでも、さらに北へ向かうことに決めました。
雨は相変わらず小雨のまま、でもじわじわと降り続いています。傘を片手に、ひたすらペダルを漕ぎ続けました。いつものように頑張ってしまっている自分に、ふと笑ってしまいます。
やがて牛がいる牧場や、ドラム缶の中にいる黒ヤギを発見。それがヤギの小さな家のようになっていました。入り口としてくり抜かれた部分があり、ヤギはそこから顔を出してじっとこちらを見ています。ヤギの前には赤茶色のレンガが敷かれ、アルミ鍋が餌皿として置かれていました。背後には緑の木々が茂り、ヤギの住処はまるで森の一角にある秘密の小屋のようでした。
あ、黒ヤギと目が合った。
黒ヤギ:「そんなに漕いでどこ行くの? もう帰りなさい」
確かに黒ヤギは私にそんな風に語りかけてきた気がします。雨が降りしきる中、一体私は何をしているのでしょうか。我に返り、リゾートホテルに戻ることにしました。
夕方からは、N先生と高校の先生方6人で居酒屋へ。与論島では、他のグループとも交流しながら飲むのが習慣のようで、いくつかのグループが話しかけてきて、店全体で盛り上がっていました。そして、「かりゆしバンド」の演奏を聴き、与論島の音楽と人々の温かさに触れる夜となりました。
コテージに戻ると、太ももにキリキリと筋肉痛が。自転車を漕ぎすぎたようです。未来と今が交錯する瞬間を感じた、与論島2日目の記録です。
■編集後記
同じ南の島でも、Cebu 2025の私と与論島 2010の私では同じ人とは思えないですね。まだ仕事とブログとたまにジム以外、何も習慣にしていない頃の私でした。
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