子供のころからのコンプレックスを、大人になったあなた自身が解放してあげることができる。
ステップ 5 ──コンプレックスと向き合う 〜背中が教えてくれたこと
2012年、私はひとつの大きな転機を迎えました。
それは、長年抱えてきた「姿勢の悪さ」というコンプレックスと、本当の意味で向き合うきっかけとなる出来事でした。
子供の頃から、私は常に「姿勢が悪い」と言われ続けてきました。親からの繰り返される注意に、そのたびに背筋を伸ばそうと必死に努力するのですが、気がつけばいつの間にか元通りの猫背になっていました。幼い心に、この繰り返しが刻み込まれていくうちに、「私は性格が曲がってるから、体も曲がってるんだ」という歪んだ自己認識が根付いていったのです。
写真を撮る時も、自然と右肩が下がってしまうことに気づいていました。シャッターが押される直前には、必ず自分で意識して肩の位置を調整していました。あの頃の私は、背中の歪みを「恥ずかしいもの」「直らないもの」として表面的に受け入れようとしながらも、心の奥底では「自分が悪い」「努力が足りないのだ」と、無意識のうちに自分を責め続けていたのです。
肩こりはもはや私の日常の一部となっていました。鍼灸師だった父によく肩を揉んでもらったり、自分でツボを調べて鍼パッチを貼ったりと、対処法はいくつも持っていました。しかし、それらはすべて一時的な痛みの緩和でしかなく、根本的な解決にはならないことを、どこかで諦めていたのです。「これが私の宿命なのだ」と、静かに受け入れようとしていました。
それから歳月は流れ、気がつけば私は36歳になっていました。
ある日、突然、背中に鋭い痛みが走ったのです。
「ただの疲れだろう」と軽く考えながら整形外科に足を運びました。レントゲン撮影後、医師が私の骨の写真を見つめながら、静かにこう言ったのです。
「側弯症って、言われたことありませんか?」
――その瞬間、私の頭の中は真っ白になりました。
そういえば、子供の頃の健康診断で「背骨が少し曲がっていますね」と言われたことはあったように思います。でも、それはいつもの検査の一部として軽く触れられただけで、誰も深刻に扱うこともなく、私自身も「曲がった体が、私の普通なんだ」と、そのまま流していたのです。
まさか、それが医学的に名前のつく状態だったなんて。
36年間、私は「ただ姿勢が悪いだけ」「自分の努力不足」だと思って生きてきました。実際は、生まれ持った骨格の特徴であり、「側弯症」という医学的な名称があることを、そのとき初めて知ったのです。
悲しい、悔しい、戸惑い、安堵――様々な感情が入り混じって押し寄せてきました。長い間、自分の性格や意志の弱さのせいにして、無意識のうちに自分を責め続けていたことに気づいた瞬間は、複雑な解放感がありました。
整形外科では牽引のリハビリ、湿布、痛み止めの処方を受けましたが、どれも対症療法に過ぎませんでした。担当医も「痛くなったら、また来てくださいね」と言うだけで、根本的な解決法は示してくれません。私は、この身体の痛みと心のコンプレックスから抜け出す道がどこにあるのか、途方に暮れていました。
そんな中、日頃からお世話になっているパーソナルトレーナーに相談してみることにしました。
すると彼は、目を輝かせながら「最近、本当にすごいカイロプラクティックの先生に出会ったんだ」と教えてくれました。彼自身の寝違えを一瞬で治してくれたその先生は、「まさにゴッドハンド」だと言うのです。「絶対に行った方がいい」という力強い推薦に、私は一筋の光を見た気がしました。
予約はいっぱいで2週間待ち。片道1時間かかる場所。
それでも私は、その先生の施術を受けに行くことを決意しました。
初めての施術の日。
その先生は私の背中をそっと撫でながら、静かにこう言いました。
「今まで、よく我慢してきましたね。」
その言葉を聞いた瞬間、私の目から熱いものがこみ上げてきました。これまで感じてきた体の違和感、痛み、長年抱えてきたコンプレックス――初めて誰かが、そのすべてを理解し、言葉にして受け止めてくれた気がしたのです。
