あるYouTubeチャンネルのなかで、「ダイアログ・インザ・ダークを体験しに行くんです」という言葉が耳に入り、なんだかひっかかったので、グーグルで調べてみました。
すると、2年前から知っている場所だったのです。緊急事態宣言中に、よく自転車で通っていました。「対話の森」と書いてあったので気になっていたのですが、まさにそこが「ダイアログ・インザ・ダーク」のイベントスーペースだったのです。
私にとっては初耳の言葉だったのですが、1D1U コミュニィー内で投げかけてみると、すでに体験したことがある方がいらしたり、体験してみたい人や、創立者の本を持っている人も!すでに有名なコンテンツだったようです。
さて、一番空いていそうな時間を予約したら、私ともう一人の男性の2名様でした。そして、女性の視覚障がい者のガイドさんが私たちの道先案内人となりました。
この先、映画で言うネタバレになるので、先入観無しで「ダイアログ・インザ・ダーク」を体験したい方はご注意ください。
★インフォメーション
最初に白杖の使い方や、心の中で感じたことを発声するように言われました。当たり前ですが、視覚障がい者の方は、こちらが無言で頷いていてもわからないですからね。だから、いつもよりも大げさに相槌を打ったり、声を出したりすることを意識せざるを得ないことになります。
★暗闇でボール投げ。
目を開けていても、普段目を瞑っているときよりも暗い空間に入りました。想像していたよりも、怖い感じがありません。どちらかといういと心地よいというか。なんだか落ち葉のようなものが敷き詰められているようで、歩くとサクサク音がするし、葉の香りがしてきました。鳥のさえずりも聴こえます。人の声で、距離を感じられました。
驚いたことにガイドの方は、私と男性のいる場所の距離感までなぜか把握できていました。そして、どこに何があるのかをすべて心の地図の中で把握されているようでした。もう何度もその森に入っているので当たり前かもしれませんが、実際のその中をクリアに見たことがないはずです。何も見えないとき、白杖のが頼りになりました。壁にぶつかりそうだとか、ふわふわしている床なのか、ツルツルしている床なのか? 1歩進む手前で確かめられます。
そして、ガイドさんが「ボール転がしをして遊びましょう」と言いました。そのボールは、中に鈴のようなものが入っているのでしょうか。振ると音のするものでした。投げることはできないですが、相手の方に転がすことはできます。果たして、相手とうまくキャッチボールできるでしょうか?
私の頭の中は、いつもと違うコンピューターが動き始めました。声によって相手のいる場所を想像し、距離感を計算して、まっすぐに転がすことに集中しました。
すると、相手に直球のストライクで届いたようで、男性の方が素早く迷いのない投球に驚かれました。実際は見えないけれど、私の頭の中の想像力は自由なので、見えているのと変わらないところもあるのです。16年間音声通話だけで対話をしているので、相手の話から想像力を広げて考えることが、得意になってきたのかもしれません。思いもよらないところで、潜在能力が開発されていることを確認しました。
★電車に乗る体験
ホームの音がしてきました。電車に乗って古民家へ行こう!みたいなシーンです。ホームへ辿り着くためには、スロープも登らなくてはいけません。地面のボツボツがはじめて役に立ちました。
電車の中に入ると、何やらボックスシートのようです。頭の中でボックスシートのイメージをして、ずんずん歩いていくと、先頭車両の壁に突き当たりました。全部で左右8席くらいボックスシートがありました。交通博物館のようです。窓もあって、昔ながらの下から上に持ち上げて開けるタイプでした。電車を降りると、また葉っぱの香りがしてきました。
★古民家へ
古民家へ行くには、なんだか丸太?みたいなところを渡らないといけないようで、このあたりから全く想像力が追い付かなくなりました。(笑)いつもならば、一歩が50㎝くらいありそうですが、亀の歩み。よちよち歩きで渡った先にはすぐに縁側のようです。ということは、そこを上がれば居間には入れるんだなぁと思ってその先に手を伸ばしてみると、畳がわかりました。靴を脱いで上がり、匍匐前進すると丸いちゃぶ台を発見しました! 触った感じ直径90㎝くらいのちゃぶ台でしょうか。
「このちゃぶ台の色は、ベージュなのか、黒なのか、茶色なのか。赤かもしれませんね」と私が言うと、男性の方が「ちゃぶ台と言えば、茶色しか思いつかなかった!」と返ってきました。
その時、想像の世界の自由さに気づきました。目の前に物体があって、それを触ったときにそれが何であるか? 自分で勝手に決めることができて、好きな色を塗れるということに! これは楽しいです。
そして、3人でちゃぶ台を囲んでお話することになりました。ガイドの方が、この仕事のほかに、鍼灸をされているそうです。なんと、私の父と同じですね。しばしツボの話で盛り上がりました。(笑)
★ブランコに乗る。
次は、古民家を出て牧場へ。また葉の上を歩きます。白杖を使いながら、歩いていくと、柵やベンチを見つけたり、最後に木のブランコを見つけました。なんと乗れます!視覚情報がないと、なんだか酔いそうでした。
そして、出口へ。最後、静かにドアが開けられて、光の世界へ。全部で80分ほど暗闇にいたようですが、時間感覚がいつもより速く感じられました。びっくりです。
感想が書けるアンケート用紙を最後に頂きましたので、生まれたての感動を綴りました。
最後に、ご一緒した男性が名刺をくださいましたが、なんと、コーチをされている方でした! 「対話の森」ですし、暗闇の中のコミュニケーションを通して、もしかしてそうかなとも思ってはいました。シンクロしすぎです。
★アンケートに書いた感想。
ガイドをしていただいたことで、暗闇でも安心して歩くことができました。暗闇の中では、自分の想像力を頼りにして進むことで、自分を信じて進む力を体験していた感じです。いつもひとりごとを心の中で話していますが、ここでは発言しないとコミュニケーションが取れない世界なので、逆に自由を感じた瞬間でもありました。
普段、聴く仕事をしているのもあり、聴覚を使うことが、視覚をなくした世界では役に立っていることも感じられました。何しろ自分の発想が自由に使える体験となりました。日常に戻った中で、今日体験した感覚の研ぎ澄まされた状態のことを忘れないでおきたいです。時空を超える空間でした。ありがとうございました。
★編集後記
生まれて初めての体験となりました。この体験をセッションの中でも使えるのではないかと思い始めました。暗闇の中で観た、頭の中の映像の活用です。今回の感想を補うために、白黒で私の頭の中をシュールなスケッチで描いてみたわけですが、(笑)本当にこれくらいシンプルな感じでした。でも実際のものを見ていないのに、感じられるものがあった。
つまり、未来というものは、誰も見ることができないものだけれど、想像力を働かせれば、ありありとみることができて、感じ取り、感情が生まれるということです。
視覚をなくすことで見える世界。そこは自分の中の宇宙だったのかもしれません!
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