先生は、私の背中の状態を見るなり、「明らかな側弯症ですね」と確信を持って言いました。
カイロプラクティックではレントゲンを使わないにもかかわらず、それでも一目瞭然なほど、私の背骨は湾曲していたのです。
「自分がひねくれていたせいではなかったのだ」
「怠けていたからでもなかった」
「生まれ持った特徴だったのだ」
――その事実に、長年凝り固まっていた私の心がようやくほぐれ始めました。
数カ月後の日記には、こう綴られていました。
『自分が側湾症だと知ったのは、今年2月のこと。背中があまりにも痛くて整形外科に行き、レントゲンを撮ったらそう診断された。36年間も気づかないことがあるのか! と、本当に驚いた。自分が可哀そうで、泣けてくるくらいだった。』
カイロプラクティックの先生のもとに通い始めてからは、少しずつですが確実に変化が現れ始めました。
最初の施術の日、私の身体の状態があまりにも深刻で、先生はほとんど言葉を発しませんでした。背中を調整する際に「バキバキ」という音がして、それと同時に顎が外れていることに一瞬戸惑いましたが、先生は驚くべき手技で「バン」と一発で元に戻してくれました。まるで魔法のような体験でした。
そして驚くべきことに、何年も抱えてきた背中の痛みは、たった3日で消えていったのです。
これこそが「根本治療の極み」だと実感しました。私の身体は、まるでバラバラになったプラモデルのピースのようになっていて、一つの部分が正しい位置に戻れば、他の部分もそれに合わせて綺麗に収まっていく―そんなイメージでした。
寝るときには、背中が敷布団にぴたっとつく感覚があります。以前は仰向けで寝ると腰に違和感があり、夜中に何度も目が覚めていましたが、今では朝までぐっすり眠れるようになりました。35、36歳頃は、睡眠の質の低下が自分の中で大きな問題となっていましたが、カイロプラクティックのおかげで、深い眠りを取り戻すことができたのです。
そしてなにより驚いたのは、「力を入れて頑張らなくても、自然と姿勢が良く保てるようになった」ことです。
子どもの頃から、いい姿勢は「我慢して、努力して、意識的に保つもの」だったのに、今は自然体でまっすぐでいられる。それが何より嬉しい発見でした。常に姿勢を意識する必要がなくなったことで、精神的な解放感も得られたのです。
体のバランスが整うと、心もぶれにくくなる。この実感は、私にとって大きな気づきでした。
周りの人からも「姿勢がよくなったね」と言われるようになりました。服のサイズも変わり、肩の内巻きが改善されたことで、ワンサイズ上のほうが肩幅にフィットするようになりました。鎖骨がきれいに浮かび上がるようにもなり、鏡を見るたびに自分の変化に驚き、喜びを感じるようになりました。
もちろん、もともと側弯症ですから、日常生活の中で再び歪みが生じることはあります。そのため、今でも定期的に施術を受けています。以前のように「何かが起きてから」病院や施術を受けるのではなく、今は「予防のために」通うというフェーズへと変わりました。そして施術を受けながら、自分の身体について、いわば「人体実験」を通して学べていくことも、新たな楽しみとなっています。
一番のコンプレックスを、「忘れてもいい状態」にまで克服できたとき、その心の中に空いたスペースには「創造性」が宿った気がします。長年、自分の身体の歪みに費やしていたエネルギーが、今は別の豊かな方向へと流れていくようになったのです。
■編集後記
「これはどんなテーマなんだろう?」と考えていたとき、ふと、こんな考えが浮かびました。
「子どもの頃の自分にはどうすることもできなかったことを、大人になった今の自分が、代わりに叶えてあげることができるんだ。」と。
インナーチャイルドに寄り添って、当時叶えられなかった想いや感情を受け止めてあげると、自分自身の中にあった「抑えられていた声」が少しずつ解放されていく。そして、そこからあふれ出てくるのが、本来の創造力なんだと思います。
🖊 英語版
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